私は貴方から逃げたかっただけ

jun

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高知へ

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あれから気を失うように寝てしまい、気付くと、もう9時過ぎていた。
あれから4時間は寝ていたようだ。

リビングに行くと、瑞希が所狭しと朝食を作って、テーブルに並べていた。

「おはよう、麻美。」

「凄いね、こんなに食べられへんよ…」

「ええねん、イライラして作っただけやし。」

「そうなん…でも、お味噌汁、美味しそう」

「食べーや、好きなの、食べて」


豆腐とネギと落とし卵も入った、お味噌汁を食べた。

「麻美、ご飯食べたら出かけよ。」

「何処に?」

「携帯屋」

「携帯屋って…」

「後、おばちゃんに連絡しといた。しばらく泊まるって。」

「あ、ありがとう。なんか、言ってた?」

「心配してた」

「そっか…」

私が寝てる間に連絡してくれてたんや…

「瑞希、ほんまに、ありがとう…」

「そんな事より、身体は?なんともない?」

「うん…身体はね…」

「そっか…なんかごめん」


瑞希が作った朝ごはんをほとんど食べられなかったが、味噌汁と卵焼きと小松菜のお浸しを美味しく食べた。


「さあ、食べたら、行こか」


朝食後、瑞希に付き添われ、携帯電話を買い替えた、瑞希が。

買い替えたというか、もう一台契約した。

「え?私のを買い替えるんじゃないの?」

「まあまあ、帰ってから説明する。」


混乱したまま瑞希のマンションに帰り、

「瑞希、どういうこと?」

「麻美の携帯はあたしが持ってるから。だから新しい携帯は麻美が使って。」

「なんで?」

「着拒を外す。証拠を集めようかと。」

「いっぱい電話もメールも来るよ、瑞希にそんな迷惑かけられないよ!」

「いやいや、音出さないし、出ないし、見ないし。ま、ガン無視。あ、たまに見るかも、どんだけ証拠集まったか。」

「でも、「麻美!これは必要な事!あの女の悪事を簡単に暴く事が出来る大事な証拠なの!だから、この携帯は解約しない。」」

「証拠が集まったらどうするの?」

「集まったら考える。麻美は何もしなくていい。あたしが勝手にする事だから。」

「危ない事しないよね?犯罪になるような事しないよね?」

「そんな事しないよ。警察に渡すだけでも違うやん。その為だよ。」

「だったら良いけど…」


その後、私は何も言わなかった。
でも、瑞希に何もかも甘えて自分だけ何もしなくていいのか、悩んでしまった。

「麻美、心配してる?」

「…うん。」

「あの女と、麻美の元カレからの着信しか見ないから、大丈夫。」

「別に見られて恥ずかしいものはないけど…」

「大丈夫、麻美があっちに行ってから解除するから。」

「うん…」


何かモヤモヤしていて、スッキリしない。

そのうち、私が送った荷物が届いた。

家を怪しまれずに出るには、トランクを持っては来れなかったので、瑞希のトランクを借りた。
トランクに荷物を入れ、いつでも行けるようにはなった。

「麻美、ごめん、少し部屋に籠るから、好きにしてて。」

と言って、自分の部屋に行った。


今朝のメールで、パニックになってしまって瑞希に迷惑をかけてしまった。
今も仕事を中断させてしまっていた。
株はよく分からないけど、本当はパソコンの前から動けないはずだ。
なのに、私がいる限り、瑞希の仕事を邪魔するだろう。

ここも、早く出て行かなければ。

とりあえず瑞希の高知の家には行こう。
一先ず瑞希を安心させないと。

その家で、これからの事を一人でちゃんと考えよう。
そこに住むか、別の場所に行くか…。

もう誰にも迷惑はかけたくない…。

何も出来ない自分が情けなくて、
逃げてばっかりの自分が情けなくて、

ここにいては瑞希に甘えてしまう。
瑞希が甘えさせてしまう。
何もかも瑞希にやらせてしまう。

そんなのはダメだ。

でも、ほんの少しだけ一人で休みたい。
今は身体も心もクタクタで、ほんのちょっとだけ、誰にも会わず、誰とも話さず、何もしないで1日ボォーっとしたい…

私が居なくなったら瑞希はまた仕事をしないで、私を探すだろう。
なら、一旦高知の家に行こう。
私がその家に着いたと分かれば安心する。

少しだけ休んだら、


今度こそ一人になろう。


瑞希が部屋から出てきたら、高知に行くと伝えよう。
高知の家で休ませてもらったら、


私はそこからも逃げる。















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