隠していない隠し部屋

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両家緊急会議

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「お忙しい中、本日はお集まり頂き、ありがとうございます。それでは只今から緊急会議を始めます。
進行はわたくし、ジョバンニ・イザークが務めさせて頂きます。
議題は“キャルティ・カーク男爵令嬢妊娠について”です。」

「待て!どういう事だ!シルビオ、どういう事だ!」
とシルビオの父親ラエル様が怒鳴る。
すかさずジョバンニが、
「申し訳ございません、ラエル様、最後まで聞いてからにして下さいませ。
それでは、説明を。
エルザ様よろしくお願い致します。」

「それでは説明させて頂きます。
最後まで聞いてから質問を受け付けます。
これは私達夫婦では解決出来ない問題と判断致しました。

先ず私の夫、シルビオが浮気した事から始まります。
そこにおります、キャルティ・カーク男爵令嬢とシルビオは2ヶ月ほど前より肉体関係にございます。
それは私も確認致しております。
わたくしが目撃した時にはキャルティ嬢は妊娠しておりました。
さすがの私も今度ばかりは離婚しようと思いましたが、シルビオの子ではないとなり、では誰の子なのかとキャルティ嬢から聞き出しましたところ、ある高貴な方の子だという事が判明致しました。

そのお方とは、最近流行っている“真夜中の夜会”と呼ばれている夜会に参加した際での事だそうです。
それでお相手が王太子ではないかと思い当たりました。
ですが、シルビオの子ではないとも言い切れない事でもございます。
キャルティ嬢は誰にも相談できず私に頼ったのでございます。
本来ならば私など言いたくなかったであろう立場のキャルティ嬢の心情を思うと同じ女性として放って置けませんでした。
キャルティ嬢は暴かれることを危惧しておりました。命の危険もあるのではないかと。
こちらもそうと判断し、保護させて頂きました。

以上が本日集まって頂いた理由でございます。」

私からの報告を聞いて、誰も何も言わなくなってしまった。

しばらく無言が続いた後、

「エルザはどう思ってるんだい?」
とお父様が聞いてきた。

「私は…お父様も知っての通り、離婚しようと思い、サバーナに帰ったのですが、こうなってしまい、一旦ヒーナス家に戻りました。
キャルティ嬢の出産後に決めたいと思っています。」

「シルビオの子供だったならば離婚するという事でいいのかな?」

「はい。ですが、キャルティ嬢も急な事でしょうから引き継ぎはちゃんとしてから離婚しようと思っております。」

「待って待って、エルザちゃん本気?」
とシルビオのお母様のタニヤ様が叫ぶ。

「はい。おそらくシルビオの浮気は治りません。私はもう信じる事はありませんから。」

「なんて事をしたの、シルビオ!あんなにエルザちゃんの事を愛してるって言ってたのに!母として貴方を許しません!」
と泣き崩れた。
それを抱き起こしたラエル様が、

「シルビオ、お前はあんなプロポーズをしておきながら、エルザにこんな屈辱を与えてるとはどういう了見なのだ!」

「申し訳ありません・・・」

「謝って済む問題かあ!」
血管がブチ切れそうなラエル様も倒れてしまいそうで心配してしまう。

「ラエル、とりあえずシルビオの事は置いとこう。
キャルティ嬢のお腹の子が、もし王太子のお子だとしたらどうするのかを考えなければ。

その怪しげな夜会で王太子と出会ったとして、王太子だと証明はできない。
王太子の子だと訴えても、自分ではないとシラをきる可能性が高い。
しかし王太子の血をそのままにはしておかけない王家は秘密裏に子供を始末するかもしれない、それにシルビオの子の可能性もある、だから我々に相談した。
という事で良いのか、エルザ。」
とお父様。

「はい、その通りです。」

その時、

「本当に、娘がご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ございません!
こんな大それた事をした娘の責任はどんな事でもする所存でございます。
ヒーナス侯爵様方、サバーナ侯爵様方、そしてヒーナス侯爵夫人エルザ様、誠に申し訳ございませんでした。」
と椅子から降り、床に土下座したカーク男爵をお父様が椅子に座らせ、

「カーク男爵、起きてしまった事はもうどうする事も出来ない。
全ての事が終わってから改めて謝罪して頂こう。だから今はキャルティ嬢の身の安全と出産を最優先しましょう。」
男前なお父様にカーク男爵は泣きそうになっている。

