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手紙の内容

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二人で思い出した手紙を読んだ。


『親愛なるシリル様

あの長い夜に激しく愛された日に、シリル様の子を身籠る事が出来ました。
シリル様の第一子となる男児を無事出産致しました。名前はシリル様から少し頂き、“シャルル”と名付けました。
本来ならばシリル様と相談し、お決めしたかったのですが、シリル様が御令嬢と結婚なさったと知り、御連絡が遅くなりましたこと、謝罪致します。

その後、シリル様がいつ迎えに来ても構わないよう、シャルルは厳しく躾け致しましたので、何の問題もございません。
シャルルはシリル様に似て顔立ちも良く、賢い子供です。
私は我儘は言いません。
正妻は政略的に変えられないのでしょうから、私は第二夫人で構いません。
シャルルと二人、ひっそり過ごせる別邸にでも暮らせて頂けるならば何も言いません。
今暮らしている修道院からそちらに向かうまでに、先にシャルルを向かわせます。
私は支度が整い次第、シリル様の元に向かいますので、それまでシャルルをよろしくお願い致します。

貴方のフランシス・ザリール』





「「・・・・・・・・・・」」

最初に口を開いたのはリジー。

「ねえシリル…って言ってるけど、私は怒った方がいい?それとも呆れればいい?この方、心の病なの?サーシャ様と契約したんじゃないの?最初からシリルの種を狙って第二夫人を狙ってたって事でしょ?
普通元貴族の娼婦をシリルに宛てがう?
私に子供ができないかもと心配してそんな人達をシリルに抱かせてたの?
どう考えたって同年代の娼婦を相手にさせるなんて頭おかしいとしか思えない!
もう王族なんて誰も信じない!
嫌い、陛下も王妃様も王太子殿下もシリルも嫌い!」

そう言って泣きながら出て行こうとするリジーを捕まえ、抱きしめた。

「リジー…リジー、落ち着いて。お願い、リジー…一人で泣かないでって言ったよね、俺はリジーを愛してる。リジーだけを愛してる。
誰の事も抱きたくなかった…本当に抱きたくなかった…でももうケネスは抱けなかった。
ケネスにも将来がある。今まで俺のせいでケネスには友人も恋人も出来なかった。
ケネスに好きな人が出来たなら、俺は専属娼婦を抱く選択しかなかった。
射精するだけなのだからと娼婦が誰なのかなんて考えてもいなかったし、いかに早く熱を散らすかしか考えてなかった。
顔すら見てない相手に情も何もない。
相手がどんなに俺を好きでも、俺にその想いは届かないし、受け取らない。
リジーを抱くように娼婦を抱いた事なんて一度だってない。

リジー…父上も兄上も母上もリジーを俺よりも大切に思ってるよ。
態と娼婦を選ぶような事する訳がない。
ましてやリジーに子供が出来ないなんて考えた事もないと思う。
だから俺の家族を信じて欲しい。
怒りは俺だけにして欲しい。
俺がもっとリジーの立場に立って考えていればこんな事にならなかった。
ごめん、ホントにごめん…何回も傷付けてごめん…でも俺はリジーを離さないよ。
どんなに嫌われてもリジーだけは誰にも渡さない。
俺はリジーをたくさん傷付けたけど、俺以外の奴がリジーを傷付けた時は必ず相手に倍以上の傷をつけてやる、死なせて欲しいと願うほどね。
リジーは優しいからすぐ許しちゃうけど、俺はそんな奴許さないから、怖がらないでね。」

俺の腕の中で泣いていたリジーは、俺が話してる間に落ち着いたのか、鼻をグスグスしてはいるが泣き止んだようだ。

「ごめんなさい…あの頃の事を思い出したら、あの時言えなかった事が溢れてきちゃった…。
陛下や王妃様、サーシャ様の事もごめんなさい…いつも私を助けてくれたのに…。
ただ似たような手紙が何枚も何枚も送られてきたから、思い出して気持ちが爆発しちゃった…」
と当時言いたくても言えなかった思いが出たのだろう。
リジーの涙を拭きながら顔を見れば、スッキリした顔をしている。

「スッキリした?後は言いたい事ある?」
と聞けば、
「たくさんあり過ぎて、今はいい・・・」
と怖い事を言ったが、とりあえずは落ち着いた。


リジーがお茶をカーラに頼む時、リジーの顔を見て、
「旦那様・・・こんなに目を真っ赤にした奥様を見たら坊っちゃま達が心配してしまいます!
どれほど泣かせたんですか!
奥様が許してもカーラが許しませんよ!
王妃様に言いつけますからね!」
と恐ろしい事を言うので、二人で母に言うのだけはやめてと止めた。

カーラと共に何故かマクスとシャルルも付いてきて、
リジーの顔を見たマクスが、
「いじめ、だめ、ぜったい!」と聞いた事があるようなフレーズを言いながら俺の足をキックしていた。
シャルルはハンカチで優しくリジーの涙の跡を拭いてあげていた。
優しい長男だ。
それを見ていたマクスは、
「もうだいじょぶよ~」とリジーに抱きついていた。
そんな二人に癒されて、四人でお茶とお菓子を楽しみ、子供達はカーラと戻っていった。

「良い子ね、シャルルは。
優しいお兄ちゃんが出来てマクスも嬉しそうだね。
この騒ぎで、唯一良かったのはシャルルが優しい可愛い子って事だね、シリル。」

本当にあの子は良い子だと思う。
このタイミングで我が家に来た事は良かったのかもしれない。
これ以上こんな手紙を書く母親の側にいたらシャルルはどうなっていたのか分からなかっただろう。

「あの手紙には支度が整い次第に屋敷に行くとか書いてあったから、そろそろ屋敷に来る可能性が高い。
屋敷に連絡して捕まえておいてもらおう。
父上達にもこの手紙を見せてくるけど、大丈夫?」
とリジーに確認すると、
「大丈夫。もうスッキリしたから。私はマクスとシャルルの所に行くからシリルは陛下に報告してきて」と言い、俺は兄上の所に行った。
父上より兄上が娼婦の事は詳しいから。

兄上に手紙を見せて、リジーの事を報告すると、
「あの女・・・」とブチギレていた。
すぐに俺の屋敷に俺の部下の第二騎士団から精鋭を向かわせ、シャルルの母親を確保する為待機させた。

そして翌日、女と男を確保したと連絡がきた。















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