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二年目 リエラの後輩たち
苦手な人
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「君らが仲良しなのは良く分かったから、そろそろ、僕の紹介をしてくれるかな?」
アスラーダさんとスフェーンさんの掛け合いを楽しんでいたところに、不意に、そんな言葉が投げかけられた。
声の主は、私達が部屋に入った途端に何故か固まってた男の子……じゃなくて小人族の男性。
小人族って、大人になっても声変りがないから、彼の声は綺麗なボーイソプラノだ。
顔だけじゃなくて声まで可愛いとか、なんて羨ましい。
まぁ、この辺は持って生まれたものだからどうしようもないんだけどね。
だって、不機嫌そうに目を眇めた姿ですらも物凄く可愛いんだから、リエラなんかと比べちゃいけない。
「あ……。」
異口同音に、我に返ったアスラーダさんとスフェーンさんは、気まずそうに彼に向かって頭を下げる。
「申し訳ございません、失念しておりました。」
謝る言葉まで一言一句たがわずハマってるなんて、どんだけ仲が良いんですか。
謝られた当の本人はというと、軽く肩を竦めてそれを受け入れると、今度は片眉を上げて続きを求めた。
「で?」
「リエラ、彼はラエル師。
魔力操作指導の第一人者としても名高い方だ。
グラムナードで育った人間は、魔法を使うのが当たり前の環境で育ってきてるから基本を教えるのは不得手だ。
だから今回彼には、新しく入る予定の弟子たちに魔法の手ほどきをして貰う為にきてもらった。」
言われてみれば、魔力操作の方法って物凄くアバウトな方法しか教わってないかもしれない。
ほぼ独学だろうって言われたら、否定できない感じだ。
確か、魔力視についてはなんか聞いたかもしれないけど、それ以上は『見て覚えてね(はぁと)』だったかも。
そんな覚え方をしたリエラが年末にちょっと教えただけで、たとえ簡単なモノであっても魔法を使えるようになっちゃってたシスター達って、もしかして物凄い才能があったんじゃなだろうか……。
もっと若いころに教わる機会があったら、シスターなんてやってなかったかもしれないなぁ……。
「ラエルです。
もう君は魔法を使えるようだから、僕が教えるような事はないかもしれないけど、よろしく。」
「いいえ。
リエラも、誰かに教える機会がこれから出てくるかもしれないので、色々と学ばせていただけると嬉しいです。」
すぐにじゃなくても、リエラが誰かに教えなきゃいけなくなる事がないとは言えないのは事実だ。
というか、次の里帰り――多分また年末――には教えてあげる約束もある事だし。
その時の為にも、是非とも色々コツなんかを教えて貰わないと――と、意気込んで頭を下げる。
「へぇ。
勉強熱心なんだね。」
ラエルさんは面白がっている様な、馬鹿にしてるようなそんな調子で片眉を上げる。
「でも、誰かにモノを教えようと言うのなら、まずは一人称で自分の名前を口にするのは止めた方が良い。
――子供っぽすぎて、誰もそんな甘ったれた人間にモノを教わりたいなんて思わないだろうから。」
「う……!」
なんというか、痛いところを突かれた感じ。
言ってることは、多分、正論なんだろう。
スフェーンさんは口に出さないまでも、『言っちゃった』と言いたげな顔で天井を見上げてるし、アスラーダさんはアスラーダさんで、ちょっと苦い顔をしてる。
「アスラーダ、君も君だよ。」
ラエルさんのその言葉に、アスラーダさんが驚いた表情を浮かべる。
「グラムナードでは、錬金術師は特別な存在なのだと聞いてるよ。
見習いとは言え、そんな特別な立場にある人間に自覚を持つように促さないでどうするんだい?」
「それは……」
「君は、それをできる立ち位置なんじゃないのかな?