「はい…ありがとうございます…後日改めさせて頂きます…」

キャルティも、
「私も…皆様にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございませんでした…。
あの日、エルザ先輩に街で会わなかったらどうなっていたか分かりません。
エルザ先輩に顔向け出来ないような事をしていた私の話しを聞いてくれて、ここまで連れてきてくれました…。

出産まではご迷惑かけてしまいますが、
今後このような事は一切致しません。
本当に申し訳ございませんでした。」
と頭を下げた。

黙っていたお母様が、
「キャルティさん、貴方がした事は妻のエルザからしたら許されざる事です。
なんだかんだ言ってシルビオ様を好いているエルザがどんな思いで我が家に帰ってきたかを想像して、反省して下さい。
既婚者に手を出す事、考え無しで情を交わす事が、どんなに危険な事なのか忘れないで下さい。

エルザが貴方を助けるのならば、出産までは私も貴方を助けましょう。」
途中余計な事を言っていたが、お母様はキャルティさんを助けると言ってくれた。

「私は・・・浮気された妻の気持ちは一番知っている身でございます。
一番悪いのは浮気した男です。
ですが、ケイト様が言ったようにエルザちゃんが貴方に手を貸すのなら私もお手伝いすると約束しましょう。」

お義母様の爆弾発言があり、一瞬お義父様の顔が固まったけど、ほぼキャルティ様の保護は確定したようだ。
それからが問題。
お父様が挙手して、
「はい、ユージン様。」とジョバンニ。

思い出したようにジョバンニが進行係に復活した。

「で、どうしようか?生まれてから王太子の子でしたと報告するか、生まれる前に王太子の子供かもしれないと報告するか。
先に報告すれば危険だよな。
だったら生まれてから報告するしかないと思うが、何か他に案はある?」

お義父様が挙手。

「シルビオの子の可能性があるなら後の方がいいだろうな。
生まれてみたら金髪、金の瞳だった、じゃ駄目なのか?さすがに赤ん坊は殺さんだろうし・・・あーキャルティ嬢が危ないのか…。」

お母様、挙手。

「誰かは言わないで、可能性のある女性が妊娠したって報告するのはどう?」

お父様、挙手。

「誰がそれを報告するかで分かるだろ。
ヒーナスかサバーナから報告したら、俺達の関係者だって先ず考える。
そしてシルビオと噂になってる女性はキャルティ嬢しかいなんだから、誰が妊娠したのか丸分かりだろ?」

「じゃあ誰がいるんだよ。」

「1人いるが、アイツは何を考えてるのかイマイチ分からないし、娘がなぁ…言っていいのかどうかなぁ・・・。
ほら、陛下の近くにいるだろ、俺達の同級生。」

「あ~、ダニーか…」

シルビオ、挙手。

「ダニー様とはだれですか?」

「ダニエル・ブレイク公爵、宰相だ。」
とお義父様。

宰相・・・機械仕掛けの悪魔の異名を持つ、ブレイク公爵。
たしか娘さんが王太子の婚約者だ。

「はい!」挙手。

「エルザ様どうぞ。」

「ブレイク公爵の娘さんは王太子殿下の婚約者です。ブレイク公爵に伝えるのは危険なのではないですか?」

お父様が手を挙げた後、
「ダニーは婚約は反対だったんだ。王太子のクリスハートは素行が悪かったからな。
もし、その夜会に行ってるのが本当なら他にもいるかもしれないぞ、隠し子。」

今度はお義父様。
「俺とユージンでダニーに相談するのもアリだと思う。
アイツを味方に出来れば怖いもんなしだろ。」

確かに。でも、
「はい!娘さんは王太子殿下の事をどう思っているんですか?」

「それはダニーが考えるだろ。」とお義父様。

こういう所はシルビオに似てる。
丸投げする気だな。

「そこは俺達で相談すれば良いだろ。
いつまでもここであーでもないこーでもないやってても終わらん。」

「では、ラエル様とユージン様がブレイク公爵に相談する、それで、みなさん宜しいでしょうか?」

ジョバンニの言葉に否の声は上がらなかったので、緊急会議は閉会した。









*明日は6時に2話投稿します。





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