1 / 125
今日も彼は走ってくる
しおりを挟む
リリーナ視点
新学期が始まり、新入生も在校生もまだフワフワした落ち着かない感じのする学院の中庭にガッチリと後ろから婚約者にホールドされた私リリーナは何者かと戦わなくてはならない…多分…
数分前までのんびり中庭のベンチで持参したお弁当を食べながら読書をしていた。
そこへ猛スピードで私に突進してきた婚約者のロナルド。
いち早く反応した私はお弁当と本をすばやく避けけ、突進に備える。
「リリー、助けて!」と抱きしめながら耳元でささやくロイは微かに震えている。
「大丈夫!私がやっつけてあげる!どの辺にいるの?」
と聞けばロイの後を追ってきているとのこと。
ロイが走ってきた方向を見れば女子生徒数名が息を切らしながら走ってきていた。
きっと彼女達も追われていたのだろう。
彼女達が襲われては大変だ。
「貴方達危ないから早く逃げてー!」
と叫べば、一瞬キョトンとした後、
「キャアーー!」とまた走って行った。
そして私はポケットから携帯用虫除けスプレーを出して構えるとロイに確認する。
「ロイ、今奴らはどこにいるの?」
いつの間にか私の後ろにまわり込み抱き付きながら、
「今逃げてった彼女達を追っていってしまったのかな、もういなくなったよ」
と満面の笑みを浮かべている。
「ねえロイ、今日もまた出たの?私には見えなかったけど、虫なんて。」
ロイは子供の頃から虫が嫌いだ。
お茶会は外で行われる事が多いので私の側を離れなかった。
ロイ曰く、
「リリーがいないと寄ってくる」とのこと。
しかし私にはそれがちっとも見えない。
見えたことがない。
ビカビカしていて臭い虫なのだそうだが、図鑑を調べても載っていないその虫は、きっと新種に違いない!
捕獲出来れば大発見であり、ひょっとしたら命名権を授かれるかもしれない!
だが見えない…目を凝らしても擦っても見えない…
かなり小さいのか、それとも目に見えない程速いのか、動体視力は人並みなはずだが、未だに見たことはない。
それでもロイはその虫が嫌いなのだ。
小さい頃もプルプル震えて抱きついてきた。
背中をポンポンしてあげると、可愛らしい顔で微笑む姿は天使のようだった。
「この天使を守らねば!」と誓ったのはこの頃だ。
今も守っているつもりだが、敵を倒せた事はない。
だって私には見えないのだから。
それでもいつか必ず奴等を倒し、ロイの平穏を取り戻すのだ!
そして今、学院の中庭で殺虫剤片手に婚約者を守っている。
「ロイ、もういないよ。お弁当食べよ。」
「うん、リリーのサンドイッチ食べてもいい?」
「ありがとう♪」
と言って私の食べかけのサンドイッチをパクリと食べた。
「食べかけじゃなくて新しいのを食べてよ~それ最後のカツサンドなのにー!」
「俺もカツサンド食べたいから」
とニッコリ。
バタンと後ろで何かが倒れる音。
振り返ろうとしたらロイがまた抱きついてきた。
「また虫が出たみたい。刺されたのかな?危ないからリリーは行っちゃいけないよ。」
「え?刺すの?臭いだけじゃなく刺すの?てっきりカメムシの新種だと思ってたけどハチなのかなぁ。」
刺す虫なんて危険生物ではないか!
