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第三夜
★ミシン
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リリンの後について、裁縫用の施設に向かう。
そういえば、調理施設以外の施設に入るのは初めてかもしれない。
「あ。」
「忘れものかね?」
不意にリリンが立ち止って、私を仰ぎ見る。
「アルは見てるだけも暇だよね~?」
「……君を見てる時間が暇だとは、微塵も感じないのだが……。」
「にょ?!」
ボッと、音が出そうな勢いで彼女の顔が朱に染まる姿に目を細めた。
本心からでたとはいえ、こんな言葉だけでも照れるのかと不思議に思う。
まさかとは思うが、言われ慣れていない?
そうだとしたら、彼女の周りに居る人間は見る目が無い。
こんなに可愛らしいのに。
少し俯いて、両手で頬を抑える姿に、ちょっぴりからかいたくなった。
「君の作業を、私の膝の上で行ってくれるのなら、もっと有意義に感じるのだが……?」
「!!!」
やりすぎた。
尻尾をピンと立てて、毛を逆立てた彼女は私を指さしてから、その指で奥に見える窓口を示す。
「アスタール、GO! 別の作業をして来なさい。」
リリンと一緒に居られないなら、ゲームをする意味がない。
奥の窓口を示し続ける指をそっと握ると、そのまま彼女を伴ってそちらに向かう。
「ちょっと……。私は裁縫施設に用事があるんだけど……。」
「君と居られないのなら、ログアウトして地球の事について勉強でもしていた方がいいではないか。」
「……アルの膝の上でなんて、作業に集中できないもん……。」
「膝の上と言うのは、流石に冗談だ。どこでもやれそうな作業をしながら見ているのならば、一緒に居てもいいのではないかね?」
「……何作るの?」
「さて?」
結局、木工用の小刀を購入してから裁縫施設に向かう事にした。
「木工用の道具だけど、それで何作るの??」
「木工ないよねー」と言いながら、不思議そうに私の事を見る彼女に、「指輪」と答える。
「木製の?」
「うむ。さっき、レシピ本も購入してみた。枝から10個削りだせるらしい。」
「ほほう~。……それもお揃い?」
「嫌かね?」
「可愛いの希望!」
「では、ネコで。」
リリンは、嬉しげに私の腕にしがみつき直した。
考えてみると、調理施設以外の生産施設に入った事が無い。
調理施設も、私の世界の物と違っていた事を考えると、裁縫施設もきっと違うのだろうと思うと、なんだか楽しみだ。今も、設備の種類について私の分からない会話をしているところだ。
「ミシンのメーカーをお選びください。」
「んー……。ジュー○とかってあるかな??」
「ございます。機種の一覧はこちらです。」
ミシンと言うのが何かは分からないが、色々と種類があるらしい。
メーカーとやらと選んだ後、彼女は見せられたリストから機種と言うのを選び、番号札を受け取ると私の手を引いて中へと向かい指定の部屋に入る。
中は思いの外広いのだが、中央には大きな何も置かれていない台があって実際よりも狭苦しく感じさせた。壁際には、なにやら得体の知れない道具が置かれた台が有り、その下には丸椅子が置かれている。
壁際の道具の数は……5種類か。
リリンは、買ってきた生地を台の上に広げると作業のための準備を始めた。
「アルは、ミシンでも眺めてる?」
「ミシンと言うのはアレかね?」
彼女の提案に、問いで返すと頷く事で返事が返ってきた。
「ミシンって言うのは、縫物をする為の道具の一種なの。」
「ほう?」
「少し、やってみせよっか。」
そう言うと彼女は、布の端を切り取って『ミシン』の前に腰掛けると、足元に不思議な形の道具を引き寄せて踏んで見せる。
ダダダダダダダダダダダダダダ
その途端、その道具が目にもとまらぬ勢いで動き出し、その動きと音を予想もして居なかった私は思わず飛び上がってしまい、彼女にその様子が可笑しいと笑われてしまった。
慣れてみると、音はさほど大きくもなかったのだが、初めての事だったのだ。
驚いても仕方ないではないかと、ちょっとだけ彼女を恨みがましく眺めていると「ごめんごめん」、と言いながら頬にキスしてきた。
うむ。許す。
彼女に対してだけは、私はチョロくてもいい。
……と、思う。
「今のミシンで縫ったのはこれね。」
「ほう。」
試し縫いをしたモノを見せられて、驚いた。
全ての縫い目が揃っていて、これを手で縫う事を考えると中々手間が掛かる様に思えたからだ。
……もっとも、私の身近で服を作る者は布を縫い合わせる事はしないのだが。
魔法で、切った糸同士を接合して作るのが、少なくとも私の住む町では普通なのだ。
とはいえ、他の町では手縫いが主流らしいのでこういった道具が流通すると随分と便利そうに思える。
後で、構造を調べてみようと心の中でメモを取っておく。
その後も、彼女は置かれている『ミシン』それぞれを使ってどのような事が出来るのかを見せてくれて、その度に私は驚きの声を上げる羽目になった。
刺繍も『ミシン』で出来るとは……。
出来栄えを見ながら、私の世界にコレを持ちこむのはなかなか危険な事かもしれないと思い始めた。
構造の勉強はするにしても、実際に作るのは熟考してからにしよう。
そういえば、調理施設以外の施設に入るのは初めてかもしれない。
「あ。」
「忘れものかね?」
不意にリリンが立ち止って、私を仰ぎ見る。
「アルは見てるだけも暇だよね~?」
「……君を見てる時間が暇だとは、微塵も感じないのだが……。」
「にょ?!」
ボッと、音が出そうな勢いで彼女の顔が朱に染まる姿に目を細めた。
本心からでたとはいえ、こんな言葉だけでも照れるのかと不思議に思う。
まさかとは思うが、言われ慣れていない?
