帰らなければ良かった

jun

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話し終えたブライアンは途中から涙をずっと溢していた。

ファルコン騎士団の副団長で、眉目秀麗、いつも冷静で厳しくも優しい男が、ポロポロと涙を溢している…。
きっと自分が泣いている事に気付いていない。

「ブライアン…大丈夫か?」

「…はい。俺は大丈夫です…シシリーが心配です…。」

「お前はいわば被害者だ。シシリーだけじゃない、お前も傷付いている。
しばらく休め。」

「いえ、俺は大丈夫です。」

「お前…泣いている事に気付いてるか?」

「え…」

自分の顔を触り、ようやく泣いている事に気付いたようだ。

バタン!

仮眠室のドアが開き、シシリーがブライアンに抱きついた。

「ブライアン…ごめん…逃げて、ごめん…。」

「シシリー…ごめん…泣かせてしまって…ごめんな…」

ミッシェルも執務室に来て、

「隣りで聞いてました。なんだか…この怒りをどうしたらいいのか分かりません…。」

「俺もだ。ブライアンのクソが!と思ってたのに、あのブライアンが泣いてるのにも気付かないほど傷付いている…これは立派なレイプだ。」

「女性の性被害のケアもデリケートなものですが、男性の場合のケアも難しいですね…」

「そうだな…。
俺はその女の尋問に行くが、ミッシェルはどうする?」

「もちろん、私も行きます。この二人の分まできっちり償ってもらわないといけないので!」



「お前達は少しここで休んでいろ。俺はその女の尋問をしてから戻ってくる。
仮眠室もシャワーも使って良いぞ。
意外と空気の読める男だからな俺は。
何をしてても邪魔はしないからゆっくりしてろよ。」


「団長…全く読んでないですよ!さあ、行きますよ!

シシリー、ブライアン、少し二人で眠った方がいいよ。じゃあ行ってくる。」



そう言って二人は執務室を出て行った。


「あ…俺…シャワー浴びてくるわ…ごめん…俺…こんな汚い身体でシシーに・・触って・・・・綺麗に…して・・・・くる…」
ポロポロと涙をこぼすブライアン…

「私も埃だらけだよ。私の方が汚いね。」

「シシーは汚くないよ!汚いのは…俺だ・・・俺…俺…シシーだと思って…あの女の・・・ウッ…」
口を抑え、トイレに駆け込んだブライアンはさっきの私のように何度も何度も吐いた。
吐くものがなくなっても吐き気は止まらない。

背中を摩っても、止まらない吐き気と涙…。

「汚いからシャワー浴びるね…待ってて…」

「一緒に浴びよう、私も浴びたいから。」

「嫌だ!シシーに身体見られるのは…嫌だ・・・きっと…「ライ、私が綺麗にしてあげるから!大丈夫だから!ライを綺麗に洗ってあげるから!お願い、私にやらせて。」

「お願い…シシー…嫌いにならないで…。
でも、シシーを傷付けるのも嫌だ・・。
俺の身体には多分昨日の痕跡が残ってる…。そんなの見られるのもシシーに見せるのも嫌だ・・・」

「うん…見たくない…。
でもね、ライ、今ライの身体に付いている傷やアザは、いつも私が付けているものとは違うよ。
犯罪の証拠だよ。私が犯罪の証拠を確認しながら、ライの身体を綺麗に、ピカピカにしてあげるよ。」

「証拠…。確かにそうだな…じゃあシシーに確認してもらいたい…いい?」

「うん、シャワー室行こう。」

二人でシャワー室に入り、脱衣所で服を脱いでいく。
団長用なのでバスタブはないが、広めのシャワー室だ。

ブライアンが制服のシャツを脱いで背中が見えた時、息を飲んだ。

引っかかれただろう無数の傷を見て、鼓動が早くなる。自然と涙が溢れてくる。

鏡に映った私を見て、ライが顔を顰めしか俯いた。

「ライ、泣くのは許して…。だから、ライも辛かったら言ってね。」

「ごめん…シシー、こんなの見せてごめんな…泣かせてごめん…」

「ううん、大丈夫…だと思う…」

二人で泣きながら服を脱ぎ、シャワー室へ入った。

シャワーを頭から浴びながら石鹸で何度も洗った。

ときおり、ブライアンが私を抱きしめて声を殺して泣いていた。
私も泣いた。
二人で泣きながら、引っ掻き傷やキスマークの跡を洗っては、私がブライアンの傷にキスをしていった。

あちこちにキスをしていると
「そんなに跡があるのか…」とまたブライアンは泣いた…。

女性では大きい方の私よりも頭一つ大きいブライアンが小刻みに震えながら私に抱きついて泣いている。

「シシー、お願いがある。今、シシーを抱きたい…お願い…シシー・・・」

「いいよ、ライの気の済むまでって言いたいけど、ここ団長の仮眠室だから一回だけね。後は帰ってからね。」

「うん。シシー、愛してる」

「ライ、愛してる。」

それからはブライアンがいつものように私を慈しむように抱いた。
ブライアンが果てる時に、
「シシー、愛してる」と言いながら一粒涙を溢した。
何度も「愛してる」を繰り返し、二度目の射精後、ようやく笑顔になったブライアンとシャワー室から出て、髪を乾かした後、ソファに二人で座り、寄り添いながらいつの間にか眠っていた。

「シシー、団長達が戻ってきたみたいだ」
とブライアンに起こされ、二人で執務室へのドアを開けた。













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