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拠点探し
4日目 アエトゥス村 2
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アエトゥス村は、それぞれの住居の周りにだけ石を積み上げた塀で囲まれていた。
王都に近いお陰もあってか、危険な生物や盗賊などを警戒する必要があまりないのか、村を囲う壁がなくって、それがなんだか不思議な感じがした。
がっちりと街の周りを囲う石壁があるエルドランで育った身としては、なんだか不用心な感じがして落ち着かない。
中に入ると、馬から降りて手綱を引いて宿を探す。
道は『村』と言う名前からは想定しないほど綺麗に整えられていて、軽い驚きを感じた。
剥き出しの土の道ではなく、きちんとした石畳なんだよね。
道中に通ってきた、『町』と名のつくところでも、ここまできちんと整えられたところは無かった気がする。
「家ごとに門扉はあるけど、なんか不用心な感じがするです―。」
「ん…。少し落ち着かない。」
「ああ…。二人も同じ意見かぁ…。」
周りを見回しながらこっそりと囁くアッシェとコンカッセの言葉に、内心ほっとする。
「今日は、ここで泊まるんだろう?先に宿をとっておこう。」
「そうですね。」
第一印象だけで決める訳にもいかないから、きちんとした調査はしないといけない。
「村としては、随分大きい。」
「確かにな。200軒位はありそうだ。」
真っ白に塗られた石造りの家は、アスラーダさんの言う通り思いのほか数が多い。
家を建て増して行く時にも、随分と計画的に建てたらしく景観が凄く綺麗で町中を歩くだけでも女の子が喜びそうだなと頭の片隅で思う。
「海からの風が寒すぎですぅ…。」
「町並みは綺麗だけど、色が寒い。」
…うちの工房の女子にはあんまり好評じゃないみたいだ。
通りすがりの人に宿の場所を訊ねると、商人用のすこしお高めな宿と探索者用の安めの宿が1件ずつあると教えてくれた。
「アッシェは、商人用のお宿がいいのですー!」
「右に同じ。」
「どっちでも。」
「うーん…。」
ここは、予算の問題があるから安い方にしておきたい気持ちがある。
かといって、二人が希望してる方に泊まらせてあげたいと言うのも正直な気持ちだ。
どっちを採るか悩んでいると、アスラーダさんから助け船が出た。
「安い方を見て、どうしてもダメだったら差額は個人負担で。と言うのはどうだ?」
「了解ですー」
「問題ない。」
「それじゃ、探索者用の宿に行ってみよう。」
二人の返事にホッとしながら教えて貰った道を進んで行き、探索者用の宿だと言う『渡り鳥亭』に辿り着いた。
この建物も例に漏れず石積みの上から白い塗料を塗りたくったモノで、窓や扉を濃いめの青で塗ってその白さを引き立てている。青く塗られた木製の窓には、飾りと採光を兼ねたガラス瓶の底が嵌め込まれていて、それがまた、建物に彩りを与えている。
取り敢えず、今まで見た中で特別この建物が痛んでいるようにも見えないから、安い理由はさっぱり分からない。建物がオンボロだったりするのかと思っていたらしい二人も、顔を見合わせている。
まずは部屋を見せて貰えないかと交渉をしに、アスラーダさんが先に立って中に入って行った。
「部屋を見るのは問題ないそうだ。誰が確認する?」
「確認は私。」
ほどなくして戻って来た彼は、コンカッセだけを連れて再度宿に戻って行った。
リエラは、アッシェと二人で馬の手綱をもってお留守番。
魔法で自分の周りの空気を少し暖めているとはいえ、海から上がってくる風に吹かれていると結構冷える。暖めたそばから、その空気を移動されちゃうんだから当然と言えば当然だ。
「まだかなぁ…。」
「寒いですぅー」
