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二年目 フレトゥムールの昔話
王都からのお客さん
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アッシェがやってきて半年ほど。
丁度、冬の満月が始まった位の時期に王都からお客様がやってきた。
恰幅が良いおじさんとおばさんで、シスター達曰く『お偉いさん』なんだそうだ。
ちなみに、今回の場合の『恰幅が良い』は、ゲフンゲフンって方向の意味合い。
お客さんが来ている間、私達はそれぞれの部屋でお勉強タイム。
――そんなこと言っても、きちんと勉強してる子なんてほとんどいないけど。
ウチの部屋に居る男の子たちなんか、ずーっとお客さんの事を気にして外を見てばっかりだし。
「それにしてもさ、なにしにきたんだろ?」
「アレだ、視察ってヤツ??」
「王都からワザワザ~?」
「今まで来た事なかったよなぁ。」
「それよりも、養子縁組とかじゃないのか?」
「えー!
だとしたら、誰だろ。」
「あんなでっかい馬車に乗ってくるようなお客さんの養子になったら、きっと旨いもの食い放題だろうなぁ……。」
――それよりも、年末の忙しくなる時期にやって来るなんて物凄い物好き。
孤児院の前に停められたお高そうな馬車を窺いつつ、ぼそぼそと意見を交わす男の子たちの間からチラリとそちらを見ると、私はすぐに興味をなくした。
視察にしろ養子縁組希望にしろ、私には関係ない。
この国では、学校に入学した孤児は養子縁組できないから。
視察だったなら、シスター達や院長様のお仕事だろうからもっと関係ないし。
それよりも目下の問題は、私に任されたアッシェの喋り言葉の矯正。
なんか、語尾を変な風に覚えちゃったみたいだから、どうにか直したい。
――なんとなく、ワザとやってるような気がするから直せる自信がないんだけど……。
「みんな、なんであんなに騒いでるです??」
「んー……。」
ソワソワした様子で馬車を覗き見てる男子達を見て、アッシェは不思議そうに私に尋ねる。
まぁ、気になるのは仕方ない。
仕方ないんだけど……どう説明すればいい?
自分に関係ないと分かっていても、気になって見ちゃってるだけだもん。
「……ナルホドです。」
「?」
「いわゆる野次馬なのです?」
「ああ、そう、それ。」
アッシェは変な子で、たまに、今みたいに私の考えを先読みしたかのような発言をする事がある。
勘が良いのかな……。
私はちょっと鈍いとこがあるから、そういう勘の良さは正直羨ましい。
それに、アッシェはすごく物覚えが良くて、教えた事をすぐに覚えてくれるから頭も良いんだと思う。
「……そんな事ないですー。」
「なにが?」
「ほめてくれたです。」
「……口に出してた?」
「ですー。」
――おかしいなぁ。
頭の中で考えてただけのつもりだったんだけど。
まぁいいか、と一人納得してお勉強に思考を戻す。
アッシェは、記憶を失う前にある程度の教育を受けていたらしくて、計算なんかは問題なくできる。
ただ、文字の読み書きと歴史や地理は全滅だ。
それでもこの半年で、文字の読み書きをマスターしたんだから大したものなんじゃないかな。
孤児院を出なきゃいけなくなる来年末までに、どこまで歴史と地理を習得できるかってところだけど……なんか、その頃には下手な同級生よりも物知りになってそうかも。
むしろ、私が追い抜かされない様にしなくっちゃ。
先生が生徒よりモノを知らないんじゃ恥ずかしいし。
「あ――。」
「出てきた出てきた。」
「帰るのかな?」
暫く歴史についての話をしていたら、男の子達が窓を大きく開いて身を乗り出し始めた。
もうすぐ春が近いとはいえ、まだまだ寒い。
物凄く迷惑だ。
やめてほしい。
寒いのは苦手なのに……。
とはいえ、盛り上がってる男の子たちに文句も言い辛くて膝にかけていた毛布を体に巻き付ける。
――ちょっぴり、ぬっくい。
「もー。
みんな、寒いから窓はしめてほしいです~!」
それを見かねたのか、アッシェが笑いを含んだ声で男の子達に注意してくれた。
男の子達はちょっと文句を言いながらも、窓の前から逃げ出していく。
お客さんが帰って行ったから、もう部屋の外に出ても大丈夫になったし、庭で遊ぶつもりなんだろう。
寒いのに……。
なんで風邪をひかないのか、物凄く不思議。
逃げ出した男の子達を見送ったアッシェが窓を閉めかけて、一瞬動きを止める。
「――閉めない?」
「……ああ、ごめんなさいです。」
早く閉めてほしいなと思いながら声を掛けると、彼女は一瞬、間を開けてから窓を閉めてくれた。
「コンちゃん、ちょっと姫はシスターに話さないといけない事が出来たのです。
お勉強はまたあとでです。」
「え?」
そうして出て行くアッシェの顔がこわばっていたのを、その時の私は気づかなかった。
丁度、冬の満月が始まった位の時期に王都からお客様がやってきた。
恰幅が良いおじさんとおばさんで、シスター達曰く『お偉いさん』なんだそうだ。
ちなみに、今回の場合の『恰幅が良い』は、ゲフンゲフンって方向の意味合い。
お客さんが来ている間、私達はそれぞれの部屋でお勉強タイム。
――そんなこと言っても、きちんと勉強してる子なんてほとんどいないけど。
ウチの部屋に居る男の子たちなんか、ずーっとお客さんの事を気にして外を見てばっかりだし。
「それにしてもさ、なにしにきたんだろ?」
「アレだ、視察ってヤツ??」
「王都からワザワザ~?」
「今まで来た事なかったよなぁ。」
「それよりも、養子縁組とかじゃないのか?」
「えー!
