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大陸へ -第四夜~
★大人げない嫉妬心
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私に分からない話で盛り上がる2人に嫉妬して、子供じみた事をしてしまった。
自分でも余りの子供っぽい振舞いだと気が付いたものの、出てしまった恨みがましい声はもうひっこめる事も出来なくて、膝を抱え込むようにして俯いて顔を隠す。
いっそ、このままログアウトしようか?
そう思ったところで、リリンが私を抱きしめながら謝罪の言葉を口にした。
彼女の腕に抱きしめられ、その体温と甘い匂いに包まれると、あっというまに私の気分は上向きになる。
チラリと目を上げると、イカ下足君と目が合った。
「「……。」」
気まずい……。
私が思わず目を逸らすと、ポンポンと肩を叩きながら彼も謝罪の言葉を口にする。
「アスタール君、リリンちゃん独占してしまって悪かったわ。」
「いや……。私も大人げなくて申し訳ない。」
本当にどうしようもない。
自分の余裕の無さに泣きたくなった。
これが本物の世界で、いつでもリリンに触れる事が出来たのなら、こんな醜態をさらす事は無かったのだろうか?
「リリンも、悪かった。」
「ううん。私の方こそ、アルの分からない話で盛り上がってゴメン。」
しょんぼりと耳を伏せてうなだれる彼女の姿に、胸がキュッと締め付けられる。
リリンの、こんな顔が見たかったわけじゃないのに。
私のあんなどうでもいいような嫉妬心から出た言葉で、彼女にそんな顔をさせてしまったのかとやるせない気持ちになる。
「私がもっと学べばいい事だ。」
「でも……」
「なら、君が教えてくれればいい。」
「ん。りょーかい。」
困り顔で頷く彼女と鼻先を合わせて、立ち上がると、イカ下足君はこちらを見ない様にしながら先に立って待ってくれていた。
「んじゃ、いこかー!」
「お待たせして申し訳ない。」
「ごめんねぇ……。」
2人で謝ると彼はニヤリと笑って、「その代わりに……」と前置きをしてお願い事をしてくる。
「港町に着いたらウチの嫁さんもメンバーに混ぜて貰いたいんだわ。」
「わたしは良いけど、アルは?」
「問題ない。」
「助かるわー! 船に乗るのにもクエがあるらしくて、そこで嫁さん引っかかってるらしいんだわ。」
「それより、イカ下足君に奥さん居たんだ?」
「これがな、高校生の息子もいるんだわ。」
リリンの発言はちょっと失礼なのではないかと思ったが、イカ下足君はサラリと聞き流して話を続けていた。高校生……5年……7年前まで、彼女もその高校生とやらだったような気がして、小声で確認をとると肯定の返事が返ってくる。
と言う事は、イカ下足君には18歳よりも若い子息が居ると言う事か。
私の国はリリンの住んでいる地球世界の国よりもずっと人口が少ない。
王都でも10万人程で、それに次ぐ大都市と呼ばれる町でもせいぜい5万人程度だ。
私の町は住民が1万人位で、その他に探索者と呼ばれる人間の出入りがその2~3倍と、彼等相手の商売を行う者達が5千人程と言ったところ。
人口が1万人を超えたら割と大きな都市と言う認識になっている。
また、学ぶ場もまだあまり整備が進んでおらず、人口が1万人を超える町でやっと学校と言う学びの場が用意される。その学ぶ期間もあまり長くは無く、一般的には12歳になると働きに出始めるものだ。
その為、100年も生きる者が多くは無いと言う地球世界での学校に通う年数の長さに、初めてリリンから聞いた時には仰天したのだが、イカ下足君の子息の話を聞いてそれを思い出す。
私の世界で、それが許されるのは富裕層か、よほどの才のある者だけなのだ。
その才にしても、見出されずに働きに出ている者も少なくないのではないかと、たまに自らの弟子を見ながら思う。彼女は、間違いなく天才の部類だと思うのだが……。
それから、ふと、兄上も18歳になるまでは王都の北にある魔法学院に籍を置いていたんだったな、と思い出していた。
「アル~?」
「ん?」
「確か、アルの従姉弟もイカ下足君の息子さんと同じ位の年代じゃないっけ?」
「うむ。一番上の長女が19歳、その下の長男が17歳、次女が15歳で3女が12歳だったはずだ。」
訊ねられ、一人一人顔を思い浮かべながら年齢を上げていく。
一番上の可愛い物好きの従妹、女好きだと女兄弟に槍玉に挙げられている不憫な従弟。
勝気な性格の活発でお喋りな従妹、綺麗好きで掃除が趣味の一番年下の従妹。
どれも、私の可愛い大切な従妹達だ。
「その長男君とウチのが同い年だわ。」
「アルのとこだと、もう働いてるんだよねぇ?」
「早くない?」
「なんか、12歳位から働くのが普通なんだって。」
「へぇ~。なら、一番下の子も働いてるって事か。」
「今年から私の工房に弟子入りしてきているが、中々の働き者だ。」
それから、港町に入るまでの間それぞれの家族について話しながら歩いた。
自分でも余りの子供っぽい振舞いだと気が付いたものの、出てしまった恨みがましい声はもうひっこめる事も出来なくて、膝を抱え込むようにして俯いて顔を隠す。
いっそ、このままログアウトしようか?