思わず呟いたところで、アスラーダさんが宿の人間らしい丸耳族の少年を連れて戻ってきた。
「コンカッセが問題ないと言ってる。」
「なら、安心ですー。」
「馬をお預かりします。」
「あ、お願いします。」
「一緒に馬を落ち着かせてくるから、先に中に入っててくれ。」
彼の言葉に頷きつつ、アッシェは2頭の手綱を宿の少年に預けた。
リエラの手から手綱をとって少年の後について行く彼を見送りつつ、二人で宿の中に足を踏み入れる。
「いらっしゃい。外は風が強いから冷えただろう。」
背後で扉が閉じ、風の圧力が無くなった事によって、なんだか体が軽くなったような気がした。
結構、風に吹かれるのも体が緊張するものなんだと、中に入った途端に体の力が抜けた事によって実感する。入り口を入ったところのカウンターからおばちゃんが出て来て出迎えてくれた。
「随分と風が強いんですね。いつもこんななんですか?」
「海に面してるし、うちは前の家の階層が低いから余計だね。」
言われてみれば、確かに道からすっきりと海を見通せたのを思い出す。
正面の建物はその向こうの建物よりも背が低くて、日当たりが悪そうだなって思ったんだよね。
風の強さって、ああいう配置によっても変わるモノなのかと感心する。
ところで、食堂も兼ねているらしい1階が随分静かだなと思っていたら、おばちゃんが視線から理由を察して説明してくれた。
「そういえば、お昼まだなんだよね?」
「そうなのですー。お腹ぺこぺこですー。」
「悪いね、うちは朝と夜しか出してないんだよ。」
おばちゃん…おかみさんかな?の言葉に、しょんぼりと眉尻を下げるアッシェにおかみさんは申し訳なさそうにしながら、お薦めのお店を教えてくれた。
「夜は、たっぷり海鮮料理でおもてなしするからね!楽しみにしておいておくれ。」
「はいですー。」
「楽しみにしてます。」
アスラーダさんが馬を置いて戻ってくると、一旦、コンカッセが先に行ってしまっている部屋に荷物を置いてから昼食を求めて外に出る事にした。
王都に近いお陰もあってか、危険な生物や盗賊などを警戒する必要があまりないのか、村を囲う壁がなくって、それがなんだか不思議な感じがした。
がっちりと街の周りを囲う石壁があるエルドランで育った身としては、なんだか不用心な感じがして落ち着かない。
中に入ると、馬から降りて手綱を引いて宿を探す。
道は『村』と言う名前からは想定しないほど綺麗に整えられていて、軽い驚きを感じた。
剥き出しの土の道ではなく、きちんとした石畳なんだよね。
道中に通ってきた、『町』と名のつくところでも、ここまできちんと整えられたところは無かった気がする。
「家ごとに門扉はあるけど、なんか不用心な感じがするです―。」
「ん…。少し落ち着かない。」
「ああ…。二人も同じ意見かぁ…。」
周りを見回しながらこっそりと囁くアッシェとコンカッセの言葉に、内心ほっとする。
「今日は、ここで泊まるんだろう?先に宿をとっておこう。」
「そうですね。」
第一印象だけで決める訳にもいかないから、きちんとした調査はしないといけない。
「村としては、随分大きい。」
「確かにな。200軒位はありそうだ。」
真っ白に塗られた石造りの家は、アスラーダさんの言う通り思いのほか数が多い。
家を建て増して行く時にも、随分と計画的に建てたらしく景観が凄く綺麗で町中を歩くだけでも女の子が喜びそうだなと頭の片隅で思う。
「海からの風が寒すぎですぅ…。」
「町並みは綺麗だけど、色が寒い。」
…うちの工房の女子にはあんまり好評じゃないみたいだ。
通りすがりの人に宿の場所を訊ねると、商人用のすこしお高めな宿と探索者用の安めの宿が1件ずつあると教えてくれた。
「アッシェは、商人用のお宿がいいのですー!」
「右に同じ。」
「どっちでも。」