そうだとしたら、彼女の周りに居る人間は見る目が無い。
こんなに可愛らしいのに。
少し俯いて、両手で頬を抑える姿に、ちょっぴりからかいたくなった。
「君の作業を、私の膝の上で行ってくれるのなら、もっと有意義に感じるのだが……?」
「!!!」
やりすぎた。
尻尾をピンと立てて、毛を逆立てた彼女は私を指さしてから、その指で奥に見える窓口を示す。
「アスタール、GO! 別の作業をして来なさい。」
リリンと一緒に居られないなら、ゲームをする意味がない。
奥の窓口を示し続ける指をそっと握ると、そのまま彼女を伴ってそちらに向かう。
「ちょっと……。私は裁縫施設に用事があるんだけど……。」
「君と居られないのなら、ログアウトして地球の事について勉強でもしていた方がいいではないか。」
「……アルの膝の上でなんて、作業に集中できないもん……。」
「膝の上と言うのは、流石に冗談だ。どこでもやれそうな作業をしながら見ているのならば、一緒に居てもいいのではないかね?」
「……何作るの?」
「さて?」
結局、木工用の小刀を購入してから裁縫施設に向かう事にした。
「木工用の道具だけど、それで何作るの??」
「木工ないよねー」と言いながら、不思議そうに私の事を見る彼女に、「指輪」と答える。
「木製の?」
「うむ。さっき、レシピ本も購入してみた。枝から10個削りだせるらしい。」
「ほほう~。……それもお揃い?」
「嫌かね?」
「可愛いの希望!」
「では、ネコで。」
リリンは、嬉しげに私の腕にしがみつき直した。
考えてみると、調理施設以外の生産施設に入った事が無い。
調理施設も、私の世界の物と違っていた事を考えると、裁縫施設もきっと違うのだろうと思うと、なんだか楽しみだ。今も、設備の種類について私の分からない会話をしているところだ。
「ミシンのメーカーをお選びください。」
「んー……。ジュー○とかってあるかな??」
「ございます。機種の一覧はこちらです。」
ミシンと言うのが何かは分からないが、色々と種類があるらしい。
メーカーとやらと選んだ後、彼女は見せられたリストから機種と言うのを選び、番号札を受け取ると私の手を引いて中へと向かい指定の部屋に入る。
中は思いの外広いのだが、中央には大きな何も置かれていない台があって実際よりも狭苦しく感じさせた。壁際には、なにやら得体の知れない道具が置かれた台が有り、その下には丸椅子が置かれている。
壁際の道具の数は……5種類か。
リリンは、買ってきた生地を台の上に広げると作業のための準備を始めた。
「アルは、ミシンでも眺めてる?」
「ミシンと言うのはアレかね?」
彼女の提案に、問いで返すと頷く事で返事が返ってきた。
「ミシンって言うのは、縫物をする為の道具の一種なの。」
「ほう?」
「少し、やってみせよっか。」
そう言うと彼女は、布の端を切り取って『ミシン』の前に腰掛けると、足元に不思議な形の道具を引き寄せて踏んで見せる。
ダダダダダダダダダダダダダダ
その途端、その道具が目にもとまらぬ勢いで動き出し、その動きと音を予想もして居なかった私は思わず飛び上がってしまい、彼女にその様子が可笑しいと笑われてしまった。
慣れてみると、音はさほど大きくもなかったのだが、初めての事だったのだ。
驚いても仕方ないではないかと、ちょっとだけ彼女を恨みがましく眺めていると「ごめんごめん」、と言いながら頬にキスしてきた。
うむ。許す。
彼女に対してだけは、私はチョロくてもいい。
……と、思う。
「今のミシンで縫ったのはこれね。」
「ほう。」
試し縫いをしたモノを見せられて、驚いた。
全ての縫い目が揃っていて、これを手で縫う事を考えると中々手間が掛かる様に思えたからだ。
……もっとも、私の身近で服を作る者は布を縫い合わせる事はしないのだが。
魔法で、切った糸同士を接合して作るのが、少なくとも私の住む町では普通なのだ。
とはいえ、他の町では手縫いが主流らしいのでこういった道具が流通すると随分と便利そうに思える。
後で、構造を調べてみようと心の中でメモを取っておく。
その後も、彼女は置かれている『ミシン』それぞれを使ってどのような事が出来るのかを見せてくれて、その度に私は驚きの声を上げる羽目になった。
刺繍も『ミシン』で出来るとは……。
出来栄えを見ながら、私の世界にコレを持ちこむのはなかなか危険な事かもしれないと思い始めた。
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