だとしたら、誰だろ。」
「あんなでっかい馬車に乗ってくるようなお客さんの養子になったら、きっと旨いもの食い放題だろうなぁ……。」
――それよりも、年末の忙しくなる時期にやって来るなんて物凄い物好き。
孤児院の前に停められたお高そうな馬車を窺いつつ、ぼそぼそと意見を交わす男の子たちの間からチラリとそちらを見ると、私はすぐに興味をなくした。
視察にしろ養子縁組希望にしろ、私には関係ない。
この国では、学校に入学した孤児は養子縁組できないから。
視察だったなら、シスター達や院長様のお仕事だろうからもっと関係ないし。
それよりも目下の問題は、私に任されたアッシェの喋り言葉の矯正。
なんか、語尾を変な風に覚えちゃったみたいだから、どうにか直したい。
――なんとなく、ワザとやってるような気がするから直せる自信がないんだけど……。
「みんな、なんであんなに騒いでるです??」
「んー……。」
ソワソワした様子で馬車を覗き見てる男子達を見て、アッシェは不思議そうに私に尋ねる。
まぁ、気になるのは仕方ない。
仕方ないんだけど……どう説明すればいい?
自分に関係ないと分かっていても、気になって見ちゃってるだけだもん。
「……ナルホドです。」
「?」
「いわゆる野次馬なのです?」
「ああ、そう、それ。」
アッシェは変な子で、たまに、今みたいに私の考えを先読みしたかのような発言をする事がある。
勘が良いのかな……。
私はちょっと鈍いとこがあるから、そういう勘の良さは正直羨ましい。
それに、アッシェはすごく物覚えが良くて、教えた事をすぐに覚えてくれるから頭も良いんだと思う。
「……そんな事ないですー。」
「なにが?」
「ほめてくれたです。」
「……口に出してた?」
「ですー。」
――おかしいなぁ。
頭の中で考えてただけのつもりだったんだけど。
まぁいいか、と一人納得してお勉強に思考を戻す。
アッシェは、記憶を失う前にある程度の教育を受けていたらしくて、計算なんかは問題なくできる。
ただ、文字の読み書きと歴史や地理は全滅だ。
それでもこの半年で、文字の読み書きをマスターしたんだから大したものなんじゃないかな。
孤児院を出なきゃいけなくなる来年末までに、どこまで歴史と地理を習得できるかってところだけど……なんか、その頃には下手な同級生よりも物知りになってそうかも。
むしろ、私が追い抜かされない様にしなくっちゃ。
先生が生徒よりモノを知らないんじゃ恥ずかしいし。
「あ――。」
「出てきた出てきた。」
「帰るのかな?」
暫く歴史についての話をしていたら、男の子達が窓を大きく開いて身を乗り出し始めた。
もうすぐ春が近いとはいえ、まだまだ寒い。
物凄く迷惑だ。
やめてほしい。
寒いのは苦手なのに……。
とはいえ、盛り上がってる男の子たちに文句も言い辛くて膝にかけていた毛布を体に巻き付ける。
――ちょっぴり、ぬっくい。
「もー。
みんな、寒いから窓はしめてほしいです~!」
それを見かねたのか、アッシェが笑いを含んだ声で男の子達に注意してくれた。
男の子達はちょっと文句を言いながらも、窓の前から逃げ出していく。
お客さんが帰って行ったから、もう部屋の外に出ても大丈夫になったし、庭で遊ぶつもりなんだろう。
寒いのに……。
なんで風邪をひかないのか、物凄く不思議。
逃げ出した男の子達を見送ったアッシェが窓を閉めかけて、一瞬動きを止める。
「――閉めない?」
「……ああ、ごめんなさいです。」
早く閉めてほしいなと思いながら声を掛けると、彼女は一瞬、間を開けてから窓を閉めてくれた。
「コンちゃん、ちょっと姫はシスターに話さないといけない事が出来たのです。
お勉強はまたあとでです。」
「え?」
そうして出て行くアッシェの顔がこわばっていたのを、その時の私は気づかなかった。
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