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お前もか!

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「あ、あの、私、お手洗いに行ったら、教室の場所が分からなくなってしまって…」

気絶してるフリをしているだけだが、とりあえずコイツが消えるまでは目を開けられない。

「フランク、済まないが彼女を1年生の教室まで連れて行ってもらえるか。
クラスも分からないんだろう。クラスも確認してくれないか。」

俺の側近のウィリアムが、同じく側近のフランクに指示を出している。

「俺はもう一度医務室にライナスを連れて行く。リファラは教室に戻るといい。
俺が付いてるから。」

「でも・・・分かったわ、もしライナス様が目覚めたら、帰る前に教えて。」

ごめん、ファラ、俺はどこも悪くはないのだよ。ファラは走って教室に戻っていったようだ…一緒に行こうと思ってたのに…クソ!

「じゃあ、行こうか」
とフランクがピンク髪でピンクアイの男爵令嬢を連れて行こうとすると、

「すみません…足を挫いてしまったみたいで…」

なぬ⁉︎それでは一緒に医務室に行く事になってしまうじゃないか⁉︎

「ん…んー、あれ、俺は…」
ヤバいと思い、目を覚ました演技をした。

「ライナス、大丈夫か⁉︎今医務室に運ぼうと思っていたんだが。」
ウィリアムが俺をお姫様抱っこをしようとしていた。

「ああ、済まない…もう大丈夫だ…少し寝不足でな、ところでそちらの女子はどうかしたのか?」

ウィリアムが説明してくれたので、

「それじゃあフランク、済まないが彼女を医務室に運んであげてくれるか。
挫いていては歩けないだろう。
君、大丈夫かい、彼が連れて行ってくれるそうだ。
しかし、よく前を見ていない君も悪い。
これからは気をつけるように。
それじゃあ、私はこれで。」

俺は早口でピンクに告げると早足でその場を離れた。

「ちょっとちょっと、ライナス、歩くの早くない?」
俺の3人目の側近、ブラッドが声をかけてきた。

「とにかく一刻も早くここから離れなければならない。いいから急げ!」

「なんなの、ライナス、どうしたの?」

俺はとにかくピンクから離れたくて、教室へと急いだ。

教室に戻ると、担任は既に来ていて、クラスメイトが自己紹介をしている最中だった。
ほぼ成績順のクラス分けだが、新しくAクラスになった人も少ないがいる。
その生徒が自己紹介しているのだろう。

「申し訳ありません、中断させてしまいました。」と謝罪すると、

「ライナス君、体調はもう大丈夫かい?
無理はしないようにね。席は空いてる所にどうぞ。」

俺達は一番後ろに座った。

リファラも遅かったせいか、一番後ろではないが、後ろの方に友人達と座っていた。

「カイマン先生、フランクは新入生を医務室に連れて行っていますので、少し遅れて来ます。」

「分かりました、それでは・・・」
先生が自己紹介の続きを促した。



なかなか戻ってこないフランクが少し心配だ。
ひょっとして…フランクルートに入ったのか⁉︎
と思っているとフランクが教室に戻って来た。
先生に会釈し、俺達の並びに座った。

良かった…でも、なんだ?怒ってる?
珍しい…滅多に怒らないフランクが不機嫌そうだ。

「では、今日はこれで終わります。明日からは通常の授業になりますので、教科書など忘れないようにして下さい。
それでは、また明日。」

先生が教室を出ると、ファラが俺の所に来た。
「ライナス様、もう体調はよろしいのですか?」

「ああ、大丈夫だよ。ごめんね、心配かけてしまった。」

「今日はもうお帰りですか?生徒会の業務があるのでしたら、私もお手伝いいたしますが。」

「今日は帰るよ。ファラの予定はお休みだね。ゆっくり休んで。」

「はい。ライナス様も今日は早めに休んで下さいませ。皆様もお先に失礼致します。」

ファラ達が教室を出て行くと、不機嫌なフランクに声をかけた。

「どうした、フランク、何かあったのか?」

「さっきの女子、ライナスに運んで欲しかったみたいだぞ。
ボソボソ話してるのが聞こえた。
“どうしてライナス様じゃないの?”だとさ。」

「え⁉︎」

「結局足も挫いてなかった。お前に近付きたかったんじゃないか、最近いなかったけど新入生が入ったからな、増えるんじゃないか、こういうの。」

「“ライナス様じゃないの?”って言ったんだな?その女子は。」

「ああ、俺で悪かったなって言ってやったら、焦ってたわ。」

ハアーーーヒロインも転生パターンってやつですかーーー!

「済まなかったな、フランク。そんな輩は放っておけ。
でだ、重大な話しがある。急いで帰るぞ!」

急いで帰ろうと、馬車停に向かっている途中、パタパタと聞こえたので念の為、俺はまたウィリアムに向かって倒れた。

「ライナス!」

急いで俺を馬車に乗せ、皆んなも馬車に乗り込み、王宮へ馬車を走らせた。

俺がムクっと起きると他の3人がギョッとした。

「ライナス今日どうしたの?大丈夫?」
とブラッドが心配する。

「演技だ、心配するな。この事でお前達に話しておきたい事がある。とりあえず帰ってからだ。」


演技と言われた3人はキョトンとした顔のまま頷いた。
















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