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創造主
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子猫が、ネズミの絵の付いたボールで遊んでる?
第一印象は、ソレ。
眼下に広がるのは、地球とは違う世界だ。
子猫も、ネズミの絵の付いたボールも、この世界の大地らしい。
良く見ると、子猫とボールの間には猫じゃらしっぽい細長いものが横たわっているのも見えた。
だから、『キトゥンガーデン』……『子猫の庭』なのか。
どうやらわたしは、この世界に転生する事になっているらしい。
魂の補強・増築工事はまだ終らないみたいで、わたしが大地を観察している間にも着々と色々な情報が流れ込む。
正直、体付きでここに入り込んでいたら、精神崩壊起こすんじゃないだろうか?
『そうならない様に、君が死ぬまで待っていたからね。』
へー。
成程。
ソレはまたご親切に。
『どういたしまして。』
このやたらと心地よいボーイソプラノは一体誰の声だと思いながら、心の声に反応してくれる事に気を良くする。
もしかしたら、知りたい事を教えて貰えるかもしれない。
貴方はだぁれ?
『この世界を作った存在。君の事を地球の創造主から譲り受けたヒト。
名前で呼ばれるのは照れ臭いから、創造主って呼んで貰っているよ。』
試しに訊ねてみると、優しげな口調で返答がもらえた。
割と気さくな感じ?
そして、わたしは地球の神様的な人から、こっちの神様的な人に里子に出されたらしい。
要らん、やる、欲しい、くれ、で遣り取りされたって事か。
物と一緒かと思うと、ちょっとやりきれないんですけど。
それって、アルを逃がさない為に?
『余り短時間の間に管理者が変わるのは、好ましくないからね。』
自分の感情はさておき、一番気になっている項目を訊ねると、大体想定通りの返事が返ってきた。
アルと言うのは、わたしの恋人だ。
フルネームは、アスタール・グラム。
アルと言うのは愛称で、彼はわたし以外にはその呼び方を許していないらしい。
わたしは地球に生きていて、彼はこの世界と言う世界に住人だったから、リアルで会う事は出来なかったけれど。
なんかの拍子に開いたと言う、『異世界の穴』を経由してインターネット上で知り合ったわたし達は、最初はただのメル友だったのだけど、メールの回数を重ねる毎に互いに惹かれあい、ネットゲーム内での逢瀬を重ね続けていた。
VRゲームなんてのが開発された後は、疑似的にでも触れ合う事が出来るようになって、彼はなんとか地球へ来ることが出来ないかと色々と足掻いていたらしい。
アルの世界の創造主様と言うのが、下級神の一柱だと言う彼を逃がすつもりなんかないんじゃないだろうかと、その話を聞きながら思っていたんだけれども、やっぱりその気は無かったらしい。
ちなみに管理者って言うのは、さっきから増え続けている情報を参照にしてみると、この世界のバランスを取る為に作っている存在らしい。
人間と言うのには強力過ぎ、神と呼ぶのには足りない。
そんな存在。
普通の人間からみるなら、『下級神』とか『亜神』と言うのは妥当な表現なのかも。
それぞれに得意分野があって、その分野毎に人間に使わせてもいい『理』を決める事が出来るって言うのはちょっと面白そうかも。
アルの『輝影の支配者』の分野は『光』『闇』『知識』。
最初に創られた管理者らしい。
ただし、後継者だと本人は言っていたけれど。
アルは、どうなるの?
『少しの間、眠って貰う……かな。
君が起こしてあげるまで。
王子様をお姫様のキスで目覚めさせるというのはどう?』
その問いへの答えは、少し迷いが含まれたもの。
途中から、明るい調子に変わったのはその迷いを誤魔化す為のものの様に感じた。
随分、俗っぽい?
『そうかもね。』
創造主様なんていうから、どんな人間離れした存在なのかと思ってたのに。
そう思って思わず呟くと、苦笑混じりにコメントが返ってくる。
随分と人間臭い。
そして律儀だ。
わたしは、どうなるの?
『あの子の半身として在る為に、世界の管理者として生まれ変わって貰う事になっている。』
人外転生ってやつだろうか。
それとも神様転生って言えばいいのか?
まぁ、下位神であるアルの側に居る為にはそれしか方法がないんだろうけど……。
やだって言ったら?
