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あっちからも、こっちからも怒られた

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シリル視点



またやってしまった…。

リジーの卒業式、パーティーの後ケネスと少し話したいと言うから、これはチャンスとテンションが上がった。
お祝いをしたいからと城に泊まらせ、ずっとリジーといられる!と思い、母上にも協力してもらいリジーの外泊をもぎ取った。

城に到着し、リジーを客室に案内してからケネスの所に行った。

「今日、リジーここに泊まるから。リジーがケネスと話したいから、じゃあ泊まろうって事になった。」

「は?ブリジット様が泊まる?俺と話したいから?」と驚いてるケネス。
「そう。リジー、卒業したらお前に会えなくなる事忘れてたらしくて、動揺してたから何か話しときたいんじゃないか。」

「お前…俺が…ここ最近どんだけブリジット様に会わないようにしてたか知ってんだろ!
俺がどんだけブリジット様に会うの我慢してたか知ってんのに、こんな事仕出かしたのか!」と激怒しているケネス。

そうなのだ。ケネスは落ち込んでいた。
もうすぐリジーが卒業してしまう事にケネスは落ち込んでいた。
リジーが卒業したら、リジーの前にケネスの姿を見せてはいけなくなるから。
だから少しずつリジーに会わない事に慣れるようにとリジーから距離を取った。
でも最後ならゆっくり話せた方が良いと思ったし、3人で夜通し楽しく飲んで食べてお喋り出来たら楽しいと思ったのだが、どうやらケネスにとっては迷惑だったらしい。

「ごめん…でもリジーには会って欲しいんだ。
お前に会えなくなるのが寂しいらしい。
夜は会わなくても良いから、一度だけリジーの話しを聞いてもらえるか?」

「・・・分かった。ブリジット様に会うよ…俺が泣きそうになったら、すぐ俺を何処かに連れ出して欲しい…」とお願いされて、リジーの部屋にケネスを連れて行った。

リジーはうまく話せないから手紙を書いたから読んで欲しい、プレゼントも使ってくれたら嬉しいとケネスに綺麗にラッピングされた箱を渡した。
ケネスは、リジーが話し出した辺りからもうヤバかったが、プレゼントを受け取ってお礼を言い終わった時に“ヤバい”と思って部屋から出した。

部屋まで連れてくると、ケネスはおいおいと泣いた。
プレゼントは手袋で、ケネスの名前が刺繍されていた。
それを見ては泣き、手紙を長い時間かけて読み、読み終わっても泣き、「ブリジット様…ありがとう…ありがとう…」と泣いている。
一体何が書いてあったのだろう…。
見せろと言っても見せてはくれなかった。

そこへ兄上が来た。

ケネスの酷い状況に驚いていたが、事情を説明すると、
「お前は本当に余計な事ばっかりするなあ…ケネスの心情を思えば酷としか言えないぞ。
これからお前とブリジットとの仲睦まじい姿を見続けるケネスの事考えろ。
ブリジットが忘れてるようだったのなら伝えないで、そのまま卒業させてやれば良かったんだ。
そのままケネスに会わないまま、“ちゃんと話したかったな”で終われば良かったんだよ。
せめて手紙だけでも預かるとかな。
ケネスはそれで納得してたんだよ、ブリジットへの気持ちを抑えこんで、お前の従者をするつもりだったんだ。
なのにお前は…。良かれと思ったんだろうけどケネスの気持ちを揺らがせた。
もうお前の側で従者は出来ないだろう…嫉妬してしまうから。

だったらケネスは俺が貰う。
俺の従者になったからと言って、お前が卒業するまでは何も変わらない。
学院も討伐も執務も今までと同じだ。
その代わりお前が結婚したら、ケネスは正式に俺の従者にする。
討伐には参加させるが、お前の相手は専門に任せる。最初からそうすればこんなややこしい事にはならなかったのにな…」
と言って帰っていった。

「ごめん、ごめんな…俺…また間違えた…」

「シリルが悪い訳じゃない…俺が…ブリジット様をどんどん好きになったのが悪い…。
本当は辛かった…お前とブリジット様を見てるのが…。

ブリジット様はこんな気持ちだったんだな…
こんなに辛かったんだな…飛び級したくもなるわ…。
ごめんな、シリル…俺はお前の従者をもう出来そうもない…ブリジット様を見るのが辛い…」

