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初めての?共同作業
★ブローチ
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今回のイベントモンスターのドロップアイテムは、様々な色合いの石の填まったブローチだった。
ランダムでスキルが+1~3されるというそのブローチの性能は正直どうでもいい。
様々な色合いの石が填まっている『ブローチ』だと言う部分が重要だ。
私の世界では、基本『猫神』という神を信仰している。
その下に『下位神』が存在している事は余り知られておらず、その為『猫神教』が唯一の宗教だ。
ここからが大事なのだが、『猫神』への婚姻宣誓の儀では互いの瞳の色と同じ色の銀のブローチを交換する事になっている。
私は、これを用意してこのゲームでも彼女と婚姻を結びたいと思ったのだ。
こっそりとその事を、いつの間にやら私を師匠と呼び始めたまりあに話すと、ニヤニヤ笑って肘で私の事を小突きながらも協力を申し出てくれた。
彼女が協力する事になった時点で、常に一緒にパーティを組んでいるサイも自動的に協力してくれる事になってしまったのだが、彼は「兄さんのお手伝いなら喜んで。」と言って率先して集めてくれている。
何とも有難いことだ……。
ところで、彼が「兄さん」と呼び始めたのは、私がイカ下足君に「貴方の様な人が本当の父だったらよかったのに。」と言ってしまったのを聞かれてしまってからの事。
「なら、僕の『兄さん』ですね!」と嬉しげに決定されてしまったのだ。
未だ、その呼び方は慣れないが……少しこそばゆいような……悪い気はしていないのが正直なところでもある。
いや、正直に言おう。
ちょっと嬉しい。
妹の舌っ足らずな『あったーう』と言う呼び方の破壊力に近い物がある。
それ以来、彼等は私の為に家族ごっこに興じてくれていて、その事もあってよりこの世界から離れがたい気持ちにさせられていた。
地球世界に行けたのなら、家族は無理だとしても、友人として会う事は出来るだろうか?
流石に、私が地球世界の住民ではないと言う事は話してはいない。
それにしても予定外だったのが、リリンが急に狩りに参加すると言いだした事だ。
狩りが苦手な彼女が急に参加を決めた時には本当に驚いた。
何度も聞き直してしまった位だ。
一緒に居られる時間が増えるのは嬉しい物の、少し、目的を考えると彼女が一緒に居ると都合が悪いと言うかなんというか……。
彼女の手元に希望する種類のブローチが出てしまったらどうしようかと、今はそれが悩みどころだ。
だが、一緒に居る時間が増えたのは素直に嬉しいと言っておこう。
それも紛う事なき真実だから。
「ねぇ?」
「うむ??」
「アル、ブローチ集めてるんだよね?」
その日の狩りを終えてから、拠点にしている浜辺の我が家に帰るとリリンがそう訊ねてきた。
どう答えよう?
答えに窮しているうちに、さっさとソファに腰掛けた彼女は、バックパックから今日手に入れたらしいブローチを目の前にあるローテーブルの上に並べ始める。
金が2つ、銀は3つ。銅が5個に、錫6個と随分と大漁だった様だ。
私の方が止めをさせた数は倍近く多かった筈だが、必ずドロップする訳ではないブローチの取得量は同じ位だった気がする。
「この中に、アルの欲しいのあったら使って?」
「……。」
その言葉が嬉し過ぎて、胸が詰まる。
銀のブローチの内の一つが、もしかしたら私の瞳の色に近いかもしれない。
それを手に取ると、目の側に近付けて彼女に訊ねる。
「この石の色と、私の瞳の色合いの差異はどの程度だろうか?」
「ほぼ一緒だけど……?」
「ならば、これで目的の物は揃ったようだ。」
「石の色が重要なの?」
「うむ。」
物問いた気な彼女の前に、数日前に入手していた紫の石の填まったブローチを並べて置く。
「私は、君の本当の瞳の色を知らない。」
そう前置きをして、先を続ける。
「だから、君の瞳の色に合わせた物と、私の瞳の色に合わせた物を探していた。」
彼女は、キョトンと首を傾げながらその言葉に耳を傾けていたが、少しの間視線を彷徨わせてから、「もしかして」と呟いた。
「プロポーズアイテムだったりとか??」
「私の住む世界では、婚姻の際に互いの心の象徴として交換し合う物なのだ。」
ゆっくりと、彼女の顔に理解の色が広がっていく。
照れ臭そうな表情を浮かべると、私を少し上目遣いに見上げる。
「それじゃ、アルのところの婚礼衣裳ってどんなの?」
「婚礼衣装は……。」
結局、婚礼衣装の素材が揃わない為、婚姻宣誓の儀は延期になったのだが、今、私と彼女の左胸には互いの瞳の色と同じ石の填まったブローチがある。
それだけでも、満ち足りた気分になれるのは私が単純なのだろうか?
