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ブロッキ神国横断中
ピエリス、一人で逃走中
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――や~っぱなぁ……!
チビ達が、スキルなりアイテムなりで、身の安全を確保しつつ森を移動する方法を持ってんだろうとは思ってたんだけど……まさか、別空間に退避できるアイテムだとは思わんかった。
『聖域』つーてたから、多分、神々の手による神器っしょ?
フェリシアが魔神様の寵児だってのはわかりやすかったけど、こりゃぁ、グーちゃんをご寵愛なさってるのは、武神様で決定っ!
なんでかってゆ~と、グーちゃんって案外、自分と妹の線引きがしっかりしてんよね。『聖域』が、フェリシアちゃんに授けられたもんだったら『フェリシアの』って付くし、自分だけに授けられたもんなら『僕の』って言う。共有物だったら、頭にな~んも付けないか『僕達の』ってつけてんよ。
だから、頭にな~んも付けてなかったってことは、フェリシアちゃんだけでなくグーちゃんも同じものをもってるってワケ。
――まぁ、あのチビ達がどの神々からご寵愛を賜ってたとしても、やるこた同じなんだけど。
迷惑料として多めに払って宿を出てから通りを見回すと、すでに窓から投げた兵士の姿はなくなってる。
ちょっぴり悩んでから裏通りに入ったのは、適当な建物の屋根に上って移動するためだ。なんちゅーか、あんだけ派手に兵士を伸した俺のことを、素直に門から出してもらえるとは思えんし。
預かったペンダントは、足に巻き付けた状態でズボンを被せてブーツの下だ。
多少、激しく動いても落とすことはない。
『聖域』を出る前にフェリシアちゃんがくれたみるくけーきを口に入れ、柔らかな甘味が口の中に広がっていくのに頬を緩めつつ、ピョンっとひとっ飛びで屋根に上がると外壁へ向かって移動を始める。
こうやって、道じゃない場所をピョンピョン跳ねて移動するのは、超・久しぶりっ!
――なんか、こう――テンション上がってきちゃうっしょ!
ガキの頃に戻った感じというか、なんつーか。
ともかく、楽しい。
ただし、悲しいかな。この町は縦に長~い、宿場町。大した距離も進まぬうちに、外壁に着いちゃうんよね。
しかも、外壁だってそんなに高いもんじゃない。
体を縮めてグググと足に力を込めて、ピョーンと跳ねればかる~く上に登れてしまう。
ここに至って、やっと、逃走中の俺に気付いた連中が大声を上げるのに向かって尻を叩いて、アッカンベー。金切り声が聞こえてくるのに吹き出しつつ、町の外へと飛び出した。
外壁近くの木の枝で衝撃を和らげながら地上へ着くと、早速、スキルフィールドから相棒を出して背にまたがる。
「さ~って、どっちに向かおっか~?」
グーちゃんは『安全な場所』とは言ったケド、どっちに向かえとは言わんかったんよね。
とりあえず行くことになってた東方向に向かうのは決定事項だケド――ちょっぴり悩んで決めたのは、南南東の山脈寄り。
――垂直に近い崖がそびえる場所だそうで、あんま人が寄り付かんらしいし丁度いいっしょ。
門のある方向が騒がしくなり、騎獣達がこっちに向かう足音が近づいてくるのが聞こえてる。
「んじゃ、行くかっ!」
帽子についてる風防メガネを下ろして手綱を握ると、相棒は『待ってました』とばかりに前傾姿勢になって走り出す。
「ごあいにく様っ! お前らじゃ、追いつくなんて無理無理の無理すぎっしょ」
あっという間に小さくなってく追手の足音に、振り返りつつ舌を出す。
俺の相棒は、騎竜の中でも俊足自慢。
速さに特化してるせいで戦闘になるとダメダメだけど、この辺で良く騎獣として使われているフォレチェルごときじゃ勝負にならない。
心の中で『ごあいにく様』と嘲笑いつつ、森の中で風になる。
――大体、気に食わなすぎっしょ。
深く知る気がなかったとは言え、旅人が連れてる加護の儀前の子供を奪ってまで加護者を確保しようとするような国、さっさと滅んじまえばいい。
マジ、チビ達が他の村とかに寄らずに済んでて良かったと思うし。うっかり立ち寄りでもしていたら、そこで結局とっ捕まって逃げらんなくなるとこだったっぽいんよね。
――あとは、ここを逃げ切って山に入ればオッケーなんよね?
東に向かうことをやたらと主張していたフェリシアちゃんを思い出し、口の端を上げる。
――願わくば、キチンとそっからブロッキ神国の外に出られますようにっ!