ケネスはそう言って自分の部屋に帰っていった。

その後俺はボォーっとして夕食の席につくのを忘れていた。
急いでリジーのところに行って、ケネスの事を話すと喧嘩になった。
上手く説明出来なくて、リジーを怒らせるだけだった。
折角リジーが同じ場所にいるのに全く側にもいられず、次の日の朝リジーの部屋に行くと、体調が悪いからと夜明け前に帰ったそうだ。

朝食の時、母に呆れられた。
「ハア~昨日の元気は何処にいったの…。喧嘩したならさっさとブリジットと仲直りしなさいよ!ホントに貴方はブリジットを怒らせる天才ね。」

全くもってその通り過ぎて反論出来なかった。

卒業式の後は新学期まで休みになる為、リジーのお土産を携えて、スケイル侯爵家に向かった。

馬に乗り、1人やってきた俺は門の前で頭を下げて、「なんの先触れもなく朝早くの訪、申し訳ございません。リジーに謝罪したくご迷惑と分かりながら罷り越しました。
どうかリジーに会わせて下さい!」
大声で叫ぶとリジーが玄関から走りながら怒っていた。
「こんな朝早くにそんな所で叫ばないで!恥ずかしい!」と。
意外と早く会えて安心した。

中に入れてもらえて、リジーの部屋に連れて来られた俺は、先ずカーラに叱られている。

「シリル様!あなた様本当に私を怒らせる天才です!昨日、お嬢様は泣きはしませんでしたが、悲しんでおられました!
初めてお泊まり、初めてのお3人と夜更かし、顔には出していませんでしたが、とても、とても楽しみしておりました!
なのにあの体たらく…。
徹夜してでもドアの前でお嬢様をお待ちする気概もないシリル様にガッカリでございます!」

俺はすみません、すみませんしか言っていない。
隣りでリジーが、「カーラ落ち着いて、なんか恥ずかしいから…」とオロオロしている。

「いや、カーラの言う通りだ。昨日の俺は不甲斐なかった…。ごめん、リジー。」と謝った後、何が合ったのかケネスの気持ちは言わずに説明した。

ケネスはリジーの前から静かに消えたかった事、リジーに会えなくなるのが淋しくて辛かったから、練習の為に早くからリジーに会わないようにしてた事、リジーに会ったら淋しくなって、あの後ケネスは泣いてしまい、恥ずかしくてリジーに会いに行けなかった事、兄上がそんなに淋しく思うならいっその事兄上の従者になれと急に決まった事、ケネスの気持ちも考えないで突っ走った自分が情けなくて落ち込んでいた事、多少の嘘を混ぜながらリジーに話した。

「そっか…私も寂しいもの…いつか会えると良いな…」と悲しそうな顔をしたので抱きしめようとしたら、飾り棚に飾ってあるリジーの絵を見つけた。

「あれ?あの絵綺麗だね、俺も欲しいなぁ、誰が描いたの?」と聞くと、キョトンした顔をしたリジーが、
「え?知らないの?あの絵はケネスが描いてくれたものよ。あの図書館からクッキーをあげた時にお礼だって貰ったの。
ほらシリルはハンカチと香水をくれた時よ。」

あの時かぁ…。
俺に何をプレゼントしたのか絶対言わなかったのはリジーの絵だったからか。
いつの間に描いたんだろう。
あんな可愛い笑顔のリジーの絵なら俺も欲しい。そしてあんな顔をケネスにも向けている事実に気がついた。
リジーをギュッと抱きしめた。
「リジーは誰にも渡さない!」と言うと、
「誰に渡すって言うのよ、シリル。変なこと言わないで。」と笑っている。
リジーが鈍くて良かった。

とにかく仲直りは出来たようだ。

帰りに侯爵に捕まって、また叱られた。
次今回のような事をやったら屋敷に立ち入り禁止だと言われた。
侯爵の隣りで夫人が指をボキボキ鳴らしていたので、平身低頭謝った。

次は侯爵夫妻に怒られるような事はしまいと心に誓って帰った。








*すみません、予約出来てませんでした!







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