秘密の異世界交流

霧ちゃん→霧聖羅

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動き出す運命

★幸運

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 続々と、友人達が私の弟子を一目見ようと集まってくる。
最初にやって来て、彼女に飛びつこうとした一狼が他の者にどんな娘かと聞かれる度に「ちっぱい赤毛の超美少女!」と伝えて、その度に一部の者の中で期待感が膨らんでいるのが見て取れた。
超が付くかは少し疑問だが、まぁ可愛いと言って良い顔立ちではあるだろうと心の中で頷く。
始めに会った時と比べると、随分と綺麗になったモノだと感慨深ささえ感じる。

「ちっぱい、と言うのは何の事かね?」
「背丈的に小さいのと、おっぱいが小さいのと掛けてるんじゃないか?」

 手近にいたのに聞いて見ると、そんな答えが返ってくる。
女性に対して結構、失礼な言葉なのではないだろうか?
弟子リエラに言葉が通じなくて良かったとこっそり思う。

「俺は、リリンちゃんのがいいなぁ。」

 ポツリとそう言った彼の事は、一発殴っておいた。

「彼女は私のだ。」
「知ってる!」
「ついでに、今日連れてきた弟子は私の兄の婚約者だから鑑賞のみ許可を出す。」
「「「「「「えええええええええ~!!!!!」」」」」」
「お触りは?」
「不可。」
「お喋りは?」
「言葉が通じない。」
「スクショは?!」
「……勝手にしたまえ。」

 あんまりアホな事をしないでくれれば、それだけでもいいのだが。
暫くすると、リリンとお揃いのワンピースに着替えた弟子リエラがやってきて、あっという間に友人達に取り囲まれた。
ちっぱい……。
リリンと並ぶとそう見えなくもないが……、やはり、サイズ的には普通なのではないだろうか?
そもそも、身長だってリリンとは15センチは違うのだ。
リリンに並ぶほどの大きさだったら、ちょっと引く。
違和感があり過ぎて。

 つい、このメンバーに囲まれるとそっち方面に頭が行ってしまうのを振り払って、リエラをリリンと2人で挟むようにして少しだけ彼等から隔離する。

「1人づつ紹介するから、落ち着きたまえ。」
「んじゃ、俺いっちばーん!」

 早速、一番前に並んだのは一番早くから来ていた一狼だからと誰も文句を言わなかったが、2番目からは少しざわつく。
ソレを適当にリリンがいなしながら、適当に並べていった。
リエラに、名前と大体の性格を話しながら紹介していくと、何故かみんなリエラの手を一振りしながら離れていく。

「なんか、リエラたんと握手しよう会になっとる……」
「何故『たん』……?」
「いや、なんとなく。」

 あと3人程で1周するなというところで、リエラが引きつった笑顔を浮かべてそう訊ねてきた。

『これ、いつまで続くんですか?』

 彼女の視線の先を見ると、何故か4人目で最初に戻ろうとしている。

「何故、1度紹介した者が並び直してるのかね?」
「そ・れ・はー!」
「「「その場のノリで!!!」」」
「成程ね。じゃあ、リリンちゃんが思いっきり突っ込んであ・げ・る☆」

 楽しげに声を上げながら、彼等はイガイガの付いた棒を振り回すリリンに追われて浜辺を走っていく。
あの棒は、イカ下足君謹製の品で見た目はごついが、叩いても痛くないからこういう時に良く彼女が好んで使っているモノだ。
叩かれた者の大げさな悲鳴が、離れているこっちにも聞こえてきて、見物している者たちから笑い声が上がる。

『なんか、楽しそうな人達ですねぇ。』
『うむ。騒がしいが、大事な友人達だ。』
『……私も、ちょっと混ざってみようかな。』

 リエラはそう言うと、リリンが走って行った方に足を向けた。

『作り物だなんて思えない位、綺麗な世界ですね。』

 そう口にしながら、しゃがみ込み浜辺の砂を掬い上げて指の間からさらさらと足下に落とす。

『触感がやや鈍い位で、さっき頂いたお茶もお菓子もきちんと味がしますし。私には想像もつかない様な技術が注ぎ込まれているんでしょう。』
『魔法のない世界で、魔法の代わりに『科学』と言う技術が発達しているらしい。』

 私の言葉に、彼女は少し皮肉な笑みを浮かべる。
それはそうだろう。
私達の暮らす世界には魔法が存在するのにも拘らず、ソレを広めるのを嫌った私の先代祖父によってその技術の発達が阻害されたままなのだ。
私達の周りで使われている魔法と呼ばれる技の、技術の拙さを思うと情けなくさえ思える。

『最初に見せて頂いた『ミシン』も凄いと思いましたけど、こちらの技術をそのまま持ち込むのは恥知らずの愚か者がやることですね。
でも……、参考にするのには最高の教材ですから、ああ言ったカラクリ仕掛けを得意とする技術者を探して、研究して貰うのもいいかもしれません。』

 現実の世界に戻ってからやる事を考えて、彼女は機嫌良くクスクスと笑う。

『アスタールさんを、この向こうの世界に送ってから研究する事にしますけど。』

 パッと砂を握った開き、海に沈んで行く夕陽に目を細める。
その、不遜とも言える表情と共に浮かべた笑みは、今まで見た物の中でも格別に美しく見えた。

『いつか、私達の世界からも普通にこの向こうと行き来出来るような技術を開発してやります。』
『……そこは、神々の領域だとは思わないのかね?』
『かもしれませんけど、やらずに諦めたくはないでしょう?』

 私の言葉に膨れるのは、いつものリエラで少し安心する。

『アスタールさん、こう言う時は夢を大きく行っておくモノですよ?』
『成程。』
『それじゃ、一緒に叫んで見ましょうか?』
『叫ぶ?』
『世界の壁を、ぶっ壊してやるー!!!!!!』

 随分と大きく出たなと思いながら、私も一緒になって叫んで見た。
大声を上げるのは滅多にない事だから、上手く声はでなかったが、少し気分がすっきりした気がする。

『君は天才か。』
『何を今さら。』

 そう言って笑う愛弟子リエラを見ながら、彼女にであった幸運を噛みしめた。
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