チビ達が、スキルなりアイテムなりで、身の安全を確保しつつ森を移動する方法を持ってんだろうとは思ってたんだけど……まさか、別空間に退避できるアイテムだとは思わんかった。
『聖域』つーてたから、多分、神々の手による神器っしょ?
フェリシアが魔神様の寵児だってのはわかりやすかったけど、こりゃぁ、グーちゃんをご寵愛なさってるのは、武神様で決定っ!
なんでかってゆ~と、グーちゃんって案外、自分と妹の線引きがしっかりしてんよね。『聖域』が、フェリシアちゃんに授けられたもんだったら『フェリシアの』って付くし、自分だけに授けられたもんなら『僕の』って言う。共有物だったら、頭にな~んも付けないか『僕達の』ってつけてんよ。
だから、頭にな~んも付けてなかったってことは、フェリシアちゃんだけでなくグーちゃんも同じものをもってるってワケ。
――まぁ、あのチビ達がどの神々からご寵愛を賜ってたとしても、やるこた同じなんだけど。
迷惑料として多めに払って宿を出てから通りを見回すと、すでに窓から投げた兵士の姿はなくなってる。
ちょっぴり悩んでから裏通りに入ったのは、適当な建物の屋根に上って移動するためだ。なんちゅーか、あんだけ派手に兵士を伸した俺のことを、素直に門から出してもらえるとは思えんし。
預かったペンダントは、足に巻き付けた状態でズボンを被せてブーツの下だ。
多少、激しく動いても落とすことはない。
『聖域』を出る前にフェリシアちゃんがくれたみるくけーきを口に入れ、柔らかな甘味が口の中に広がっていくのに頬を緩めつつ、ピョンっとひとっ飛びで屋根に上がると外壁へ向かって移動を始める。
こうやって、道じゃない場所をピョンピョン跳ねて移動するのは、超・久しぶりっ!
――なんか、こう――テンション上がってきちゃうっしょ!
ガキの頃に戻った感じというか、なんつーか。
ともかく、楽しい。
ただし、悲しいかな。この町は縦に長~い、宿場町。大した距離も進まぬうちに、外壁に着いちゃうんよね。
しかも、外壁だってそんなに高いもんじゃない。
体を縮めてグググと足に力を込めて、ピョーンと跳ねればかる~く上に登れてしまう。
ここに至って、やっと、逃走中の俺に気付いた連中が大声を上げるのに向かって尻を叩いて、アッカンベー。金切り声が聞こえてくるのに吹き出しつつ、町の外へと飛び出した。
外壁近くの木の枝で衝撃を和らげながら地上へ着くと、早速、スキルフィールドから相棒を出して背にまたがる。
「さ~って、どっちに向かおっか~?」
グーちゃんは『安全な場所』とは言ったケド、どっちに向かえとは言わんかったんよね。
とりあえず行くことになってた東方向に向かうのは決定事項だケド――ちょっぴり悩んで決めたのは、南南東の山脈寄り。
――垂直に近い崖がそびえる場所だそうで、あんま人が寄り付かんらしいし丁度いいっしょ。
門のある方向が騒がしくなり、騎獣達がこっちに向かう足音が近づいてくるのが聞こえてる。
「んじゃ、行くかっ!」
帽子についてる風防メガネを下ろして手綱を握ると、相棒は『待ってました』とばかりに前傾姿勢になって走り出す。
「ごあいにく様っ! お前らじゃ、追いつくなんて無理無理の無理すぎっしょ」
あっという間に小さくなってく追手の足音に、振り返りつつ舌を出す。
俺の相棒は、騎竜の中でも俊足自慢。
速さに特化してるせいで戦闘になるとダメダメだけど、この辺で良く騎獣として使われているフォレチェルごときじゃ勝負にならない。
心の中で『ごあいにく様』と嘲笑いつつ、森の中で風になる。
――大体、気に食わなすぎっしょ。
深く知る気がなかったとは言え、旅人が連れてる加護の儀前の子供を奪ってまで加護者を確保しようとするような国、さっさと滅んじまえばいい。
マジ、チビ達が他の村とかに寄らずに済んでて良かったと思うし。うっかり立ち寄りでもしていたら、そこで結局とっ捕まって逃げらんなくなるとこだったっぽいんよね。
――あとは、ここを逃げ切って山に入ればオッケーなんよね?
東に向かうことをやたらと主張していたフェリシアちゃんを思い出し、口の端を上げる。
――願わくば、キチンとそっからブロッキ神国の外に出られますようにっ!
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