私の婚約者の苦手なもの

jun

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好きになるという事

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早い時間に帰ってきた私を、
お父様とお母様が心配して、駆け寄って来た。


「リリー、どうしたんだい?やっぱり具合が悪くなったのかい?」


「リリー、顔色が悪いわ、中に入りましょう。温かいものでも飲みましょうね。」



お父様とお母様に優しく声をかけられたら、
急に気が抜けてしまい、涙が溢れてきた。


「リリー、大丈夫よ、お父様もお母様もいるのだから、何の心配もないわ。」

「そうだぞ、お父様はいつでもどこでもリリーの側にいるぞ。
リリーを悲しませたものは何人たりとも赦しはしない!」

お母様に肩を抱かれて屋敷の中に入った。





「リリー、何があったの?話せる?」

「・・・ロイが…」

「ロイ君と何かあったのね、それで?」

「・・・ロイが、知らない女の子と・・・」

「うんうん、それで?」

「マリア、うるさいよ、リリーに話しをさせなさい。」

「ごめんなさい…」



「ロイが・・・知らない女の子と登校してた…。
昨日もカフェに知らない女の子といたの。


私、ロイが女の子といる所を初めて見て、
驚いて・・・

心臓がドクンドクンとなって、
頭まで響いて・・・
何も目に入らなくなって・・・
何も聞こえなくなって・・・


今朝も、いつも朝食を一緒に食べて、
一緒に登校するのに、来なくて・・・

でも、何か用事があるんだと思ってたから・・・

まさか、女の子と登校してるなんて思わなかったから・・・

驚いて…ロイの顔を見れなくなって・・・

だからロイがこっちに近づいた時・・・

逃げてしまったの…」



「そう…じゃあ、ロイ君とは一言もお話してないのね?」


「うん…」


「リリー、大好きな人が他の女性といるのは嫌よね~。私もアランが巨乳美女と二人でいたら物凄く嫌だわ。」


「ちょっとー、さも居た事があるように言うのやめて!」

「アランは黙ってて!」
「ハイ!」


「あのね、リリー、
人を好きになるのは、とても素敵な事だけど、
好きな分だけ苦しくもなるのよ。

いつでも自分を見ていて欲しい、

いつでも側にいて欲しい、

いつでも自分の事を考えていて欲しい、

して欲しい事はキリがないくらいなの。

その想いが叶わなかった時は、
“どうして見てくれないの?”
“どうして側にいてくれないの?”
“どうして自分の事だけを考えてくれないの?”
って思ってしまうものなのよ、私もそうだもの。


でも、それでは自分の事しか考えてない事と同じなよね…。

相手の事も同じくらい考えてあげないとね。

おそらく、
クォーツ伯爵の娘さんも、ロイ君の事が好き過ぎて、自分の事しか考えられなくなっちゃったのだと思うの。

それでは相手に想いは届かない、

あの時少しでも相手の事を考えていたら、ああはならなかったと思うの、私はね。

だから、
ロイ君の話を聞いてあげなさい。
どうしてリリーが逃げ出したのか、分からなくて悩んでるわよ。


今頃、ロイ君泣きながら追いかけて来てるんじゃない?」


そうだ・・・自分の事しか考えてなかった…

ロイの事なのに、ロイ自身の事考えてなかった…


ダメだな、私…



「お母様、ありがとう。落ち着いた。」


「そう?良かった。
リリーは笑顔が似合うのよ、
悲しい顔はダメよ、皆んなが大騒ぎするから。
お祖父様になんかバレたら、ロイ君、後十年は結婚させてもらえないから!」


「フフフ、そうだね。」


「ほら、リリーは笑った顔が可愛い!」


「ありがとう、お母様大好き!」


「リリー、お父様もいるんだけど…」


「お父様も大好きよ!」


「うんうん、リリーが元気になって良かった!」


と言っていた時、ロイがやって来た。



お母様が小さな声で
「ほらね」

と言っていた。










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