13 / 102
悪夢
しおりを挟むぐっすり眠って疲れも取れた私とブライアンは細かい物をドンドン片付けていった。
粗方片付いて、遅い朝食をとった。
「あれからどうなったのかな…カールもナタリア様も」
「カールは入院してるだろうし、あの人は…留置されてるだろうな」
「一番隊…私は移動だしカールは戻って来れないし、ヤコブだけでは心許ないなあ」
「そうだな、シシーの移動を待ってもらうしかないんじゃないか。」
「そうだね…団長と相談してみる。」
なんとなく暗くなってしまった。
ブライアンが、
「そういえばウエディングドレスは出来たの?」
と話題を変えてくれた。
「うん、後は微調整するだけ。」
「楽しみだ。綺麗だろうな。」
「ドレスは綺麗だよ。中身が私だからどうだろうね。でも楽しみ!
あ!そういえばライはどうしてあの日休んでたの?」
「あーーーーそれは…シシーが帰ってきたら渡したい物があって…それを取りに行く為に急遽休みをとったんだ…。」
「渡したい物?」
「ちょっと待ってて!」
ブライアンは自分のカバンの中から綺麗にラッピングされた小さな箱を持ってきた。
「驚かせようと思ってたんだけど、こんな状況で忘れてた…ごめんな。
これ、俺の気持ち。」
照れたブライアンが差し出したプレゼントを受け取り、
「開けていい?」
「もちろん」
開けてみると、一粒のダイヤモンドと小さなピンクダイヤが二つ付いているシンプルだけどセンスの良い指輪が入っていた。
「ライ…これは?」
「来月には結婚するけど、婚約指輪。遅くなってごめん。」
「ライ・・・」
嬉しくてブライアンに抱きついた。
「ありがとう!嬉しい!」
「良かった。無駄遣いって怒られると思ったよ。」
色々あったけど、ブライアンとこうしていられる事が嬉しい。
騎士なのでこういった指輪はつけられないから諦めていた。
でもやっぱり羨ましかった。
友人達の指にはめられた婚約指輪を見て、騎士は指輪なんかいらないなんて強がりを言っていたが、一生に一度の婚約指輪をはめてみたかった。
「本当にありがとう…ライ、大好き!」
「そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ。買って良かった。」
「あ!待って!」
自分のカバンの中からラッピングされた箱を出す。
「ライ、これ。私も任務が終わったら渡そうと思ってたの。」
箱を開けてみるブライアンが、
「あ!懐中時計だ。よく俺の懐中時計壊れてたの知ってたね。」
「うん、自分のじゃなくて大事なお祖父様の形見の時計を使ってたから自分のは故障したのかと思ったの。裏に名前を入れて貰ったの。開くと蓋の内側に写真も入れられるよ!」
「あ、本当だ!ありがとう、シシー。ここにシシーの写真を入れておけるね。」
「私のは恥ずかしいから子供が出来たら子供の写真を入れられるかなと思ったの。」
「子供・・・じゃあ早速…」
と言って、私を抱えて寝室へ行き、夜まで愛し合った。
お風呂に入り、かなり遅い夕食を食べながら、
「明日からライは出勤でしょ?」
「そうだな、なんだかバタバタしてゆっくり出来なかったけど、ある意味バタバタしてて良かったよ。この三日間をボォーっとしてたら気分が滅入っていたと思うから。」
「そうかもね。このバタバタが気持ちを落ち着かせるのに丁度だったと思う。」
「明日、シシーも一緒に行く?」
「うん、調書取られるだろうし、ライと一緒に出勤しようと思ってた。」
「じゃあ二人で出勤しよう。」
「明日イーグルのラルス団長に挨拶してこようかと思ってるの。迷惑かけちゃったし。」
「そうだな、俺も行こうか?」
「とりあえずは私だけ行ってくる。ラルス団長は好きだけど、シックス副団長の事は苦手なんだよね…なんかいつも睨まれる…。」
「あはは、シシーは知らないのか?あの人、目が悪いんだ。眼鏡は嫌いだってかけないからいつも目を細めてるんだよ。
優しい人だから安心して。」
「えーー、そうなの?目が悪かったからあんなに目付き悪かったんだ!
なーんだ、安心した。毎回睨まれるから怖かったんだよね。」
そんな話しをした後は夕食の片付けをして、
明日は早いからと布団に入り、二人で眠った。
夜中、ブライアンが飛び起きた気配がしたので、私も飛び起きた。
隣りで肩で息をするブライアンに、
「どうしたの?夢見が悪かったの?」
と背中を摩った。
「シシー・・」
とか細い声で抱きついてきた。
「大丈夫?私はここにいるよ、大丈夫、大丈夫だよ」
と背中を摩り続けた。
ブライアンを横にならせ、抱きしめながらずっと背中を摩った。
ようやく眠ったブライアンの背中をしばらく摩り、少し離れようとすると、ギュッと抱きしめられた。
「眠れないの?」
「離れないで、お願い…」
「うん、分かった。」
お互いを抱きしめ合い、しばらくするとブライアンの寝息が聞こえ始めた。
一安心したが、離れるとまた起きそうなのでずっと抱きしめていた。
今までは私が甘えてばかりだったのに、この数日でブライアンは子供のように甘えてくる。
甘えるというより、怯えているんだろうと思う。
ブライアンの背中を優しくトントンと叩いているうちに私もいつの間にか眠っていた。
119
お気に入りに追加
4,255
あなたにおすすめの小説
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
君のためだと言われても、少しも嬉しくありません
みみぢあん
恋愛
子爵家の令嬢マリオンの婚約者、アルフレッド卿が王族の護衛で隣国へ行くが、任期がながびき帰国できなくなり婚約を解消することになった。 すぐにノエル卿と2度目の婚約が決まったが、結婚を目前にして家庭の事情で2人は…… 暗い流れがつづきます。 ざまぁでスカッ… とされたい方には不向きのお話です。ご注意を😓
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷
※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲
最愛から2番目の恋
Mimi
恋愛
カリスレキアの第2王女ガートルードは、相手有責で婚約を破棄した。
彼女は醜女として有名であったが、それを厭う婚約者のクロスティア王国第1王子ユーシスに男娼を送り込まれて、ハニートラップを仕掛けられたのだった。
以前から婚約者の気持ちを知っていたガートルードが傷付く事は無かったが、周囲は彼女に気を遣う。
そんな折り、中央大陸で唯一の獣人の国、アストリッツァ国から婚姻の打診が届く。
王太子クラシオンとの、婚約ではなく一気に婚姻とは……
彼には最愛の番が居るのだが、その女性の身分が低いために正妃には出来ないらしい。
その事情から、醜女のガートルードをお飾りの妃にするつもりだと激怒する両親や兄姉を諌めて、クラシオンとの婚姻を決めたガートルードだった……
※ 『きみは、俺のただひとり~神様からのギフト』の番外編となります
ヒロインは本編では名前も出ない『カリスレキアの王女』と呼ばれるだけの設定のみで、本人は登場しておりません
ですが、本編終了後の話ですので、そちらの登場人物達の顔出しネタバレが有ります
想定よりも字数が超えそうなので、短編から長編に変更致します
申し訳ございません
拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】
僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。
※他サイトでも投稿中
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる