上 下
19 / 123
初めての野宿

にぃには寝不足さん

しおりを挟む
 とってもとても眠たいのに、まぶたにあたるお日さまの光が眩しくって目が覚める。
なんてこった。
まだ、全然眠いのにっ。
目元をこすりつつ、もう一眠りするために寝返りを打ったら、お布団からコロンと体が落っこちた。
寝直すどころか、すっかり目が覚めちゃうとか、踏んだり蹴ったりだっ!


「へぶしっ」


 冷たい地面に打ち付けたお尻をさすって立ち上がると、あまりの寒さにくしゃみが飛び出す。
コレはヤバい。
やっぱり、もう一度お布団に戻ろう。
上掛けの中に潜り込み、ほっと一息ついたところで視線を感じて横を向く。


「フェリシア……」

「うに」


 にぃに・・・の声の低さから寝ぼけてることは理解したけど、めっちゃ怖い。半目で睨み付けられて、怖さのあまりシッポがピュッと股の間に入ってくる。


「うるさい」

「静かにします……」

「そうして」


 そっけなく言い捨ててすぐに、にぃに・・・は寝息を立て始めた。
多分、次に起きたときに今のやり取りは覚えてない。

――寝起きのコレがなければ、最高のにぃに・・・なのになぁ……

 上掛けの頭からかぶってため息一つつくうちに、眠りに落ちる。
わたし、寝付きと寝起きの良さには定評があるのです。





 そんな朝の一幕があったものの、二度目は割と気持ちよく起きられた。


「僕ね、今、猛烈に後悔してる」


 温め直したミルクスープをすすりつつ、にぃに・・・が言う。


「ほむ?」

「巫女様たちと遭遇してもいいから、人里に向かうべきだったんじゃないかなって……」

「えええ? わたし、ヤダよ」


 巫女様は、女の子には意地悪で、無類の男好き。その夫の村長だって、同レベルの女好きだ。そんでもって、二人共、わたしたちの五年後とやらを待ちわびてた。そんな人達と再会なんてしたくない。


「でもさ、フェリシア。野宿をしてみて、どう思った?」

「夜空がピッカピカでキレイすぎる。ぶっちゃけ、最高」

「……そう」


 おんや? 昨日の夜、にぃに・・・も見とれてたよね?
ご不満そうな視線に促されて、別の感想を口に出す。


「夜ふかしさんは初めてで、ドッキドキのワックワクだったっ」


 あやや、これもお望みの返事と違うっぽい。
にぃに・・・

「……そう。不満点はなかった?」

「焚き火料理は案外難しい」

「……他は?」

「うーん……朝はすんごく寒かったかなぁ」

「そうっ! それっ!!」


 どうやらにぃに・・・は、壁や天井のない状態での寝起きがとても、とても、とても、とても、とっても、とおおおおっても、嫌だったらしい。


「だってさ、葉擦れの音は気になるし。葉っぱが何度も顔の上に落ちてきて、そのたびに飛び起きる羽目になるしっ」

「ほーほー」


 我が家も大概ボロだったけど、壁がある分だけ外の音は聞こえづらかったし、寝ている間に木の葉が顔に落ちてくるなんてことはなかったね。ただし、雨の日は別だ。雨の日は、たまーに水滴が落ちてきた。割と風通しが良すぎる家だったけど、直に風にさらされるよりは暖かく過ごせてたかも。


「むしろ、フェリシアがなんであんなに気持ちよく熟睡できてたのかが謎すぎるっ……!」


 それは多分、夜空の素晴らしさとか、今までやったことのないあれやこれやに興奮しすぎたせいじゃないかと思います。


にぃに・・・は、繊細なんだねぇ」

「フェリシアは鈍感なんだね」


 ブスッとした表情でヒドイことを言うにぃに・・・は、寝不足でご機嫌斜めなんだってことにすることに決めて、スープをジュルリ。

――移動速度と就寝環境、どっちを優先したほうがいいかなぁ……?

 もうちょい、にぃに・・・の頭がスッキリしてきたころに相談しようっと。
とりあえず、今はご飯が優先だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

私が死んだあとの世界で

もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。 初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。 だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。

私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】

小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。 他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。 それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。 友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。 レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。 そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。 レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。繁栄も滅亡も、私の導き次第で決まるようです。

木山楽斗
ファンタジー
宿屋で働くフェリナは、ある日森で卵を見つけた。 その卵からかえったのは、彼女が見たことがない生物だった。その生物は、生まれて初めて見たフェリナのことを母親だと思ったらしく、彼女にとても懐いていた。 本物の母親も見当たらず、見捨てることも忍びないことから、フェリナは謎の生物を育てることにした。 リルフと名付けられた生物と、フェリナはしばらく平和な日常を過ごしていた。 しかし、ある日彼女達の元に国王から通達があった。 なんでも、リルフは竜という生物であり、国を繁栄にも破滅にも導く特別な存在であるようだ。 竜がどちらの道を辿るかは、その母親にかかっているらしい。知らない内に、フェリナは国の運命を握っていたのだ。 ※この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「アルファポリス」にも掲載しています。 ※2021/09/03 改題しました。(旧題:刷り込みで竜の母親になった私は、国の運命を預かることになりました。)

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

ぬいぐるみばかり作っていたら実家を追い出された件〜だけど作ったぬいぐるみが意志を持ったので何も不自由してません〜

望月かれん
ファンタジー
 中流貴族シーラ・カロンは、ある日勘当された。理由はぬいぐるみ作りしかしないから。 戸惑いながらも少量の荷物と作りかけのぬいぐるみ1つを持って家を出たシーラは1番近い町を目指すが、その日のうちに辿り着けず野宿をすることに。 暇だったので、ぬいぐるみを完成させようと意気込み、ついに夜更けに完成させる。  疲れから眠りこけていると聞き慣れない低い声。 なんと、ぬいぐるみが喋っていた。 しかもぬいぐるみには帰りたい場所があるようで……。     天真爛漫娘✕ワケアリぬいぐるみのドタバタ冒険ファンタジー。  ※この作品は小説家になろう・ノベルアップ+にも掲載しています。

処理中です...