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湖へ
しおりを挟むサーシャ様から連絡が来た。
王立図書館で待ち合わせをする事になった。
話しも話しなのでロジェだけを連れて図書館へ行くと、サーシャ様とケネスがいた。
「ケネス、シリルに付いてなくて良かったの⁉︎」と聞くと、
「アイツは1人で黙々と“思い出巡礼」”してるので、大丈夫ですよ。」とケネス。
横でサーシャ様が笑っている。
「は⁉︎何それ⁉︎何してるの、シリルは?」
訳が分からない。
てっきりケネスにベッタリなのかと思ったら、“思い出巡礼”・・・・とは?
「ブリジットの事思い出そうと必死なの、シリル。
凄く大事な事を忘れてるのは気付いたみたいだよ。それが自分の婚約者なんだって分かったみたい。まだ結婚した事は話してないよ。
番の事も。
でも、ブリジットに会わせてくれたら何か思い出すかもと言っても会わせてもらえないから、まだ何か隠されてるって疑ってるってのが、今の状況。
で、思い出って言っても、とにかくシリルとブリジットって会えない時期が長いから、思い出の場所っていつもの王宮の部屋と学院の図書館、ブリジットの屋敷くらいしかないから、図書館行ってるよ。そのうち名前はバレちゃうかもね。」
なんですと⁉︎
「いやいや、サーシャ様名前は駄目です。押しかけてきたらどうするんですか!」
「ブリジット、考えてみて。記憶を失くしても、ブリジットの事を大切な人って事は自覚してるんだよ。それを必死に思い出そうとしてる人が君を傷付けると思う?」
「それは・・・」
確かにあのシリルだ。突っ走ってそのまま突っ込んでくるだろう。
「だから、会わなきゃ良いだけの話しだし、もし会って“番”ってまた気付いたら、そこから始めれば良いんじゃないの?
もし何かの作用で番と分からなくても、一目惚れする可能性もあるよ。俺はそれに1票かな。」
「私も1票入れます!」とケネス。
「ハア~とにかく中に入りましょう。それよりケネスはサーシャ様の従者だから今日は一緒なんですか?」
そう。ケネスはサーシャ様の従者だけど、私がいる所では近くにいなかった。
「それもあるけど湖に行くのならケネスを連れて行こうと思って。強いからね。」
なるほど。シリルは連れていけない、何があるか分からないから。
そんな呪われてる様な湖に近付いたら引き込まれてしまうかもしれない。
そして図書館に入り、サーシャ様がいるので、あの禁止区域にすんなり入った。
そしてあの絵本を取り出し、サーシャ様とケネスが読んだ。
サーシャ様は絵本の存在に気付いていなかったらしい。
前に来た時には、何故か気付かなかったのだとか。
父から聞いた話しも話した。
それらしい湖の近くに何の石碑か分からない古い石碑があると。
2人が読んで、
「これは…確かに確認したいなぁ。湖の底に眠るお姫様…ずっとそこで悲しんでいるんだろうか…引き上げてあげたいな、本当だったら。」
「はい…。何百年も、今では誰も花すらあげてくれない寂しくて冷たいから助けてあげたいです…」
「だが、本当にそうかは分からない。これからどんどん寒くなる。今調査しないと来年になる。
かと言って、無策では行けない。
それにその絵本をなぞると、王子はシリル、遠い国の姫がブリジット、ちょっと違うけど、隣国のお姫様はケネスにあたると思う。
近くに行って、なにかしら影響があるのはブリジットもケネスも同じだと思う。
そう思うと、せめてブリジットは行かない方が良いと思うが、納得いかないんだろ?」
とサーシャ様。
「いきません!毎回毎回討伐に連れて行って欲しいと頼んでも、危ないからって置いて行かれて、他の人抱いて、嫌がらせの手紙何枚も何枚も送られてくる気持ちが分かりますか!
今回は絶対行きます!
