秘密の異世界交流

霧ちゃん→霧聖羅

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第二夜

☆果物狩り

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 シュタール村は、最初の町であるイスブルクの北東にある小さな村という設定らしい。
果樹園の世話をする農家の集まった村で、粗末な木の柵が村の周りを囲って入るものの、その柵に何かからの防衛力があるのかと言うと首をかしげざるを得ない感じだ。
よくある、ファミリー牧場なんかの動物が居る所に勝手に入らないでねー!っていう目的で作られた柵みたいなものだと言うと想像しやすいかな?
まぁ、オオカミなんかが襲ってきたら阿鼻叫喚の地獄絵図になる事請け合いだと思う。
 村の中をざっと見てみると、小さな雑貨屋さんが1軒あった。
後は農家らしい建物が10数軒。
雑貨屋さんを覗いてみると、やっぱり果物も陳列されていて、その他にはランクの低い武器が一通り。
最低限の武器の補充は出来るようになってるらしい。
アルも一緒に品揃えを見ながら、わたしの事を手招きした。

「これは、何と書いてあるのかね?」
「えーと……。『果物狩り お一人様100G もぎたて食べ放題! お持ち帰りは1つ』。」

 指差す先には、壁の張り紙。
そこに書かれているのは観光地で良く見る『果物狩り』の文字。
果物狩り、いいよねー!
子供連れで行っても良いし、デートで行くのもアリらしい。
会社の子が、果物狩りツアーに彼氏と行ったと言ってたなぁ……。
ちょっとだけ羨ましかったなと思い出しながら、アルの方を見ると、耳をピョコピョコさせながらこちらをチラチラと窺がっていた。


あれ?
もしかして??


「アル、果物狩りやりたい?」
「……うむ。」

 ピョコピョコさせていた耳をピン!と立てて、期待に満ちた目を向けてくる姿はしっかり大人なのに、子供っぽさを感じてしまう。

「やろっかー?」
「うむ……!」

 雑貨屋さんのおばさんに果物狩りのお金を渡して、会場に案内して貰う。

「こちらになります。制限時間はありませんのでごゆっくりお楽しみくださいな。」

 おばさんは私達を置いて、そのままお店に戻って行った。

「どれがいいかな~?」

 道中で聞いたところ、この果実園にはリンゴ・ミカンらしい。
採集ポイントみたいにはなってなくって、リアルと同じ様に採って食べれるんだって。
皮を剥く様にと、果実園の中でだけ使えると言うナイフも渡された。

「アルは、ミカンとリンゴどっちがいい?」
「みかん?りんご??」


おおう……。
ミカンやリンゴも分からんかぁ。
似たような物はあるかもしれないけど、もしかしたら名前が違うのかな?


 仕方ないので、採って見せる事にして良さそうな気がする物を探してみる。
リンゴは青リンゴと濃い紅色のと2種類。
ミカンも、温州ミカンっぽいかんじのとちょっと皮の厚めのやつの2種類があるみたいだ。
実は柑橘類はあんまり好きじゃないので、先にリンゴの方を見せる事にして青いのと紅いのを一つづつもいで見せた。

「これが『リンゴ』。青いのは『青りんご』で……。」
「紅いのは『赤りんご』かね?」
「んむー!」
「私の方では、リエラの実と呼ばれている物によく似ている。」
「あー。やっぱり似た感じのはあるんだ?」
「うむ。」

 じっくりと眺めてから、鼻を寄せて匂いを確かめてる真剣な姿をニヨニヨしながら眺める。
美人さんは、リンゴを嗅ぐ姿も様になるね。
観察対象を青リンゴに交代して貰って、紅い方はウサギさん風に剥かせて貰う。
果物狩りのお客さん用に用意されているらしいテーブルとイスがあちこちにあるから、その一つを使ってリンゴを8つに割って、耳になる切れ込みを入れると要らない部分の皮を切り落とす。
切り落とした皮は、そのままその辺にポイだ。
大地に還れ~♪

「ほい、でーきた!」
「こちらでは、こうやって食べるのかね?」
「うーん……。小さい子供がいる家だと、かなぁ?」
「ほう。やり方を教えてくれるかね?」
「簡単だよー。」

 今度は、青リンゴでウサギさんを作る。
熱心に見守る彼の視線に、ちょっと緊張。
そんなにすごい事してないので、マジマジと見られるとめちゃくちゃ照れます。
1つやって見せてあげると、「本当に簡単そうに見える。」と呟きながら早速残っているリンゴの加工を始めた。出来上がった物をためすがめつしてから、私に差し出す。

「どうかね?」
「上手!」

 褒めたら、耳が嬉しげにピクピク動いた。
ぷぷぷ。
めちゃくちゃ可愛いなぁ……。
『あーん』って言って、リンゴを差しだしたら彼はどういう反応をするんだろうと、ふと思う。
耳を赤くしてたらんと垂らして口を開けるんだろうか?
それとも、シレっと普通の事の様に振る舞うんだろうか??

「アル?」
「なにかね?」

 アルが、次のリンゴを剥いたところで早速試してみる。

「はい、あーん!」
「!!」

 一瞬、驚いたように動きを止め、目を瞬くと、そっと、彼の口が開いて差し出したリンゴを咀嚼して行く。


あ、どのタイミングで手を離そう?


 内心で慌てた時には、アルに指先を咥えられていた。

「にゃ?!」

 思わず声を上げると、楽しげに目を細めて優しく指先に歯を立てる。
それから、指先をペロリと舐めて身を引いた。

「!!!」
「君にも、あーん?」

 かぁぁと頬に熱が集まって、赤くなるのが自覚されて、余計に恥ずかしさを感じる。
抗議の声を上げようとしたものの、声にならずに口をパクパクしていると、彼は口元を隠しながら私に自分の向いたウサギさんを差しだした。


隠してる口元!!
笑ってるでしょう?
隠してないでみせなさい!


 差し出されたウサギさんを咥えると、私はアルに襲いかかる。
暫くの間、アルとの追いかけっこが続く。
捕まえた後?
くすぐり倒して、笑い顔を楽しまして貰いましたとも!
隠すからいけないのだ☆
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