「ロイは刺されたことない?ハチの仲間なら危ないね。殺虫剤も強力なものに変えなきゃ!」
「刺されたことはないよ。いつもリリーが守ってくれてるから」とニッコリ。
バタン…
何かと思い音がした方を見ればまた女子生徒が数名倒れていた。
さっき走っていった女子生徒達だ。
逃げきれなかったのか…
「さ、刺されたの?殺虫剤撒いとく?」
「そうだね、ここからでも効くかもしれないから撒いとこ。」
女の子達にかからないようそっと殺虫剤を撒いておいた…。
新学期が始まり、新入生も在校生もまだフワフワした落ち着かない感じのする学院の中庭にガッチリと後ろから婚約者にホールドされた私リリーナは何者かと戦わなくてはならない…多分…
数分前までのんびり中庭のベンチで持参したお弁当を食べながら読書をしていた。
そこへ猛スピードで私に突進してきた婚約者のロナルド。
いち早く反応した私はお弁当と本をすばやく避けけ、突進に備える。
「リリー、助けて!」と抱きしめながら耳元でささやくロイは微かに震えている。
「大丈夫!私がやっつけてあげる!どの辺にいるの?」
と聞けばロイの後を追ってきているとのこと。
ロイが走ってきた方向を見れば女子生徒数名が息を切らしながら走ってきていた。
きっと彼女達も追われていたのだろう。
彼女達が襲われては大変だ。
「貴方達危ないから早く逃げてー!」
と叫べば、一瞬キョトンとした後、
「キャアーー!」とまた走って行った。
そして私はポケットから携帯用虫除けスプレーを出して構えるとロイに確認する。
「ロイ、今奴らはどこにいるの?」
いつの間にか私の後ろにまわり込み抱き付きながら、
「今逃げてった彼女達を追っていってしまったのかな、もういなくなったよ」
と満面の笑みを浮かべている。
「ねえロイ、今日もまた出たの?私には見えなかったけど、虫なんて。」
ロイは子供の頃から虫が嫌いだ。
お茶会は外で行われる事が多いので私の側を離れなかった。
ロイ曰く、
「リリーがいないと寄ってくる」とのこと。
しかし私にはそれがちっとも見えない。
見えたことがない。
ビカビカしていて臭い虫なのだそうだが、図鑑を調べても載っていないその虫は、きっと新種に違いない!
捕獲出来れば大発見であり、ひょっとしたら命名権を授かれるかもしれない!
だが見えない…目を凝らしても擦っても見えない…
かなり小さいのか、それとも目に見えない程速いのか、動体視力は人並みなはずだが、未だに見たことはない。
それでもロイはその虫が嫌いなのだ。
小さい頃もプルプル震えて抱きついてきた。
背中をポンポンしてあげると、可愛らしい顔で微笑む姿は天使のようだった。
「この天使を守らねば!」と誓ったのはこの頃だ。
今も守っているつもりだが、敵を倒せた事はない。
だって私には見えないのだから。
それでもいつか必ず奴等を倒し、ロイの平穏を取り戻すのだ!
そして今、学院の中庭で殺虫剤片手に婚約者を守っている。
「ロイ、もういないよ。お弁当食べよ。」
「うん、リリーのサンドイッチ食べてもいい?」
「ありがとう♪」
と言って私の食べかけのサンドイッチをパクリと食べた。
「食べかけじゃなくて新しいのを食べてよ~それ最後のカツサンドなのにー!」
「俺もカツサンド食べたいから」
とニッコリ。
バタンと後ろで何かが倒れる音。
振り返ろうとしたらロイがまた抱きついてきた。
「また虫が出たみたい。刺されたのかな?危ないからリリーは行っちゃいけないよ。」
「え?刺すの?臭いだけじゃなく刺すの?てっきりカメムシの新種だと思ってたけどハチなのかなぁ。」
刺す虫なんて危険生物ではないか!
「ロイは刺されたことない?ハチの仲間なら危ないね。殺虫剤も強力なものに変えなきゃ!」
「刺されたことはないよ。いつもリリーが守ってくれてるから」とニッコリ。
バタン…
何かと思い音がした方を見ればまた女子生徒が数名倒れていた。
さっき走っていった女子生徒達だ。
逃げきれなかったのか…
「さ、刺されたの?殺虫剤撒いとく?」
「そうだね、ここからでも効くかもしれないから撒いとこ。」
女の子達にかからないようそっと殺虫剤を撒いておいた…。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
767
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる