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痒み
しおりを挟むキャサリン視点
信じられない!
私の顔が、私の鼻が、真っ赤に腫れて
「誰?」
って思うほど顔が変わっている。
あの日、ロナルド様を追いかけて猛ダッシュしてようやく追いついた。
病弱だった頃には想像できなかったが、走り込みのおかげでダッシュもお手のものだ。
何事も体力は大事だ。
木の影に隠れて知らない女子の腰に腕を回して抱きしめていた。
ナニアレ、羨ましい!
邪魔しようと近づこうとしたら、抱きしめられてる金髪美少女が止まれと言う。
え?虫?ビカビカ虫?
聞いた事ないんだけど。
私が寝込んでる間にそんな虫がわいていたなんて。
頭に乗ってるから姿が見えないが、虫は嫌だ。
頭を振りながら悲鳴をあげて、ロナルド様に助けを求めようとしたら鼻に違和感…
もうパニックになり手で払い除けようとしたらチクッとした。
さらにパニックになり、悲鳴をあげながらその場を逃げ出した。
時折サボるために何度か行ったことがある医務室に駆け込んだ。
医務室の先生に
「鼻が腫れているわ。消毒しておくけど今日は早退して家に帰ったらお医者さんに診てもらってね。
荷物も持ってきておくから、早く帰りないね」
教室にこの顔で行くのは嫌だったので助かった。
先生、優しい…
もうサボる為医務室は使いません!
今までごめんなさい!
それから先生が荷物を持ってきてくれたので、授業中で誰もいない隙に走って帰った。
今までの最速で帰宅出来た。
体力つけといて良かった。
走り込みの大切さを実感した後、医者を呼んでもらい、診察してもらった。
「痛みもないのなら心配ないが、腫れは少し続くかもしれない。痒みはないの?」
そう言われてみれば鼻がむず痒い…
気付いてしまってはもう耐えられない!
「先生、痒いです、痒くて堪りません」
「痛みがないなら菌は入っていないようなのでかぶれと痒みに効く塗り薬を出しましょう。何かあればいつでも連絡して下さいね。」
そういって爽やかに帰っていった先生。
鼻が腫れてない時にお会いしたかった…。
それからは鼻に薬を塗りたくったが、その薬がスースーすることすること。
目に染みて涙が止まらない。
目も鼻も腫れ、治ったと思ったら眠ってる間に掻いてしまうのか、また腫れて…の繰り返し。
掻くのを止めるため手を包帯でグルグル巻きにして寝てみたが、グルグル巻きの手で擦ったらしく朝起きて鏡を見たら、最初の状態に戻っていた。
先生に相談したら、寝る時につけて下さいと渡されたソレはつけ方が分からなかったので先生に付けてもらった。
扇状のものを逆さにした状態で首に巻かれ、留め具を止めたらあら不思議、ソレが邪魔で顔に手が届かない。
「先生、痒くても搔けません!凄いです!」
と感激していたら、部屋で先生の説明を一緒に聞いていた母の肩が小刻みに震えながら笑っていた…。
そんなこんなで痒みと格闘の末、ようやく元に戻ったのは2週間後だった。
最後の診察で先生が来られた時に
「よく頑張りましたね。
この掻き過ぎ防止の補助具は今まで使用することはなかったので廃棄しようかと思っていましたが、捨てずにおいて良かった。
塗り薬も匂いがキツイのによく耐えました。偉かったですね」と微笑まれた。
今まで見た目を褒められた事はあってもそれ以外では褒められた事がなかった私はポロポロ涙が溢れた。
なんだかわからない虫のせいで大変だったが、頑張って良かった。
優しく頭を撫でてくれた先生に私はついて行こうと決めた。
あれから私は学院に復帰したが今までのようには遊ばず、ひたすら勉強しまくった。
帰ってからは先生の所に通い、お願いしてお手伝いをさせてもらった。
先生一人でたくさんの患者さんを診ているのは大変なのにいつでも先生は丁寧で優しい。
泣き喚く子供にも
酔っ払いの暴れるおじさんにも
ずっと愚痴を言ってるおばさんにもだ。
先生は凄い!
私もたくさん勉強して早く先生を助けてあげたい。
そのためにもっともっと勉強しなければ!
あれ?私なんで学院に行きたかったんだっけ?
ま、いっか、とにかく頑張って、先生のお役に立ちたい!
私、頑張るわ!
応援ありがとうございます!
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