彼女の手で私の瞳と同じ石のものを、私の手で彼女の瞳と同じ石のものを入手できたのが一番嬉しい。
ランダムでスキルが+1~3されるというそのブローチの性能は正直どうでもいい。
様々な色合いの石が填まっている『ブローチ』だと言う部分が重要だ。
私の世界では、基本『猫神』という神を信仰している。
その下に『下位神』が存在している事は余り知られておらず、その為『猫神教』が唯一の宗教だ。
ここからが大事なのだが、『猫神』への婚姻宣誓の儀では互いの瞳の色と同じ色の銀のブローチを交換する事になっている。
私は、これを用意してこのゲームでも彼女と婚姻を結びたいと思ったのだ。
こっそりとその事を、いつの間にやら私を師匠と呼び始めたまりあに話すと、ニヤニヤ笑って肘で私の事を小突きながらも協力を申し出てくれた。
彼女が協力する事になった時点で、常に一緒にパーティを組んでいるサイも自動的に協力してくれる事になってしまったのだが、彼は「兄さんのお手伝いなら喜んで。」と言って率先して集めてくれている。
何とも有難いことだ……。
ところで、彼が「兄さん」と呼び始めたのは、私がイカ下足君に「貴方の様な人が本当の父だったらよかったのに。」と言ってしまったのを聞かれてしまってからの事。
「なら、僕の『兄さん』ですね!」と嬉しげに決定されてしまったのだ。
未だ、その呼び方は慣れないが……少しこそばゆいような……悪い気はしていないのが正直なところでもある。
いや、正直に言おう。
ちょっと嬉しい。
妹の舌っ足らずな『あったーう』と言う呼び方の破壊力に近い物がある。
それ以来、彼等は私の為に家族ごっこに興じてくれていて、その事もあってよりこの世界から離れがたい気持ちにさせられていた。
地球世界に行けたのなら、家族は無理だとしても、友人として会う事は出来るだろうか?
流石に、私が地球世界の住民ではないと言う事は話してはいない。
それにしても予定外だったのが、リリンが急に狩りに参加すると言いだした事だ。
狩りが苦手な彼女が急に参加を決めた時には本当に驚いた。
何度も聞き直してしまった位だ。
一緒に居られる時間が増えるのは嬉しい物の、少し、目的を考えると彼女が一緒に居ると都合が悪いと言うかなんというか……。
彼女の手元に希望する種類のブローチが出てしまったらどうしようかと、今はそれが悩みどころだ。
だが、一緒に居る時間が増えたのは素直に嬉しいと言っておこう。
それも紛う事なき真実だから。
「ねぇ?」
「うむ??」
「アル、ブローチ集めてるんだよね?」
その日の狩りを終えてから、拠点にしている浜辺の我が家に帰るとリリンがそう訊ねてきた。
どう答えよう?
答えに窮しているうちに、さっさとソファに腰掛けた彼女は、バックパックから今日手に入れたらしいブローチを目の前にあるローテーブルの上に並べ始める。
金が2つ、銀は3つ。銅が5個に、錫6個と随分と大漁だった様だ。
私の方が止めをさせた数は倍近く多かった筈だが、必ずドロップする訳ではないブローチの取得量は同じ位だった気がする。
「この中に、アルの欲しいのあったら使って?」
「……。」
その言葉が嬉し過ぎて、胸が詰まる。
銀のブローチの内の一つが、もしかしたら私の瞳の色に近いかもしれない。
それを手に取ると、目の側に近付けて彼女に訊ねる。
「この石の色と、私の瞳の色合いの差異はどの程度だろうか?」
「ほぼ一緒だけど……?」
「ならば、これで目的の物は揃ったようだ。」
「石の色が重要なの?」
「うむ。」
物問いた気な彼女の前に、数日前に入手していた紫の石の填まったブローチを並べて置く。
「私は、君の本当の瞳の色を知らない。」
そう前置きをして、先を続ける。
「だから、君の瞳の色に合わせた物と、私の瞳の色に合わせた物を探していた。」
彼女は、キョトンと首を傾げながらその言葉に耳を傾けていたが、少しの間視線を彷徨わせてから、「もしかして」と呟いた。
「プロポーズアイテムだったりとか??」
「私の住む世界では、婚姻の際に互いの心の象徴として交換し合う物なのだ。」
ゆっくりと、彼女の顔に理解の色が広がっていく。
照れ臭そうな表情を浮かべると、私を少し上目遣いに見上げる。
「それじゃ、アルのところの婚礼衣裳ってどんなの?」
「婚礼衣装は……。」
結局、婚礼衣装の素材が揃わない為、婚姻宣誓の儀は延期になったのだが、今、私と彼女の左胸には互いの瞳の色と同じ石の填まったブローチがある。
それだけでも、満ち足りた気分になれるのは私が単純なのだろうか?
彼女の手で私の瞳と同じ石のものを、私の手で彼女の瞳と同じ石のものを入手できたのが一番嬉しい。
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