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雅彦の話
しおりを挟む麻美の母 視点
やっぱり今週もこの男は懲りずにやって来た。
玄関先での土下座にうんざりして、家に入れた。
「雅彦くん、あなたと麻美はもう何の関係もないんですから、こうやって来られても迷惑なだけなんです。
あなたが騒げば騒ぐほど麻美の醜聞になるのが分からないんですか?」
「ご迷惑をおかけしてるのは重々承知しています。ですが、どうしても麻美さんに会って、どうしてこうなったのかを説明したいのです。
せめて、お義母さんにだけでもお話しを聞いてもらいたいんです。
お願いします、どうかお願いします…」
「あなたがあの女の人を妊娠させた以外に何を説明する事があるの?
あの人ここにも来てるんですよ!
何回も何回も麻美に嫌がらせのようにあなたとの仲を報告しようとしてくるんですよ!
だから麻美はここから出て行ったんですよ、あなた達のせいで!
実家やのに!自分の家やのに!
私達に危害を加えるんじゃないかって、体調も悪いのに、出て行ったんですよ!
なのに何回も何回もあなたも連絡してきて!
こうやってあなたが来るんだもの、帰って来れるわけないやないの!」
「本当にすみません…麻美…さんは、体調を崩してるんですか?」
「あんたになんか教えるかー!」
「どれだけ罵ってくれても構いません。
でも、俺が話す内容と麻美…さんがあの人から聞いた話しに違いがある事を知って欲しいんです。」
「ん?ん?なんて?雅彦くんが言う事と、あの腐れ外道が言ってる事が違うって事?」
「はい。先ず、あの人と、その…そういった事を…した記憶がないんです…」
「待って待って。セックスした事がないって事?」
「はい。一度だけ酔ってしまい、店で眠ってしまった時があったんですけど、何故かあの人の部屋で寝てたんです…。
起きたら横にあの人が寝てて、驚いてると酔った俺を放って置けないからとりあえず自分の部屋に連れて来たら、その後、俺に襲われたって言われて…。」
「そんなに酔っ払ってたら勃たんのちゃうの?あ、若いからそんな事ないんかな…、それで?」
「それで、パニクってしまって…麻美には言わないで下さいって言ってしまって…。
その後からは一人で店に来るように言われるようになりました。」
「で、その後やったわけだ。」
「違います、やってません!でも麻美に言うって脅されて…だからお金で解決しようと思って、あの人にそう言いました…」
「ふぅ~ん、で?」
「でもお金なんていらないから俺と付き合って欲しいって言われたんです…」
「そんで、やったわけだ!」
「だからやってません!もう麻美には自分からきちんと言おうと思ったから、もう警察にでもなんでも言ってくださいって言ったら…」
「言ったら?」
「泣かれてしまって…。」
「ハア?だから?泣かれたから許したん?
あーーーもう帰り!帰って帰って、あんたの話しはイライラするわ!」
「最後まで聞いて下さい!
泣かれた後、もう相手にならないので、俺は帰ったんです。
その後、冷静になってあの時の事を思い出したら、やった形跡がなかったんです。」
「例えば?」
「普通、やった後って身体汗かいたり、体液で気持ち悪くなりますよね?
眠っちゃったらなおさら。
それに匂いもなかったし、ゴミ箱にそれらしいゴミはなかったし。」
「中出ししたならないんちゃう?」
「それはそうかもしれませんが、でも何かしら痕跡がありますよね?
股間も綺麗なもんでしたし。」
「寝ぼけてシャワー浴びたんかもよ?」
「それでもです。そんなに酔ってやったなら、あんなにシーツは綺麗じゃないですよ!」
「うーーん、確かにシーツは乱れると思う…」
「ですよね?だから俺は托卵されたと思ってるんです。でないとあの執着はないです。」
「うーーん、そう言われたらそうなんかもしれないけど…」
「あの人は麻美にはなんて言ったんですか?そこを擦り合わせたいんです。」
「えーと、半年前から付き合いはじめて、今妊娠中で、結婚式には悪阻が酷いかもしれないから出れないとか、雅彦くんは一人でちょくちょくお店に来てくれてるとかなんとか。
あの腐れがここに来た次の日には友達のとこに行ってもうたから、これくらいしか聞いてないけど、何回あの腐れからメールとか電話とかしてきてたと思う。
着信拒否しても何故かきてたみたいだし。」
「そんな事を麻美に・・・・」
「ほんまに雅彦くんはアレとヤってないの?付き会ってないの?アレの子供は雅彦くんの子供じゃないの?」
「あの酔っ払った時にやってなかったら違います。」
「ちなみにそれはいつの話し?」
「4か月前です。」
「半年前から付き合ってるって言ってるのはなんで?」
「分かりません。その頃は麻美と二人でよく行ってました。」
「そういや、なんで一人でノコノコ、アレに会いに行ったん?何回か最近まで二人で会ってるよね?」
「ここ最近会社終わりに待ち伏せされたり、麻美が一人で飲みに来て酔ってるから迎えに来てとか言われて…騙されたんですけど…。」
「なんで行くかな~。で、いつ妊娠してるって言われたん?」
「麻美がいなくなる前の日です。急に電話で子供が出来たって言われて、慌てて会う事になったんです。あの時はこんな事になるなんて思ってなかったから…。」
「待ち伏せはいつから?」
「えーと、待ち伏せは1か月くらい前からだったと思います。でもGW開けくらいから急に馴れ馴れしくなりました。」
「なるほど…。て事は、GW明けから狙われ始めて、酔って連れ込まれたのが4か月前…待ち伏せが1か月前で、妊娠を告げられたのが、この騒動の前の日…」
「そう、ですね…」
「雅彦くんの言う事を信じたとして推理すると、おそらくGW辺りに、あの外道は付き合ってた彼氏に捨てられそうになってたか、捨てられた。そのタイミングで妊娠の発覚。
さてどうするかって時にロックオンされたのが雅彦くん。
なんとか堕とそうとしてもなかなか堕とせない。そこで、酔わせて部屋に連れ込む事を考えた。
そこまでは良かったけど、その後は上手くいかなくて焦ってターゲットを麻美に変えたってって事か…」
「なるほど、そういう事か…」
「ドアホ!なんで気が付かないん!」
「誰にも相談出来なくて冷静になれてませんでした…」
「ハア~せめて麻美に相談すればこんな事にはならなかったのに…。」
「すみません…」
「でも!完全に信じたわけちゃうから!」
「分かってます…でも…麻美が心配なんです…一度電話が来た時も、あの人が待ち伏せしてて、喋ってる時に態々話しかけてきたから切られてしまって…」
「雅彦くん…ちょっとしっかりしなさいよ!一人でどうにもならなかったら、専門家に相談しなさい!弁護士にでも親にでも相談すればいいでしょうが!
一人でグジグジしてるから付け込まれるんだよ!ちゃんとしぃ!」
「はい。でもお義母さんに話し聞いてもらってスッキリしました。」
「なるほどね~そういう事か。」
「「陸(くん)⁉︎」」
「あんた起きてたなら雅彦くんの話しアンタも聞いたら良かったのにーー!」
「いやいや、あんなでかい声で怒鳴ってたら起きるっちゅうの!だから最初から聞いてたし、録音してた。」
「あんたは出来る子やと思ってたわ~」
「って事らしいけど、麻美、どう思う?」
陸が録音していたデータを聞かせてくれた。
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