私のような彼と彼のような私

jun

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夜会 クララ視点

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先生に飛び級制度を聞いた翌日、結局私は体調を崩し休んでしまった。
マットがポール先生から試験範囲や試験日時など飛び級制度の資料を預かってきてくれたので、ベッドでそれを読んでいた。
資料には卒業試験の事も書いてあり、その試験に合格すれば卒業資格が与えられるらしい。

卒業試験は、三年生の学習内容全てが範囲に入っている。
二年生になって半年ほどしか経っていないが、私は三年生の授業内容の学習に既に取り組んでいた。
頑張れば卒業試験を受けられるのではないかと思った。

ふとあの先輩を思い出した。
あの綺麗な先輩も私と同じに婚約破棄をしたのだ。
先輩は卒業試験を受けて、学園にはもう来ないのだろう。
私もやっぱり今までのようには登校出来ないと思う。
登校できても、こうやって具合が悪くなるのなら行っても意味がない。

卒業試験…私も受けてみようか…。
一度先輩に卒業試験の事を聞いてみたい。
でも話した事もない、職員室で見かけただけの後輩が声をかけても良いのだろうか…。
あの先輩の名前…聞けば良かったな…。

結局私は卒業試験を受ける事にした。
試験は三カ月後。
その間、自宅学習で試験範囲を頭に詰め込む予定だ。

気合いを入れて勉強していると、お母様が飛び込んできた。

「大変よ、クララ!夜会があるのよ、すっかり忘れていたわ!」

「夜会?あ、王太子殿下の生誕祭ですね、失念していました。」

「領地で買ったドレスがあって良かったわ!
クララはあれを着なさい、私もクララと色違いを着るわ。」

そうだ、既製品だったけど、見習いの方が作ったドレスなので他にはないとの事で、とても素敵なデザインと、見習いが作った物だからと破格の値段で売ってくれた。

パブロの色が全く入っていないドレス。

なんだか切ないけど、着たことのない色のドレスはちょっとドキドキする。

生誕祭は貴族籍の者は全員参加が義務だ。
あの二人も来るのだろうか…。
ミリエラは妊娠しているのなら来れないか…。

複雑な気持ちになりながらも夜会までの期間勉強に明け暮れた。


そして夜会当日。

朝から磨き上げられ、新しいドレスを着た自分は今までのように可愛らしい感じではなく、少し大人っぽい仕上がりに満足した。
パブロは可愛い感じが好きだったので、今日のような大人っぽい感じは新鮮で気分が上がった。

私のパートナーにはマットが付いてくれる事になった。
お父様とお母様はあれから仲直りしたようなのでギスギスしていた雰囲気はなくなった。


そして、夜会へと出発した。

久しぶりの夜会。
隣りにパブロがいない夜会に緊張する。

私の隣りにパブロではなくマットがいるという事で、パブロとの婚約は解消されたと皆んなが気付くだろう。
一斉に私に向けられる視線に手が震える。

「姉さん、大丈夫!僕が付いてるからね!」

頼もしい弟に気持ちが和らぐ。

「ありがとう、マット。貴方も早く婚約者を決めないとね。」

「僕はじっくり探すよ。姉さんもゆっくり探してね、あんな奴より良い奴はたくさんいるんだから。」

「そうね、ゆっくり探すわ。」

お父様もお母様もマットも私を守るように側にいてくれるから、緊張も解れてきた。

高位貴族からの挨拶も終わり、ダンスをマットとお父様と踊った後、マットと喉が渇いたので飲み物を貰おうとした時、急に腕を掴まれた。

振り返ると、そこにはパブロがいた。

「クララ、お願い、話がしたい。」

パブロの手をマットがはたき落とすと、
「姉さんに触るな!」
と私とパブロの間に立った。

「少しだけで良いんだ、マットもいてくれて構わない。お願いだ、クララ、話しを聞いて欲しい!」

パブロに捕まれた腕に鳥肌が立った。
そんな自分に驚いた。

あんなに好きだったパブロに触られて鳥肌が立つなんて信じられなかった。

マットとパブロが言い争っているうちに私はその場から逃げた。

気持ちが悪くて、吐きそうで、外の空気を一刻も早く吸いたかった。

そして庭園に一人で出ていた。
肩で息をし、近くのベンチに座った。

パブロに会ってしまうかもとは思っていた。
でもパブロに触れられて鳥肌が立つほど嫌いになった自分に驚いた。
いまだパブロを忘れていないと思っていたのに、身体は既にパブロを拒否している。
その事に気付き、涙が出た。
もう本当に終わってしまったんだと実感した。

その時、後ろから女性の泣き叫ぶ声が聞こえた。

「ミゲル、お願い、話しを聞いて!」

パブロと全く同じ事を言う女性はパブロと同じに必死だ。

「何も話す事はない。君にはその隣りにいる相手がいるんだから、その人に話しを聞いて貰えばいい。
こっちからは何も話す事はないし、聞く事も何もない。
君が別の男と子供を作った、それだけだ。」

え⁉︎

「だってミゲルは全然会いにきてくれなかったんだもの!」

「ハア…君が断っていたんだろ。同じ事しか言わないのなら、もう俺の前から消えてくれ!」

「アナ、行こう。僕達は彼に顔を見せられる立場ではないんだ。」

そう言って泣いている女性を連れて二人は行ってしまったようだ。

私は、とんでもない事を盗み聞きをしてしまった事で涙は止まっていた。

どうしよう…動けない…。

動けなくて困っていると、ミゲルと呼ばれていた男性が小さな声で、

「そうか…これで完全に終わったのか・・・」
と呟いたのが聞こえた。

この人…私と同じなんだわ…。
きっと相手の方を愛していたのね…。
なのに・・・

同じ立場の人が後ろにいると思うと、その人の辛さが分かって、また涙が出た。
後ろの人が嗚咽しているのが分かり、更に私も泣いた。

止められなくてしゃくりあげていると、
「大丈夫ですか?」と声をかけられた。

涙でぐしゃぐしゃになってた事も忘れ、顔を上げると、同じく涙でぐしゃぐしゃの男の人がいた。

「「あ⁉︎」」

同時に声を出して、驚いてしまった。


後ろの人はあの時の先輩だった。















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