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二年目 疑惑の種

疑惑の種

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「――輝影族の少女のお兄さんがアスタールさんにそっくりだったことが気になるんです」

 それを聞いたアスタールさんの耳が、ビクンと跳ね上がる。

「リエラは、先代様――アスタールさん達のお祖父様との関係が知りたいんです」
「……好きにしたまえ」

 要望を口にすると、少しためらう気配があったもののあっさりと承諾の返事が返ってきた。
アスタールさんにとって、先代様は複雑な感情を抱いている相手だ。
その人を調べる許可が得られたことにホッとしながら、駄目で元々だという気持ちと共に問いを投げかける。

「何か、記録は残っていませんか?」

 人に聞いて回ったとしても、知りたいことが聞けるとは思えないから、できれば日記の類があるといいんだけど。

「祖父が遺したものには手を付けていないから、輝影神殿にある執務室になら何かが残っているかもしれない。好きに調べたまえ」

 ここまで話したところで、工房に辿り着いてしまった。
タイムオーバーだ。

「ありがとうございます。……人の手を借りてもいいでしょうか」
「今年の弟子は、君の手足の代わりになれるように採用した。アッシェ、ポッシェ、コンカッセ、エリザ、テミスの五人は好きに使いたまえ」

 御者台から降りるアスタールさんに最後の確認をすると、使っていい人員まで指定してくれた。
そうでなくても日々のスケジュールは一杯だから、一人で調べるのは難しいから、ちょっぴりホッとする。

「――ところで、昨日のコンちゃとアッシェの話の対応を君に任せてもいいかね?」
「ああ……。昨日の今日で、アッシェちゃんの話というのは刺激が強すぎますね。了解です」

 また、同じことが起きたら困るからね。
そこはもちろん了解です!
多分、アッシェちゃん達も理解してくれるだろう。

「助かる。それから祖父の件については、私の方から聞くまでの間に分かった事は君預かりにしておいてほしい」

 先代様のことを調べるのにあたって思った以上の人数を割り当ててくれたのは、アスタールさん自身も同じことを知りたいという気持ちがあったかららしい。

「リエラ、それは俺が片付けるから少し休んだ方がいい」

 後ろに乗っていた面々が、さっさと工房に向かうアスタールさんを追って行く中、アスラーダさんがリエラのもとにやってくる。
どうしたのかと思っていたら、彼はヤギ車の片付けを申し出てきた。

「片付けるのはすぐですから、大丈夫ですよ。お気持ちだけありがたく受け取っておきます。それよりも、アスラーダさんが行かないと他の人が詳しいことを聞けないんじゃないですか?」

 アスラーダさん自身も気になってるだろうに。
相変わらず過保護だなと思うと、苦笑を浮かぶ。
彼はその言葉に少し渋ったものの、早めに休むようにと念押しをしてからアスタールさんの後を追って行った。
さてさて。
ヤギ車を片付けたら、アッシェちゃんとコンカッセちゃんに骨の折れそうな仕事をお願いしなくちゃいけない。
あと、一頑張りしよう。



 アッシェちゃん達との話は、思いのほかあっさりと済んだ。
やり取りは割愛するけれど、ありがたいことにアッシェちゃん自身が先代様について調べたいと思っていたから、利害が一致したって言った方がいいのかな。
り――私の目的と、アッシェちゃんの目的は微妙に食い違ってはいるけれど、多分、きっと? 大丈夫だと思……いたい。
ちょっと、返事が軽くて不安なんだよなぁ……
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