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ビカビカ虫!
しおりを挟む護衛の方が、クォーツ伯爵を呼びに出て行った。
ロイに目を向けると、ロイと目が合い、優しく微笑んだ。
逆光のせいでロイから後光がさしているようだ。
眩しいッ!
カッコイイなあ…
なんて思っていると、クォーツ伯爵が護衛の人と入ってきた。
「ギャビン・クォーツが殿下に御挨拶申し上げます。お待たせいたしました。」
と挨拶をした後、私達を見た。
「この度は娘が大変御迷惑をおかけし、さらには怪我までさせました事、親としてお詫び申し上げます。ワソニック伯爵、夫人、リリーナ嬢、申し訳ございませんでした。」
と丁寧に謝罪して下さった。
「まあ、そちらに座ってくれ、クォーツ伯爵。」
と殿下が座ることを勧めた。
クォーツ伯爵が座ると、
「では、始めようか。
ワソニック伯爵とクォーツ伯爵には書状にて説明してはいるが、理解していると思って大丈夫だろうか?」
「巷で出回った、危険な薬物が混入した香水の回収騒ぎに乗じ、邪魔だったリリーナを排除しようと企み、二度に渡って襲った、という事で間違いございませんか?」
とお父様。
冷静に話しているけど、昨日は書状が届いて怪我をしたと読んだ辺りから、お母様とブチ切れて、二度目に襲われかけた所まで読んでなかったらしい。
だから私の所に来た時、二度目の事を知らなかったのだ。
「それで間違いない。クォーツ伯爵はどうだ?」
「はい、理解しております。ですが、昨日の今日で処分が下されるのは娘が自供したという事でしょうか?」
「いや、ハッキリと自供したわけではない。
では、これからイラン…ゴホン…失礼、
イレーネ嬢が故意にリリーナ嬢を襲ったと確定した経緯を説明する。」
咄嗟に、ワソニック家三人とロイが殿下を見た。
今、イランって言ったよね?
あーコレ、絶対ダメだわ、次は別名言いそうだもの…
「ロイ、説明してくれ。」
「はい。承知しました。それではご説明させていただきます。
イ…ンンッ…失礼、イレーネ嬢がリリーナ嬢を排除しようとした経緯は、わたくしグランディ侯爵令息ロナルドをイレーネ嬢が恋慕した事によるものと思われます。
私が何人も近寄らせなかった為、婚約者であるリリーナ嬢に悪意が向かってしまった模様です。
ワソニック伯爵、夫人、リリーナ嬢、私の至らなさでリリーナ嬢を危険に晒してしまい、申し訳ございませんでした。
話しを戻します。
そこでたまたま聞き齧った学院での傷害事件と香水の回収騒ぎを、上手く利用すればバレずにすむと思い至ったイレーネ嬢は、香水が回収される前にと、あの集会の日、凶行に及んだようです。」
「ちょっと待ってください。何故、その香水は回収されたのでしょうか?それほど危険な香水ならば、早く全員に告知しなければならないのではないでしょうか?」
とお父様。
私達、学院生は説明があったから知ってるけど、それ以外は分からないよね。
「そこは私が説明する。」と殿下。
「その香水だけ使っても問題はない。
貴族がよく使う、洗髪用の石鹸を使って、始めて危険になる。
だがそれも長期的に、しかも大量に使用してだ。
これは、別件を調べている最中にたまたま分かった事なのだが、使用期間、使用頻度、毎回の使用量が重要である事が分かった。
香水が安価な為、学生の購入がほとんどだった事で、まず問題が起きた学院を優先して説明させてもらった。
陛下が、学院以外に対しての告知を速やかに行なうと仰っていたのでまもなく告知されるだろう。」
「学院内での問題とは、リリーナの事だけではなかったということでしょうか?」
そういえばそうだ、学院での説明にはそんな話しはなかった。
「一ヶ月ほど前の事だ。突然、女子生徒が近くにいた生徒を噛んだんだ。
突然の凶行に、原因が分からなかったので箝口令を敷いた。
今は休学中で登校はしていない。
その時はまだ香水との因果関係が分からなかったしな。
その後の香水回収騒ぎで、女子生徒の香水と石鹸の使用が判明し、緊急集会となった。
と同時に起こった、学院の害虫駆除が解決に繋がったんだ。」
害虫駆除!
「ビカビカ虫!」
と私は思わず叫んでしまった。
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