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エピローグ
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リリンちゃんが死んだ。
エスカレーターの事故で、混雑する様な時間帯でも無かったせいもあってか、犠牲者は彼女だけだ。
息子と姪の2人からその話は聞いていたものの、やっぱり若い友人の命が失われたと言うのが堪える。
「リリンちゃん、28歳かぁ……。」
「あのゲームを始めて4年も経つんだわなぁ。」
妻と2人、リビングでしんみりとお茶を啜る。
息子もいるけど、彼は僕等と違って通常モードだ。
彼女の事は同じ位に知っていると言うのに。
「アスタール君、どうしてるかしらね。」
リリンちゃんにメロメロで、常に彼女のことばかりを考えていた年の割に幼く見える青年の事を考えると胸が痛む。
事故があった日からセカンドワールドに現れる事のない彼も、やはり彼女が亡くなった事を知っているのだろうか?
「異世界ゆー場所から来る理由、なくなったわなぁ……。」
「来たら、滅茶苦茶可愛がる予定だったのに。」
「僕も。」
2人でため息を吐きつつ肩を落とす。
息子柴に、お兄ちゃんが出来ると思ってたんだけどなぁ。
「父さんも母さんも、いつまでもそんな事言っても始まりませんよ。」
「柴ちゃん、冷たいわぁ……。」
「僕の息子なのに、冷たいわぁ。」
「事故の直前に、お会いしましたから。」
なんでも、息子が言うには事故が起こる直前にリリンちゃんとアスタール君に会ったらしい。
僕等のとこには来なかったのに。
「柴ちゃんだけずるいわぁ。」
「待ち合わせしてましたから。」
「僕も行けば良かった……。」
後悔先に立たずってヤツなのは知ってるけど、言わずにはいられんかった。
「住所でも教えておけばよかったんですよ。」
「でも、ゲーム内でそんなんできんやん。」
「どうせ、彼女の住所は知ってたんでしょう?」
息子の決めつけに思わず黙り込む。
知ってた。
確かに。
「突然訊ねて行ったら、不審人物だわ。」
「オフ会って事にして呼びだせば良かったんですよ。」
「何でソレ、もっと前に言ってくれないの?!」
「やらない事に意味があるのかと思ってたんですけど、思いつきもしなかったんですか。」
「そんな案、あったら教えて欲しかったわ……。」
「もう、後の祭りだけど。」
妻の言葉に、改めて深いため息が出る。
「アスタール君に会うのも目的の一つだったから、私は暫くあのゲームはお休みしようかしら。」
「僕達も少し、学業の方に本腰入れるので少し控えます。」
「学業なのか、恋愛なのか微妙なラインね。」
「なんだ、柴君は恋人できたのか。」
「その内ご紹介できるかと。」
「そかそか。」
そういえば、息子も成人したんだなぁと思い出す。
「僕は……アスタール君が入ってきた時に誰も居なかったら寂しい思いするだろうから、続けるわ。」
あの、海辺の家だけはなんとか維持しておいてやりたいと、そう思う。
あそこには、あの2人の甘い記憶が沢山詰まっている様な気がするから。
きっと、サービス終了するまで、僕はあの家を守っていくと思う。
エスカレーターの事故で、混雑する様な時間帯でも無かったせいもあってか、犠牲者は彼女だけだ。
息子と姪の2人からその話は聞いていたものの、やっぱり若い友人の命が失われたと言うのが堪える。
「リリンちゃん、28歳かぁ……。」
「あのゲームを始めて4年も経つんだわなぁ。」
妻と2人、リビングでしんみりとお茶を啜る。
息子もいるけど、彼は僕等と違って通常モードだ。
彼女の事は同じ位に知っていると言うのに。
「アスタール君、どうしてるかしらね。」
リリンちゃんにメロメロで、常に彼女のことばかりを考えていた年の割に幼く見える青年の事を考えると胸が痛む。
事故があった日からセカンドワールドに現れる事のない彼も、やはり彼女が亡くなった事を知っているのだろうか?
「異世界ゆー場所から来る理由、なくなったわなぁ……。」
「来たら、滅茶苦茶可愛がる予定だったのに。」
「僕も。」
2人でため息を吐きつつ肩を落とす。
息子柴に、お兄ちゃんが出来ると思ってたんだけどなぁ。
「父さんも母さんも、いつまでもそんな事言っても始まりませんよ。」
「柴ちゃん、冷たいわぁ……。」
「僕の息子なのに、冷たいわぁ。」
「事故の直前に、お会いしましたから。」
なんでも、息子が言うには事故が起こる直前にリリンちゃんとアスタール君に会ったらしい。
僕等のとこには来なかったのに。
「柴ちゃんだけずるいわぁ。」
「待ち合わせしてましたから。」
「僕も行けば良かった……。」
後悔先に立たずってヤツなのは知ってるけど、言わずにはいられんかった。
「住所でも教えておけばよかったんですよ。」
「でも、ゲーム内でそんなんできんやん。」
「どうせ、彼女の住所は知ってたんでしょう?」
息子の決めつけに思わず黙り込む。
知ってた。
確かに。
「突然訊ねて行ったら、不審人物だわ。」
「オフ会って事にして呼びだせば良かったんですよ。」
「何でソレ、もっと前に言ってくれないの?!」
「やらない事に意味があるのかと思ってたんですけど、思いつきもしなかったんですか。」
「そんな案、あったら教えて欲しかったわ……。」
「もう、後の祭りだけど。」
妻の言葉に、改めて深いため息が出る。
「アスタール君に会うのも目的の一つだったから、私は暫くあのゲームはお休みしようかしら。」
「僕達も少し、学業の方に本腰入れるので少し控えます。」
「学業なのか、恋愛なのか微妙なラインね。」
「なんだ、柴君は恋人できたのか。」
「その内ご紹介できるかと。」
「そかそか。」
そういえば、息子も成人したんだなぁと思い出す。
「僕は……アスタール君が入ってきた時に誰も居なかったら寂しい思いするだろうから、続けるわ。」
あの、海辺の家だけはなんとか維持しておいてやりたいと、そう思う。
あそこには、あの2人の甘い記憶が沢山詰まっている様な気がするから。
きっと、サービス終了するまで、僕はあの家を守っていくと思う。
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