甘やかすだけでは人は育たないという事は、知っているはずだよ。」
私に向かって言ってた時と、アスラーダさんに対する言い方は明らかに違って、まるで声に刃がついてるみたいに口調が鋭い。
アスラーダさんもタジタジだ。
途中で、何か言いたげに口を開こうとしたけれど、最終的には神妙な顔をして頷く。
――うう……。
リエラのせいで、アスラーダさんごめんなさい……。
アスラーダさんに申し訳なさ過ぎて項垂れるリエラにチラリと視線を向けると、ラエルさんはため息交じりにこの話を終わらせた。
「癖になっていると思うから、すぐに直せとは言わないし、無理をする必要もないよ。
ただ、少しづつでも気を付けて行きなさい。」
「はい……。
がんばります。」
そうは言ったものの、リエラの心の中にはしっかりとラエルさんへの苦手意識が刻み付けられた。
可愛いにゃんこは、怒ると物凄く怖い。
アスラーダさんとスフェーンさんの掛け合いを楽しんでいたところに、不意に、そんな言葉が投げかけられた。
声の主は、私達が部屋に入った途端に何故か固まってた男の子……じゃなくて小人族の男性。
小人族って、大人になっても声変りがないから、彼の声は綺麗なボーイソプラノだ。
顔だけじゃなくて声まで可愛いとか、なんて羨ましい。
まぁ、この辺は持って生まれたものだからどうしようもないんだけどね。
だって、不機嫌そうに目を眇めた姿ですらも物凄く可愛いんだから、リエラなんかと比べちゃいけない。
「あ……。」
異口同音に、我に返ったアスラーダさんとスフェーンさんは、気まずそうに彼に向かって頭を下げる。
「申し訳ございません、失念しておりました。」
謝る言葉まで一言一句たがわずハマってるなんて、どんだけ仲が良いんですか。
謝られた当の本人はというと、軽く肩を竦めてそれを受け入れると、今度は片眉を上げて続きを求めた。
「で?」
「リエラ、彼はラエル師。
魔力操作指導の第一人者としても名高い方だ。
グラムナードで育った人間は、魔法を使うのが当たり前の環境で育ってきてるから基本を教えるのは不得手だ。
だから今回彼には、新しく入る予定の弟子たちに魔法の手ほどきをして貰う為にきてもらった。」
言われてみれば、魔力操作の方法って物凄くアバウトな方法しか教わってないかもしれない。
ほぼ独学だろうって言われたら、否定できない感じだ。
確か、魔力視についてはなんか聞いたかもしれないけど、それ以上は『見て覚えてね(はぁと)』だったかも。
そんな覚え方をしたリエラが年末にちょっと教えただけで、たとえ簡単なモノであっても魔法を使えるようになっちゃってたシスター達って、もしかして物凄い才能があったんじゃなだろうか……。
もっと若いころに教わる機会があったら、シスターなんてやってなかったかもしれないなぁ……。
「ラエルです。
もう君は魔法を使えるようだから、僕が教えるような事はないかもしれないけど、よろしく。」
「いいえ。
リエラも、誰かに教える機会がこれから出てくるかもしれないので、色々と学ばせていただけると嬉しいです。」
すぐにじゃなくても、リエラが誰かに教えなきゃいけなくなる事がないとは言えないのは事実だ。
というか、次の里帰り――多分また年末――には教えてあげる約束もある事だし。
その時の為にも、是非とも色々コツなんかを教えて貰わないと――と、意気込んで頭を下げる。
「へぇ。
勉強熱心なんだね。」
ラエルさんは面白がっている様な、馬鹿にしてるようなそんな調子で片眉を上げる。
「でも、誰かにモノを教えようと言うのなら、まずは一人称で自分の名前を口にするのは止めた方が良い。
――子供っぽすぎて、誰もそんな甘ったれた人間にモノを教わりたいなんて思わないだろうから。」
「う……!」
なんというか、痛いところを突かれた感じ。
言ってることは、多分、正論なんだろう。
スフェーンさんは口に出さないまでも、『言っちゃった』と言いたげな顔で天井を見上げてるし、アスラーダさんはアスラーダさんで、ちょっと苦い顔をしてる。
「アスラーダ、君も君だよ。」
ラエルさんのその言葉に、アスラーダさんが驚いた表情を浮かべる。
「グラムナードでは、錬金術師は特別な存在なのだと聞いてるよ。
見習いとは言え、そんな特別な立場にある人間に自覚を持つように促さないでどうするんだい?」
「それは……」
「君は、それをできる立ち位置なんじゃないのかな?
甘やかすだけでは人は育たないという事は、知っているはずだよ。」
私に向かって言ってた時と、アスラーダさんに対する言い方は明らかに違って、まるで声に刃がついてるみたいに口調が鋭い。
アスラーダさんもタジタジだ。
途中で、何か言いたげに口を開こうとしたけれど、最終的には神妙な顔をして頷く。
――うう……。
リエラのせいで、アスラーダさんごめんなさい……。
アスラーダさんに申し訳なさ過ぎて項垂れるリエラにチラリと視線を向けると、ラエルさんはため息交じりにこの話を終わらせた。
「癖になっていると思うから、すぐに直せとは言わないし、無理をする必要もないよ。
ただ、少しづつでも気を付けて行きなさい。」
「はい……。
がんばります。」
そうは言ったものの、リエラの心の中にはしっかりとラエルさんへの苦手意識が刻み付けられた。
可愛いにゃんこは、怒ると物凄く怖い。
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