私の役って一体何なんですか?

jun

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悪役は誰だ

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通常授業が始まり、クラス全員優秀な事もあり、楽しく学校生活は順調だ。
だが一つ問題がある。

兄様とサミーユの同級生であり、アクセル様の婚約者のシャルロット・カドリス公爵令嬢が、事あるごとに絡んでくるようになった。

「ちょっとケイトリン様、貴方、どうしてサミーユ様を呼び捨てなさるの?
幼馴染みだとしても婚約者でもない貴方が呼び捨てするのはおかしいと思うの!」

昼休みの食堂に響き渡るシャルロット様の声。

キョトンとする私達。
睨みつけるサミーユ。
ため息をはく兄様。

「俺が許可したからケイトは呼んでいるだけだ。それをどうして君がこんなに気にするのか疑問だ。
ケイトに会う度、それも大勢の生徒がいる食堂で、毎回大声で叫んでいる君の方がおかしいと思うが、俺の方がおかしいのか、カドリス公爵令嬢。」

「私は良かれと思って注意しておりました。
サミーユ様、ザイル様、失礼致しますわ。」

フンと鼻をならし、取り巻きを連れて食堂を出ていった。
お昼はあの人達はどうするんだろう?

「あれは何なんだ⁉︎毎回毎回同じ事を言って何が楽しいんだよ⁉︎くっだらない!」
サミーユが毎日追っ払ってくれているからかなりストレスが溜まっているようだ。

「教室でもあんな感じなの?アクセル様に報告したら?」

「アクセル様も気の毒に・・・僕もあの人は苦手。アクセル様も諌めてるみたいだけど、聞かないみたいだよ?アレで王太子妃教育してるのかな?
してるからストレス発散してるのかな?」
と呆れる兄様。

ドリーが、
「あの人は昔からよね。どこかピンクだったら良かったのに。

あ…ごめん、アンジェラ、アンソニー。
ダメね、気をつけるって言ったのに…。」
2人の話しを思い出し、俯いた。

「良いの良いの、もう大丈夫だから気にしないから。でも、ケイトの話しを聞いた後だからか、なんだかあの方、“悪役令嬢”みたいよね…」とアンジェラが言った。

私も思った。
あの人なのか⁉︎私ではなくあの人なのかと少し喜んでしまった。

「確かにそれっぽいわよね。でもメインにはなれないんじゃないかしら?華がないもの、華が。」
意外と毒舌なマレーヌ。

「「「確かに・・」」」と男性陣。

「自称ヒロインがたくさんいるなら悪役令嬢もたくさんいるんじゃないの?
その、なんだったかしら・・“ルート”?って言うやつ?そのルートによってたくさんいるのよ、候補が。」

確かに。
でも、何かとサミーユの事で絡まれるのは私だ。
ドリーでもマレーヌでもなく私にだけ絡んでくる。呼び捨てにしているからか?
そもそもサミーユが婚約者を作らないのがいけないんだと思う。
見た目良し、家柄良し、頭も良し、性格は一見良しなのだ、選びたい放題なのに選ばない。いつも兄様と一緒にいるからなのかもしれない。
兄様は、そこらへんの令嬢より美しい。
そして話し方も男男していない。
そっち系なのか⁉︎
それはそれで良い!とても良い!
家なんか私の子供に継がせれば良いし。
美しい男同士のあんな事やこんな事・・・なんだか楽しげだ。
フフ…兄様とサミーユ…フフ…どんな風に愛を語るのだろうか…。
どっちがどっちなんだろう…。

「ケイト、気持ち悪い。何笑ってるの?」
と兄様。

「お前、俺とザイルを見てニヤニヤしてたな、ロクな事じゃないだろ?言ってみろ!」

「いやいや、言えないし考えてないから!」

「言えないってなんだ!言ってみろ!」

「兄様もサミーユも婚約者を作らないのは2人が出来てるからなのかと思っただけよ!」

「「ハア~⁉︎」」

そこからは兄様からめちゃめちゃ怒られた。

「ケイト!僕はね、女の子が大好きなの!
サミーユになんか負けないくらい好きなの!
でも今はサミーユとかみんなといる方が楽しいし、勉強も楽しいし、好きな子もいないから婚約者も本気で探してないの!
それをサミーユといつも一緒だからって、そんなこと言うケイトは母上に言ってお仕置きしてもらいます!今度そんな事を言ったら、次はお祖母様に言うからね、分かった?」

兄様は怒っているから気付いていないが、
食堂は騒然としている。
“女の子が好き”で食堂はどよめいた。
婚約者がいない事が確定し、小さく歓声が上がった。
腐女子達からはため息があちこちから聞こえた。

「ザイル、落ち着け!食堂にいる女子が大変な事になってるから!」
と諌めるサミーユ。

その姿を見て、また歓声。
二人の姿にガッカリしてるのか、喜んでいるのか、どちらにしても人気者なんだなと実感。

「なんか凄いね…」と恐れ慄いているピンク兄妹。
淡々と食事を進めるドリー。
すでにデザートに取り組んでいるマレーヌ。
お祖母様にだけは叱られたくないと震え上がる私。

そんな私達を見つめる集団、生徒会メンバーにジッと見られているとは思ってもいない私達だった。
特にタイラー副会長の視線の先に私がいる事を。














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