私だって多少の竜力使えます。結界だって使えます!自分の命は自分で守ります!」
「え?ブリジット様、嫌がらせの手紙など送られて来ていたのですか⁉︎どうして言わなかったのです!私が地の果てまで追いかけて絞めますのに!」とケネス。
大騒ぎしていたら注意された。
それからは真面目に魔獣の本を片っ端から読んだが、それといって有力な情報はなかったが、昔、その代の王子の“番”が湖に花を捧げに行った事があり、“番”が一時行方不明になったが、すぐに見つかった。その時に石碑を建てたと書いてある、記述を見つけた。
「これってどういう事だと思いますか?行方不明になった時に何かあったから石碑を建てたのか、行方不明は関係なく石碑を建てたのか。」と疑問に思った事を口に出した。
関係ない事ない事はないのだろうが、その行方不明になった時、何があったのか。
「関係ないとは言えなさそうだね。姿を消した時、何かがあったのは明確だと思う。
やっぱりお姫様かな、考えられるのは。
だから石碑を建てた。
ブリジットが侯爵から聞いたその湖が最有力候補だね。
地図でどの湖か教えてくれる?」
禁止区域から移動し、詳しい地図を出してサーシャ様に湖の場所を教える。
「ここはよく討伐に行きますよ。大体この湖の近辺と言って良いのではないかと思います。先ず間違いないかと。ですが、この辺りは魔獣が多いのでブリジット様にそんな危険な場所には連れて行きたくないのですが…。」
とケネス。
「ほら!それ!シリルと同じ!魔獣寄せのアミュレットがあるなら魔獣避けもあるでしょ!それを大量に付けとけば寄ってなんか来ないんじゃないの!娼婦の方々は行けてどうして私が行けないのかをちゃんと説明して欲しい!」
毎回毎回シリルは危ないからとか言って私を連れて行かない。
なのに他の女の人は連れて行く。
それが嫌なのだ。
「まあまあ、落ち着いてブリジット。シリルもケネスも君を心配して言ってるのは分かるだろ?シリルは言いづらいのは、その娼婦って言うのは、元女性騎士とか現役騎士なんだよ。普通の娼婦はやはり危険だから連れては行けないからね。
ブリジットに嫌がらせの手紙を出しているのは現役騎士でシリルの相手をした者達だよ。
もう処分はしたけど、女性相手だから中々減らないんだよね、そういう勘違いする子。
何とかしようとは思うんだけど、相手は必要。
だからこの調査はブリジットにとっても大事な事、なんでしょ?」
「はい…もう嫌なんです…死ぬまで続くならシリルが私を忘れているうちに国外にでも逃げてしまいたいです…」
本当にもう限界なのだ…。
静かに暮らしたい。
好きな人と穏やかで幸せに暮らしたい。
ただそれだけなのに、次から次へとトラブル続きで私の心は限界だ…。
「そこまでか…。今回のこの調査で何かが変わるかもしれない。変わらせよう。
ブリジットの覚悟も分かった。
危険な事も分かって行くんだね?」
サーシャ様も王太子の立場なのに危険な場所に行かせてしまう事に申し訳ない。
「はい。我儘なのは分かってます。必ず無事に帰ってみせます。そして次の討伐には私がシリルの相手をします!
サーシャ様にも危険な目に合わせてしまう事、申し訳ありません…」
「いや本当はもっと早くにやらねばならなかった事だと思う。先代、先先代、ずっと前の王家がやらねばならなかったのに、先祖返りに全てを丸投げしていた王家が悪いのだ。
その事で不幸にしていた先祖返りの伴侶達には申し訳なく思う。
そして隣国にあるであろう姫の墓碑に冥福を祈る事をやらなければならなかったのだろう。
姫が怒るのも仕方ない事なのかもしれないな…」
私もそう思う。
何故そんな簡単な事をしなかったのだろう。
それまで仲睦まじくしていたのに、王子は姫が死んでしまったのに、なんとも思わなかったのだろうか?
言えるものならその王子に文句の一つでも言いたい。
「その王子様がいたら文句の一つも言いたいです!貴方のせいで子孫は苦労続きですって。」
と私が言うと、
「歴代の我が国の王族の墓碑はあるよ。
どの時代の王子なのかは分からないが、国王、王妃、第一、第二、が亡くなったら入る墓碑がある。一度連れて行ってあげるよ。」
サーシャ様がそう言ってくれたので、今度行く事が決まった。
「あのう…私はどうしたら良いのでしょう?
一体何の話しをしているのですか?」
とすっかり存在を忘れていたロジェが申し訳なさそうに聞いてきたので、謝りながらサーシャ様がロジェに説明してくれた。
絵本も読んで、ようやく私達が何をしたいのかが分かって、
「では微力ながら私もお力添え致したいと思います。ブリジット様に傷一つつかないようお守りします!」
と言ってくれた。
そうして私達は湖に行く事が決定した。
*完結まで後5話です。
番外編はタイトルを変えて執筆中。
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