『自ら死を選んだ、君が?』
そんな選択肢はないくせに、そんな事を聞いたのはちょっとした意地悪心だった。
なのに、返ってきたのは意外そうな声。
自ら死を選んだりなんか、してない。
『……ああ。』
創造主様は、勝手に納得した様な声を上げた。
『君が君を殺す事にしたのか。』
第一印象は、ソレ。
眼下に広がるのは、地球とは違う世界だ。
子猫も、ネズミの絵の付いたボールも、この世界の大地らしい。
良く見ると、子猫とボールの間には猫じゃらしっぽい細長いものが横たわっているのも見えた。
だから、『キトゥンガーデン』……『子猫の庭』なのか。
どうやらわたしは、この世界に転生する事になっているらしい。
魂の補強・増築工事はまだ終らないみたいで、わたしが大地を観察している間にも着々と色々な情報が流れ込む。
正直、体付きでここに入り込んでいたら、精神崩壊起こすんじゃないだろうか?
『そうならない様に、君が死ぬまで待っていたからね。』
へー。
成程。
ソレはまたご親切に。
『どういたしまして。』
このやたらと心地よいボーイソプラノは一体誰の声だと思いながら、心の声に反応してくれる事に気を良くする。
もしかしたら、知りたい事を教えて貰えるかもしれない。
貴方はだぁれ?
『この世界を作った存在。君の事を地球の創造主から譲り受けたヒト。
名前で呼ばれるのは照れ臭いから、創造主って呼んで貰っているよ。』
試しに訊ねてみると、優しげな口調で返答がもらえた。
割と気さくな感じ?
そして、わたしは地球の神様的な人から、こっちの神様的な人に里子に出されたらしい。
要らん、やる、欲しい、くれ、で遣り取りされたって事か。
物と一緒かと思うと、ちょっとやりきれないんですけど。
それって、アルを逃がさない為に?
『余り短時間の間に管理者が変わるのは、好ましくないからね。』
自分の感情はさておき、一番気になっている項目を訊ねると、大体想定通りの返事が返ってきた。
アルと言うのは、わたしの恋人だ。
フルネームは、アスタール・グラム。
アルと言うのは愛称で、彼はわたし以外にはその呼び方を許していないらしい。
わたしは地球に生きていて、彼はこの世界と言う世界に住人だったから、リアルで会う事は出来なかったけれど。
なんかの拍子に開いたと言う、『異世界の穴』を経由してインターネット上で知り合ったわたし達は、最初はただのメル友だったのだけど、メールの回数を重ねる毎に互いに惹かれあい、ネットゲーム内での逢瀬を重ね続けていた。
VRゲームなんてのが開発された後は、疑似的にでも触れ合う事が出来るようになって、彼はなんとか地球へ来ることが出来ないかと色々と足掻いていたらしい。
アルの世界の創造主様と言うのが、下級神の一柱だと言う彼を逃がすつもりなんかないんじゃないだろうかと、その話を聞きながら思っていたんだけれども、やっぱりその気は無かったらしい。
ちなみに管理者って言うのは、さっきから増え続けている情報を参照にしてみると、この世界のバランスを取る為に作っている存在らしい。
人間と言うのには強力過ぎ、神と呼ぶのには足りない。
そんな存在。
普通の人間からみるなら、『下級神』とか『亜神』と言うのは妥当な表現なのかも。
それぞれに得意分野があって、その分野毎に人間に使わせてもいい『理』を決める事が出来るって言うのはちょっと面白そうかも。
アルの『輝影の支配者』の分野は『光』『闇』『知識』。
最初に創られた管理者らしい。
ただし、後継者だと本人は言っていたけれど。
アルは、どうなるの?
『少しの間、眠って貰う……かな。
君が起こしてあげるまで。
王子様をお姫様のキスで目覚めさせるというのはどう?』
その問いへの答えは、少し迷いが含まれたもの。
途中から、明るい調子に変わったのはその迷いを誤魔化す為のものの様に感じた。
随分、俗っぽい?
『そうかもね。』
創造主様なんていうから、どんな人間離れした存在なのかと思ってたのに。
そう思って思わず呟くと、苦笑混じりにコメントが返ってくる。
随分と人間臭い。
そして律儀だ。
わたしは、どうなるの?
『あの子の半身として在る為に、世界の管理者として生まれ変わって貰う事になっている。』
人外転生ってやつだろうか。
それとも神様転生って言えばいいのか?
まぁ、下位神であるアルの側に居る為にはそれしか方法がないんだろうけど……。
やだって言ったら?
『自ら死を選んだ、君が?』
そんな選択肢はないくせに、そんな事を聞いたのはちょっとした意地悪心だった。
なのに、返ってきたのは意外そうな声。
自ら死を選んだりなんか、してない。
『……ああ。』
創造主様は、勝手に納得した様な声を上げた。
『君が君を殺す事にしたのか。』
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