「うーん…。」
ここは、予算の問題があるから安い方にしておきたい気持ちがある。
かといって、二人が希望してる方に泊まらせてあげたいと言うのも正直な気持ちだ。
どっちを採るか悩んでいると、アスラーダさんから助け船が出た。
「安い方を見て、どうしてもダメだったら差額は個人負担で。と言うのはどうだ?」
「了解ですー」
「問題ない。」
「それじゃ、探索者用の宿に行ってみよう。」
二人の返事にホッとしながら教えて貰った道を進んで行き、探索者用の宿だと言う『渡り鳥亭』に辿り着いた。
この建物も例に漏れず石積みの上から白い塗料を塗りたくったモノで、窓や扉を濃いめの青で塗ってその白さを引き立てている。青く塗られた木製の窓には、飾りと採光を兼ねたガラス瓶の底が嵌め込まれていて、それがまた、建物に彩りを与えている。
取り敢えず、今まで見た中で特別この建物が痛んでいるようにも見えないから、安い理由はさっぱり分からない。建物がオンボロだったりするのかと思っていたらしい二人も、顔を見合わせている。
まずは部屋を見せて貰えないかと交渉をしに、アスラーダさんが先に立って中に入って行った。
「部屋を見るのは問題ないそうだ。誰が確認する?」
「確認は私。」
ほどなくして戻って来た彼は、コンカッセだけを連れて再度宿に戻って行った。
リエラは、アッシェと二人で馬の手綱をもってお留守番。
魔法で自分の周りの空気を少し暖めているとはいえ、海から上がってくる風に吹かれていると結構冷える。暖めたそばから、その空気を移動されちゃうんだから当然と言えば当然だ。
「まだかなぁ…。」
「寒いですぅー」
思わず呟いたところで、アスラーダさんが宿の人間らしい丸耳族の少年を連れて戻ってきた。
「コンカッセが問題ないと言ってる。」
「なら、安心ですー。」
「馬をお預かりします。」
「あ、お願いします。」
「一緒に馬を落ち着かせてくるから、先に中に入っててくれ。」
彼の言葉に頷きつつ、アッシェは2頭の手綱を宿の少年に預けた。
リエラの手から手綱をとって少年の後について行く彼を見送りつつ、二人で宿の中に足を踏み入れる。
「いらっしゃい。外は風が強いから冷えただろう。」
背後で扉が閉じ、風の圧力が無くなった事によって、なんだか体が軽くなったような気がした。
結構、風に吹かれるのも体が緊張するものなんだと、中に入った途端に体の力が抜けた事によって実感する。入り口を入ったところのカウンターからおばちゃんが出て来て出迎えてくれた。
「随分と風が強いんですね。いつもこんななんですか?」
「海に面してるし、うちは前の家の階層が低いから余計だね。」
言われてみれば、確かに道からすっきりと海を見通せたのを思い出す。
正面の建物はその向こうの建物よりも背が低くて、日当たりが悪そうだなって思ったんだよね。
風の強さって、ああいう配置によっても変わるモノなのかと感心する。
ところで、食堂も兼ねているらしい1階が随分静かだなと思っていたら、おばちゃんが視線から理由を察して説明してくれた。
「そういえば、お昼まだなんだよね?」
「そうなのですー。お腹ぺこぺこですー。」
「悪いね、うちは朝と夜しか出してないんだよ。」
おばちゃん…おかみさんかな?の言葉に、しょんぼりと眉尻を下げるアッシェにおかみさんは申し訳なさそうにしながら、お薦めのお店を教えてくれた。
「夜は、たっぷり海鮮料理でおもてなしするからね!楽しみにしておいておくれ。」
「はいですー。」
「楽しみにしてます。」
アスラーダさんが馬を置いて戻ってくると、一旦、コンカッセが先に行ってしまっている部屋に荷物を置いてから昼食を求めて外に出る事にした。
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