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宅地造成
★痴話喧嘩
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リリンが採集作業に勤しむ間、私は周囲に沸くモンスターを狩る作業を行っている。
彼女の話では、宅地造成クエストで要求されるアイテムを作る為には、少し調理のレベルが足りないらしく、その分のレベルを上げるための素材が欲しいらしいのだ。
「ねー、アルぅ?」
「何かね?」
「まだ怒ってる……?」
「……少しだけ。」
ちょっぴり甘えた声でリリンが恐る恐る声を掛けてくるのは、私が来る前にこっそりとクエストを進めようとしていた後ろめたさからだ。
本当は怒ってはいないのだが、オドオドするリリンの姿が可愛らしすぎて、つい、怒っているフリを続けてしまっている。
……いつ、機嫌が直った事にすれば良いんだろう。
不意に、彼女が後ろから抱きついてきて慌てて足を踏ん張って転ぶのを回避した。
背中にしがみつく彼女に視線を向けると、涙目で頬をプックリと膨らませて上目遣いになって私を見上げている。余りの可愛らしさに、胸がギュッと締め付けられるような感覚に陥る。
この上私を、更に惑わせるのか……。
リリンの可愛らしさに戦々恐々としながら、何とか言葉を紡ぎだす。
「……移動かね?」
思ったよりも普通の声が出てホッとするが、彼女は眉を寄せたまま私の肩に齧りついた。
「!!!」
「アルのバカバカバカバカバカー!!!!!!」
思いきり齧りつかれた肩を抑えると、リリンは私から距離を取ってそう叫ぶと背中を向けて駆け出す。
突然の彼女からの攻撃に呆然とその背中を見送りかけてから、慌てて追いかける。
≪告知:プレイヤー リリン・グラムより攻撃を受けました。
被害報告を行いますか?
はい・いいえ≫
そんなのは、勿論『いいえ』だ。
視界に現れたポップアップを叩き消す。
種族特性と言う物なのか、ネコ耳のアバターを使っているリリンは私よりも足が速いらしく、随分と先の方を走って行く。
「リリン、待ちたまえ!」
声を張り上げてみるモノの、慣れないせいもあってかあまり大きな声が出ない。
現実世界の方では、声を張り上げる様な機会など一切ないのだ。
不意に、リリンの姿が灰色に点滅しているのに気が付く。
「まさか……」
犯罪者フラグ?
リリンが最近までやっていたゲームでは、他のプレイヤーに犯罪行為を行った場合一時的に名前が灰色表記される物があった。
もしかしたら、名前が表記されないこのゲームでは犯罪者フラグが立っている間は、体が灰色に点滅するのかもしれない。
その辺りのルールは聞いていないが、嫌な予感がして彼女を追う足を速める。
普段はしない走るなんて事をしたものだから、何度か躓きながら彼女を見失った辺りで立ち止まり、彼女がどちらへ向かったのか見回すと、右手の方から彼女の悲鳴が聞こえてきた。
「うにゃ~?!」
「PK、成敗~!!!」
悪い予感が当たったらしい。
続いて聞こえてくる打撃音に向かって私は走り始めた。
彼女の話では、宅地造成クエストで要求されるアイテムを作る為には、少し調理のレベルが足りないらしく、その分のレベルを上げるための素材が欲しいらしいのだ。
「ねー、アルぅ?」
「何かね?」
「まだ怒ってる……?」
「……少しだけ。」
ちょっぴり甘えた声でリリンが恐る恐る声を掛けてくるのは、私が来る前にこっそりとクエストを進めようとしていた後ろめたさからだ。
本当は怒ってはいないのだが、オドオドするリリンの姿が可愛らしすぎて、つい、怒っているフリを続けてしまっている。
……いつ、機嫌が直った事にすれば良いんだろう。
不意に、彼女が後ろから抱きついてきて慌てて足を踏ん張って転ぶのを回避した。
背中にしがみつく彼女に視線を向けると、涙目で頬をプックリと膨らませて上目遣いになって私を見上げている。余りの可愛らしさに、胸がギュッと締め付けられるような感覚に陥る。
この上私を、更に惑わせるのか……。
リリンの可愛らしさに戦々恐々としながら、何とか言葉を紡ぎだす。
「……移動かね?」
思ったよりも普通の声が出てホッとするが、彼女は眉を寄せたまま私の肩に齧りついた。
「!!!」
「アルのバカバカバカバカバカー!!!!!!」
思いきり齧りつかれた肩を抑えると、リリンは私から距離を取ってそう叫ぶと背中を向けて駆け出す。
突然の彼女からの攻撃に呆然とその背中を見送りかけてから、慌てて追いかける。
≪告知:プレイヤー リリン・グラムより攻撃を受けました。
被害報告を行いますか?
はい・いいえ≫
そんなのは、勿論『いいえ』だ。
視界に現れたポップアップを叩き消す。
種族特性と言う物なのか、ネコ耳のアバターを使っているリリンは私よりも足が速いらしく、随分と先の方を走って行く。
「リリン、待ちたまえ!」
声を張り上げてみるモノの、慣れないせいもあってかあまり大きな声が出ない。
現実世界の方では、声を張り上げる様な機会など一切ないのだ。
不意に、リリンの姿が灰色に点滅しているのに気が付く。
「まさか……」
犯罪者フラグ?
リリンが最近までやっていたゲームでは、他のプレイヤーに犯罪行為を行った場合一時的に名前が灰色表記される物があった。
もしかしたら、名前が表記されないこのゲームでは犯罪者フラグが立っている間は、体が灰色に点滅するのかもしれない。
その辺りのルールは聞いていないが、嫌な予感がして彼女を追う足を速める。
普段はしない走るなんて事をしたものだから、何度か躓きながら彼女を見失った辺りで立ち止まり、彼女がどちらへ向かったのか見回すと、右手の方から彼女の悲鳴が聞こえてきた。
「うにゃ~?!」
「PK、成敗~!!!」
悪い予感が当たったらしい。
続いて聞こえてくる打撃音に向かって私は走り始めた。
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