私の婚約者の苦手なもの

jun

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昼休み

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ビカビカ虫の捕獲に成功し、今は詳しく調べる為に、アンネリッタさんに預けてある。


そろそろ何か分かったのではないかと思うが今のところ連絡はない。



今日はロイが珍しく側にいない。


第二王子のルイジェルド殿下に呼びだされたらしい。


ルイジェルド殿下は私達と同級生で、隣りのクラスだ。


ロイは側近候補なので時折呼び出される事がある。


他の側近候補の方は、いるにはいるが、あまり他人が側にいるのが好きではないらしく、誰も付いてはいない。
ロイは、殿下直々のご指名なんだとか。

でもロイは呼び出しがないと近寄らない。

なんでもロイがいると殿下が霞んでしまうらしく、あまり近くに寄るなとのこと。

だから、今日の昼休みは一人のんびり読書でもしながらテラス席で食べようと思っている。


トレイにサンドイッチとデザート、オレンジジュースを乗せてテラス席に向かっていたら、誰かがぶつかってきた。
ジュースが少し溢れたが、まあ食べ物は無事だ。

「せんぱ~い、すみませ~ん、ぶつかってしまいました~クスクス。」


突然のことで驚いていたら、後輩らしき人達の一人が謝ってきた。

「大丈夫よ、気にしないで。」

「先輩ってロナルド様の婚約者なんですよね?」

「そうだけど、それが何か?ところで貴方はどなた?」

「私は、イレーネ・クォーツと申します。
先輩と一度お話しさせていただきたいと思っておりました。クスクス」

感じ悪いな…。

ん?

あ!
ビカビカ虫!
胸のところに止まってる!

ブローチかと思ったらビカビカ虫だ。
あ、あ、動き出した…。

肩まで移動した…。

あ、止まった!

ビカビカ虫に釘付けになっていたらその間に何か喋っていたらしい。

「聞いてます?」

「ごめんなさい、あなたの肩に止まってる虫に釘付けで聞いてなかったわ。」


「え?」


彼女が肩を見た瞬間、ビカビカ虫が動き出す。

ヤバい、噛まれる!

即座に殺虫剤を出しビカビカ虫に向かって吹きかける。


ピクピクしながら肩から落ちた。


良かった、危なかった~。


「大丈夫?噛まれなかった?」


真っ青な顔で固まっている。


「だ、大丈夫です…すみません、失礼します…」
さっきまでの勢いは無くなり、お友達とフラフラ帰っていった。


さて、お昼ごはん食べようと空いているテラス席につく。


食べ始めた頃アンネリッタさんがやってきた。


「リリーナ様、大丈夫でした?先程の方、学年は一つ下ですけど、ロナルド様とリリーナ様のクラスをよく覗いていますわよ。」


「そうなんですか?気付きませんでした。」


「ロナルド様の熱狂的なファンみたいですわよ。」


「あ~それでケンカ腰だったんですね。最近はロイがいつも側にいたので、こういった事は久しぶりで少しビックリしました。」


「気をつけたほうがいいと思います、ああいった方は何を考えているか分かりませんから。」


「そうですね、気をつけます。」


すっかり食欲がなくなってしまい、ジュースだけ飲んで片付けた。



忘れていたが、
ロイは、私の前では虫に怯える可愛い男子だが、私から離れると途端に無表情のクール男子になる。

見た目も王族よりも王族らしい美形だ。
幼い頃にあった時は、あまりの美しさにポカンとしてしまった。

優しく頭を撫でられたり、頬を撫でられたり、肩に頭を乗せ、至近距離で微笑まれたりするとドキドキしてしまうが、他の人にそんな顔は見せないので、浮気の心配はなさそうだ。

だが、時折女子に絡まれる。


大概一人でいる時にだが、今まではそんな時はタイミング良くロイが虫怖いと走って来る。
するといつの間にか女子達は居なくなるのでさほど気にしてはいなかった。


ロイが忙しくなって一人が増えたら絡まれる事も増えそうだ…面倒だなぁ…。

ま、なんとかなるでしょ!


そういえばさっきアンネリッタさんにビカビカ虫の事を聞けばよかった。
あの虫がなんなのか、何故急に目につくようになったのか、毒はないのか、聞きたい事は山ほどある。


後で聞くとして、午後の授業に遅れないため急いで教室に戻ろうと走り出したら先生に見つかり、怒られた。


今日はついてない…。






********************


愛でる会 緊急連絡


先程、リリーナ様が学年一つ下のイレーネ・クォーツ伯爵令嬢とその取り巻き達に絡まれる事案発生。
ロナルド様のいない隙を狙い、嫌がらせを狙っている模様。
今後、ロナルド様がいない時はリリーナ様に危害を加えさせないよう警戒すること。


以上  


********************





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