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進級と接近禁止解除

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シリルからのカードを貰ったあの日からお茶に何度か誘った。
その時にケネスに好きな女の子がいる事、シリルとケネスの今の関係を聞いた。
どうしても熱が溜まった時はケネスに処理してもらっているが、今は以前のような関係ではなく喧嘩しながらなんとか処理しているそうだ。
シリルも本当なら私にしてもらいたいが、一晩では足りないほど抱き潰してしまうからもう少し待って欲しいといわれて、恥ずかしかった。
ケネスに好きな子がいると聞かされた時、ケネスがその子に思うような気持ちがシリルはケネスには無いことが分かり、愛でも恋でもないのだと分かったそうだ。
ケネスも同じで、シリルに捨てられたら行く所がないから執着していただけだったのだそうだ。
それでも竜力を使った後はケネスに処理してもらう事にモヤモヤした。
仕方のない事だが、やはり悲しかった。

それでも前よりはケネスに嫌悪感はない。
ケネスの事情を知れば納得出来るし、喧嘩しながらの性交とは?と思い、少し笑えた。
何か差し入れを渡そうかと思ったが、今2人は私に近付く事が出来ない。
だからシリルからの花は今でも続いている。

そして考えた。

学院が休日の時にせっせとクッキーを作った。
クッキーしか作れないが前はシリルもケネスも美味しいと言ってくれた。
だから2人分のクッキーをカード付きでラッピングし、休み明けの放課後の図書館でシリルとケネスを待った。
2人は私がここから見ているのは知ってるのでいつもシリルは見上げて手を振ってくれる。
でもケネスは決して顔を上げてはくれない。
私を傷付けたと必ず図書館の近くに来るとシリルから距離を取り下を向く。

窓を開けて名前を呼んだ。
「ケネス!」

驚いて顔を上げたケネスは目を大きく見開き、口をポカンと開けていた。
「差し入れ!」と言ってクッキーを窓からポーンとケネスに投げた。
オロオロしながら受け取ったケネスに、
「お疲れ様!」と言うと嬉しそうに笑って、「ありがとうございます、ブリジット様」と言った。
シリルが「俺には?」と言うので、シリルにも投げるとしっかり受け取って「ありがとう!」と言って、ケネスの背中をバンバン叩いていた。
喜んでくれたようで良かった。

ケネスの事はあんな事がある前は優しくて綺麗で大好きだった。
あの事からシリルもケネスも私の敵だと思っていろんな事を知りもせず避けていた。
シリルからの話しや王妃様から聞いたケネスの事、シリルの事を知って、ほんの少しモヤモヤしたものはあるが、ちゃんと自分の中で飲み込む事が出来た。
それにケネスは私の事を本当に心配していたのだそうだ。
初めてシリルに抱かれた日の翌日やシリルが父に殴られた日、ケネスはシリルにブチギレたのだそうだ。
そして私を傷付けてしまった、嫌われたと号泣したと聞いて驚いた。
ケネスは私が邪魔なのだと思っていたから。
だからケネスに下を向いていて欲しくなかった。

そんな事があってからストレスが軽減されたせいか勉強も体調も良く、体重も戻ったし飛び級試験も合格ラインまでなんとかいけた。
一緒に飛び級試験に挑むエリザも大丈夫そうだ。

そして試験前日。図書館に行くとカードが2枚あった。
シリルとケネスから“頑張れ!”と“絶対合格!”と書かれたカードを手にした時、窓の下に2人がいた。
窓を開けると、「リジー、明日頑張れ!」とシリル。
「ブリジット様なら大丈夫です!」とケネスに応援され、「ありがとう!」と返すと手を振って歩いて行った。

そんな応援のお陰か無事試験は合格となり、春から3年生となった。
そして陛下と王妃様から王宮に呼ばれ行くと、シリルとケネスの接近禁止を解除すると言われた。

そして正装したシリルとケネスが来た。
「お邪魔虫は退散するわ。」と王妃様がウインクして陛下と退室して行った。

シリルとケネスは私に近付き、おめでとうと言ってくれた。
シリルが私を抱きしめて、
「やっとリジーを堂々と会って抱きしめられる。」と少し声を震わせながら言った。

こうして私は3年生、シリルとケネスが2年生になった。



3年生からは通常通り他の生徒と授業を受ける事になった。
私とエリザが教室に入ると、一瞬静かになった。
まあ予想は付いていた。
おそらく1年の半分を別教室で受けてた上、飛び級したのだ、反感を持っている人も多いし、シリルやケネスの事を慕っている人達は面白くはないだろう。
だからエリザとは色々相談していた。
なので特別恐れはしない。
挨拶を誰にするでもなくすると、黒板に貼ってある席順を見て自分の席につく。
エリザは私の隣りの席だ。

するとこのクラスのリーダー格とも言える同じ侯爵家のケイトリン様が私達の前に立った。
「あなた方が飛び級合格した方達ね、シリル様に不敬な態度を取り、我儘で特別授業までして飛び級試験に合格したなんて恥ずかしくないのかしら。」と宣った。

エリザが、
「失礼ながらお名前も名乗らない貴方様が何方なのか分かりませんが、あの学院始まって以来の破廉恥事件を知らないのですか?
あの事件の一番の被害者はブリジット様です。

あの時のショックで夜も眠れず食事も喉を通らず、加害者のシリル殿下の付き纏いでさらに体調を崩したブリジット様にシリル殿下とケネス様にブリジット様の接近禁止命令が出ていたのを知らない訳ないですよね?

屋敷にも帰れず、教室にも戻れない彼女が何処で勉強出来るというのですか?
それでもきちんと登校して、皆さんのようにちゃんと授業を受ける事も出来ない彼女がたまに来てくれる先生の指導と自己学習だけであなた方と同じ学年になれるほどの勉強をした人に不敬?我儘?
これ以上文句があるのなら王族の方々、スケイル侯爵家、ガンズ侯爵家、その他高位貴族多数に喧嘩を売る事になりますよ。」
と一気に言うとケイトリン様は顔を真っ赤にしながら自分の席に戻った。

少し空気の悪い教室に突然大きな声が響いた。
「リジー!」
教室の出入り口にいたのはやっぱりシリル。
後ろにはケネスもいる。
「今日から知らない奴ばっかりの中大丈夫か?仲良い友達もエリザ嬢しかいないだろ、何かあったらすぐ俺に言えよ、ケネスもいる。
リジーに何かしようものなら俺もケネスも父上も母上も潰す勢いでやり返してやるから安心しろよ、じゃあ頑張れ!」と言いたい事だけ言って出て行った。
ケネスも「いつでも頼るんですよ、ブリジット様を泣かすような輩は私も許しませんから。」と言ってシリルの後を追って出て行った。
シーンとした教室で、エリザがプッと笑い出した。
「あの人、どんだけ空気読まないんだか。
普通は教室入った瞬間既に何かあった事に気付くんだけどね~ケネス様は気付いてたみたいだけど。
リジー、愛されてるね~」と笑うとあちこちで、「確かに」とクスクス笑っている人もいた。
なので私も、
「お騒がせして申し訳ありませんでした。同じ教室で学ばさせて頂きます、ブリジット・スケイルです。こちらはエリザベス・ガンズ侯爵令嬢です。
1年間よろしくお願いします。」と頭を下げた。
大体の人が拍手してくれたが、ケイトリン様と取り巻きの方達はツンとしていた。

こうして新学期が始まった。














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