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進化
しおりを挟む最近ロイの虫嫌いが酷い。
休み時間のたびに、走り寄っては手を取り人気のない場所まで連れて行かれる。
「ロイ、大丈夫?授業中にも出たの?殺虫剤渡しておく?」
「違う…休み時間になると追いかけてくる…」
なんと!追撃機能も備え始めたのか!
恐ろしい進化だ…
「今も追ってきてる?」
ロイはソオーっと隠れている木の影から顔を出すとサッと私の背中に隠れた。
私もコソッと覗いてみると、ピンクの髪の女子生徒がキョロキョロしていた。
あの子は最近編入してきたキャサリン・グロウ男爵令嬢だ。
男子生徒に人気があるらしくいつでも男子が周りを囲んでいる。
その中には婚約者がいる男子もいて女子にはかなり反感を買っている。
「あ!」
目が合ってしまった…
ロイの手に力が入ったということは虫が近くにいる可能性が大だ。
ポケットから携帯用虫たたきと殺虫剤を出し、虫に備える。
「ここにいたのですね、ロナルド様~探しました~」
またロイの力が強くなる。
よく見ると彼女の頭の上にビカビカ虫がいるではないか!
「動かないで!」
こっちに来ようとする彼女を止める。
「え?」
「落ち着いて聞いてください。貴方の頭の上にビカビカ虫が止まっています。動くと刺す恐れがありますのでそのままでいてください」
「え?は?ビカビカ虫?。ムシ…虫…キャアーーーーーーーーーーー」
ビカビカ虫はビックリしたのか頭から離れ彼女の鼻に止まった。その瞬間、彼女は咄嗟に手で払おうとした。
「キャーーーーーイタッ」
虫は払われて飛んでいったが、彼女はパニックに陥ったのか泣きながら走って行ってしまった。
チラッと見えたが、鼻が真っ赤に腫れていた…
ビカビカ虫…恐るべし…
「なんか凄かったね…。鼻、大丈夫かな?」
「大丈夫だと思うよ、元気に走っていってたし。それより、それ、リリーが作ったの?凄いね。」
手元の虫たたきを見てロイが褒めてくれる。
先日、初めてビカビカ虫を見てから、殺虫剤が効くまでに攻撃をされた時の防具を必死に考え、徹夜して作った自信作だ。
普通に虫たたきはあるのだが、持ち手が長い。
携帯するには不便だ。
持ち手部分を短く切り、ヤスリをかけ、滑らないように持ち手部分にリボンをグルグルこれでもかと巻いた。
なかなか可愛くできたのだ。
「でしょー、自信作なの!折り畳めてね、ポケットにも入るよ!殺虫剤とこれで二刀流なの!」
これでしばらくは安心だ。
「そういえばさっきの彼女、ロイに用事があったんじゃない?」
「行ってしまったし、急ぎではないんじゃないかな」
大丈夫だというなら大丈夫だろう。
あ…さっきの彼女も香水の香りが強かったなあ…
やっぱり香水によってくるのだろうか?
そして針を持っているのか、それともカミキリムシのように噛むのか、まだまだ謎が多い虫だ。
しかしロイを守れたので良かった。
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