そう思ったところで、リリンが私を抱きしめながら謝罪の言葉を口にした。
彼女の腕に抱きしめられ、その体温と甘い匂いに包まれると、あっというまに私の気分は上向きになる。
チラリと目を上げると、イカ下足君と目が合った。
「「……。」」
気まずい……。
私が思わず目を逸らすと、ポンポンと肩を叩きながら彼も謝罪の言葉を口にする。
「アスタール君、リリンちゃん独占してしまって悪かったわ。」
「いや……。私も大人げなくて申し訳ない。」
本当にどうしようもない。
自分の余裕の無さに泣きたくなった。
これが本物の世界で、いつでもリリンに触れる事が出来たのなら、こんな醜態をさらす事は無かったのだろうか?
「リリンも、悪かった。」
「ううん。私の方こそ、アルの分からない話で盛り上がってゴメン。」
しょんぼりと耳を伏せてうなだれる彼女の姿に、胸がキュッと締め付けられる。
リリンの、こんな顔が見たかったわけじゃないのに。
私のあんなどうでもいいような嫉妬心から出た言葉で、彼女にそんな顔をさせてしまったのかとやるせない気持ちになる。
「私がもっと学べばいい事だ。」
「でも……」
「なら、君が教えてくれればいい。」
「ん。りょーかい。」
困り顔で頷く彼女と鼻先を合わせて、立ち上がると、イカ下足君はこちらを見ない様にしながら先に立って待ってくれていた。
「んじゃ、いこかー!」
「お待たせして申し訳ない。」
「ごめんねぇ……。」
2人で謝ると彼はニヤリと笑って、「その代わりに……」と前置きをしてお願い事をしてくる。
「港町に着いたらウチの嫁さんもメンバーに混ぜて貰いたいんだわ。」
「わたしは良いけど、アルは?」
「問題ない。」
「助かるわー! 船に乗るのにもクエがあるらしくて、そこで嫁さん引っかかってるらしいんだわ。」
「それより、イカ下足君に奥さん居たんだ?」
「これがな、高校生の息子もいるんだわ。」
リリンの発言はちょっと失礼なのではないかと思ったが、イカ下足君はサラリと聞き流して話を続けていた。高校生……5年……7年前まで、彼女もその高校生とやらだったような気がして、小声で確認をとると肯定の返事が返ってくる。
と言う事は、イカ下足君には18歳よりも若い子息が居ると言う事か。
私の国はリリンの住んでいる地球世界の国よりもずっと人口が少ない。
王都でも10万人程で、それに次ぐ大都市と呼ばれる町でもせいぜい5万人程度だ。
私の町は住民が1万人位で、その他に探索者と呼ばれる人間の出入りがその2~3倍と、彼等相手の商売を行う者達が5千人程と言ったところ。
人口が1万人を超えたら割と大きな都市と言う認識になっている。
また、学ぶ場もまだあまり整備が進んでおらず、人口が1万人を超える町でやっと学校と言う学びの場が用意される。その学ぶ期間もあまり長くは無く、一般的には12歳になると働きに出始めるものだ。
その為、100年も生きる者が多くは無いと言う地球世界での学校に通う年数の長さに、初めてリリンから聞いた時には仰天したのだが、イカ下足君の子息の話を聞いてそれを思い出す。
私の世界で、それが許されるのは富裕層か、よほどの才のある者だけなのだ。
その才にしても、見出されずに働きに出ている者も少なくないのではないかと、たまに自らの弟子を見ながら思う。彼女は、間違いなく天才の部類だと思うのだが……。
それから、ふと、兄上も18歳になるまでは王都の北にある魔法学院に籍を置いていたんだったな、と思い出していた。
「アル~?」
「ん?」
「確か、アルの従姉弟もイカ下足君の息子さんと同じ位の年代じゃないっけ?」
「うむ。一番上の長女が19歳、その下の長男が17歳、次女が15歳で3女が12歳だったはずだ。」
訊ねられ、一人一人顔を思い浮かべながら年齢を上げていく。
一番上の可愛い物好きの従妹、女好きだと女兄弟に槍玉に挙げられている不憫な従弟。
勝気な性格の活発でお喋りな従妹、綺麗好きで掃除が趣味の一番年下の従妹。
どれも、私の可愛い大切な従妹達だ。
「その長男君とウチのが同い年だわ。」
「アルのとこだと、もう働いてるんだよねぇ?」
「早くない?」
「なんか、12歳位から働くのが普通なんだって。」
「へぇ~。なら、一番下の子も働いてるって事か。」
「今年から私の工房に弟子入りしてきているが、中々の働き者だ。」
それから、港町に入るまでの間それぞれの家族について話しながら歩いた。
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