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大陸へ -第四夜~
★船での食事
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昼の間は、ちょこちょことイカという白い軟体生物やフライナイフと言う魚の襲撃があったものの、夜になるとそう言った戦闘が起こる事はなく、のんびりと食堂での食事を楽しむ事が出来た。
リリンが『ラグジュアリー』な雰囲気だと評した食堂は少しばかり私には華美に感じたが、ハニーちゃんにも好評で、女性好みの内装だったらしい。
「リアルだと、こう言う所は良いお値段するものね。」
「そうそう。派遣さんのお給料ではとてもとても……。」
「リリンちゃんは派遣さんかぁ。大変だわな。」
「自営も十分大変かと。」
「違いないわ。」
『派遣さん』と言うのは、期間限定での雇用形態だったか?少し違う様な気もするが、似たような雇用形態での名称が色々ありすぎてイマイチ覚えきれない。
『自営』は個人商店の様なもので、私が祖父から継いだ工房もこの『自営』の括りに入る……はずだ。
頭の中の知識と照らし合わせながら、彼等の話に耳を傾けつつ食事を進める。
リリンとの会話だけで埋められない知識を、こうやって補完するのだ。
「アスタール君は随分と静かだけど……?」
「多分、私との会話だけだと埋まらない知識の補充中かと。」
「うむ。気にしないで話を続けてくれたまえ。」
ハニーちゃんの気遣いに頭を下げつつ返すと、曖昧な笑みが返ってきた。
まぁ、それ以上の追及は無かったので良かった事にしよう。
引き続き話し始めるのを確認してから、食事の続きを再開する。
メニューはメインを選択すると、汁物・サラダ・パンが付いてくる『セット物』だった。
4種類あったメイン料理の中でどれを食べるか悩んだ物の、リリンと2人で違う物を頼んで半分づつ交換させて貰い、2種類の味を楽しんだ。
リリンの頼んだシーフードドリアは、口の中が焼けるんじゃないかと思う位熱かったが、白いソースのコクと、一緒に入っている海鮮の味が溶けあっていて口の中で2重層を奏でているかのようだった。
自分で頼んだ白身魚のソテーも美味ではあるが、次の機会があったら私もあちらにしよう。
ただ……。
チラリと、イカ下足君の手元に視線を向けると、赤い色のスープに浸かった麺が見える。
『スープパスタ』だったか、アレも気になる。
「アスタール君も、食べてみる?」
じっと見てしまっていたらイカ下足君がお裾分けしてくれて、リリンとハニーちゃんに笑われてしまったが、とても美味しかったので、気付かなかった事にする。
お礼に私のソテーもお裾分けすると、ハニーちゃんの『フライ』も私の皿にやってきて、最終的には全部の料理を賞味する事が出来た。とても満足だ。
リアルだと少し食が細めだから、こんなにいろいろ食べれ無い為、余計に満足感を感じるのかもしれない。
「アール?」
不意に、楽しげな含み笑いをしながらリリンが私の名を呼ぶ。
首を傾げてそちらを見ると、スプーンに自分の分のデザートを乗せてこちらに差し出している。
「はい、あーん?」
「……」
言われるままに口を開けると、甘酸っぱいソースの掛かったアイスが口の中でフワリと溶けた。
妹と毎日のようにやっていることなのに、リリンにされるとどうしてこんなに胸が高鳴るのだろう?
お返しに、私のミルフィーユを彼女に差し出すと、嬉しげに口に含む。
満足そうに口を動かしている彼女もやっぱり可愛い。
その後はごくごく自然にデザートを、リリンと食べさせ合いっこをして楽しんだ。
今日も幸せで、少し、リアルの世界に帰るのが嫌になってしまう。
リリンと同じ世界に一日でも早く行ける様に、もっと頑張らなくては……。
リリンが『ラグジュアリー』な雰囲気だと評した食堂は少しばかり私には華美に感じたが、ハニーちゃんにも好評で、女性好みの内装だったらしい。
「リアルだと、こう言う所は良いお値段するものね。」
「そうそう。派遣さんのお給料ではとてもとても……。」
「リリンちゃんは派遣さんかぁ。大変だわな。」
「自営も十分大変かと。」
「違いないわ。」
『派遣さん』と言うのは、期間限定での雇用形態だったか?少し違う様な気もするが、似たような雇用形態での名称が色々ありすぎてイマイチ覚えきれない。
『自営』は個人商店の様なもので、私が祖父から継いだ工房もこの『自営』の括りに入る……はずだ。
頭の中の知識と照らし合わせながら、彼等の話に耳を傾けつつ食事を進める。
リリンとの会話だけで埋められない知識を、こうやって補完するのだ。
「アスタール君は随分と静かだけど……?」
「多分、私との会話だけだと埋まらない知識の補充中かと。」
「うむ。気にしないで話を続けてくれたまえ。」
ハニーちゃんの気遣いに頭を下げつつ返すと、曖昧な笑みが返ってきた。
まぁ、それ以上の追及は無かったので良かった事にしよう。
引き続き話し始めるのを確認してから、食事の続きを再開する。
メニューはメインを選択すると、汁物・サラダ・パンが付いてくる『セット物』だった。
4種類あったメイン料理の中でどれを食べるか悩んだ物の、リリンと2人で違う物を頼んで半分づつ交換させて貰い、2種類の味を楽しんだ。
リリンの頼んだシーフードドリアは、口の中が焼けるんじゃないかと思う位熱かったが、白いソースのコクと、一緒に入っている海鮮の味が溶けあっていて口の中で2重層を奏でているかのようだった。
自分で頼んだ白身魚のソテーも美味ではあるが、次の機会があったら私もあちらにしよう。
ただ……。
チラリと、イカ下足君の手元に視線を向けると、赤い色のスープに浸かった麺が見える。
『スープパスタ』だったか、アレも気になる。
「アスタール君も、食べてみる?」
じっと見てしまっていたらイカ下足君がお裾分けしてくれて、リリンとハニーちゃんに笑われてしまったが、とても美味しかったので、気付かなかった事にする。
お礼に私のソテーもお裾分けすると、ハニーちゃんの『フライ』も私の皿にやってきて、最終的には全部の料理を賞味する事が出来た。とても満足だ。
リアルだと少し食が細めだから、こんなにいろいろ食べれ無い為、余計に満足感を感じるのかもしれない。
「アール?」
不意に、楽しげな含み笑いをしながらリリンが私の名を呼ぶ。
首を傾げてそちらを見ると、スプーンに自分の分のデザートを乗せてこちらに差し出している。
「はい、あーん?」
「……」
言われるままに口を開けると、甘酸っぱいソースの掛かったアイスが口の中でフワリと溶けた。
妹と毎日のようにやっていることなのに、リリンにされるとどうしてこんなに胸が高鳴るのだろう?
お返しに、私のミルフィーユを彼女に差し出すと、嬉しげに口に含む。
満足そうに口を動かしている彼女もやっぱり可愛い。
その後はごくごく自然にデザートを、リリンと食べさせ合いっこをして楽しんだ。
今日も幸せで、少し、リアルの世界に帰るのが嫌になってしまう。
リリンと同じ世界に一日でも早く行ける様に、もっと頑張らなくては……。
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