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第一夜
★探索者ギルド
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最初の町イスブルクは、中世ヨーロッパの田舎の大都市といった風情の町だった。
建物は全て石造りで丈夫そうではあるものの、道は舗装されておらず土がむき出しだ。
これでは、雨が降ったら泥だらけになってしまうな。と、どうでもいい事を考えた。
このゲームを始めた者は、皆同じ場所に現れるらしい。
私が周りを見回している間に、1人、また1人と周囲に人が増えていく。
目の前にある建物の看板に『探索者ギルド』と書かれているのを見つけ、この中には入れと言う事だとあたりをつけて扉を押し開いた。
中は、ところどころにある採光用の小さな窓から差し込む光と、要所要所に設置されたランプによって最低限の明るさを維持している。
はっきりと言うと、薄暗い。
扉を押しあけたまま、中を見回していると他のプレイヤーと思しき人物に優しくない声を掛けられた。
「おい、あんた。入るならさっさと入ってくれ。後が詰まってんだ!」
「……すまない。」
少し横に避けると、舌打ちをしながら通り抜けていく。
薄暗い探索者ギルドの中は、サービス開始日であるせいもあってかひどく混み合っている。
この中に入って、行列の後ろに並ばなければならないのかと少々辟易しながら最後尾についた。
地球世界の中でも、彼女と同じ日本人と言う民族は良く並ぶ人種なのだそうでどのゲームをやっても、なにかしらで並んでいたのを思い出す。
このゲームでも、『~~討伐@1000!』と言うのに並ばないといけないのだろうか?
アレは少し面倒だなと、出来ればそう言った行列に並ばずに済む事を心の中で祈った。
探索者ギルドの中は外から見たよりも広く、受付窓口も相応の数があったお陰で思いの外早く私の番が回ってきた。
「はじめまして。探索者ギルドへようこそ!」
定番と言える言葉を私に投げかけるのは、妙齢の耳長族……この世界ではエルフ?と言うらしい種族の女性で、少しキツメの美女だった。他の窓口を見ても、種族は違えど容姿は整っている。
これもゲームクオリティと言うヤツなのだろうか?
「登録などは必要なのかね?」
「はい。こちらへ必要事項の記入をお願いいたします。」
私の問いに、彼女は営業用の笑みを浮かべながら『ギルド証』を差し出した。
一緒に渡されたペンは、何故かボールペンと言う至極便利そうな筆記用具でこの世界にそぐわない様に思えた。ここはきっと、ご都合主義と言うヤツなのだろうと思う事にして、必要事項の記入を行った。
この記入、私は字が書けるかと少し不安だったのだが、『ソレらしさ』を出す為の演出でしかないらしく、ペンをギルド証に近づけただけで必要事項が記入されてしまう。
助かった。
書けなかったら少し、恥ずかしい思いをしたかもしれない。
地球世界と言うのは、識字率がひどく高いそうでひらがな・カタカナならば幼稚園児……4~6歳位の子供でも書けるものらしい。読むのはもっと前から出来る子供も居るそうだ。
なので、どう見ても成人している私が書けなかったら、きっとひどく恥かしい思いをしたに違いない。
カードを確認した受付嬢の言葉に耳を傾けながら、こっそりと胸を撫で下ろした。
「登録したての皆さんには、町の外で探索スキルを使って入手した物を10個持ってきていただく事になっています。探索スキルは持っているだけで使用可能なスキルで、入手できる物がある場所が光って見えるのでそこに手か、採集道具を近付けるだけでアイテムを入手する事が出来ます。」
「採集道具というのは?」
探索スキルと言うのは、採集用の技能らしい。
やはり、生産系をこよなく愛する彼女の為にはこの選択肢で間違っていなかったようだ。
私は心の中でガッツポーズを取りつつ、受付嬢に詳しい説明を求めた。
「食材採集でしたら、鎌。木材でしたら斧などになります。ただ、高価な消耗品なので最初の内は素手で探索される事をお勧めします。」
「成程。入手しようと思った時にはどこに行けばいいのかね?」
「鍛冶屋に行かれれば、大概の採集道具は手に入ります。」
「了解した。」
細かい問いにも嫌な顔一つせずに答える姿は、流石プロというものなのか?
それとも、えーあいと言う疑似人格だからだろうか?
「他に何かございますか?」
「いや、特にない。」
「それでは、採集品をお持ちいただければ報酬もお支払いできますので、是非やって見て下さい。」
受付嬢がそう言って頭を下げると同時に、目の前に『クエストウィンドウ』とやらが開いた。
☆探索者ギルドクエスト☆
採集を使ってみよう! 報酬 200ゴールド / 経験値20
受注しますか? はい・いいえ
私はそのクエストを受注すると、先に始めている筈の彼女を探す為に町中へと足を踏み出した。
建物は全て石造りで丈夫そうではあるものの、道は舗装されておらず土がむき出しだ。
これでは、雨が降ったら泥だらけになってしまうな。と、どうでもいい事を考えた。
このゲームを始めた者は、皆同じ場所に現れるらしい。
私が周りを見回している間に、1人、また1人と周囲に人が増えていく。
目の前にある建物の看板に『探索者ギルド』と書かれているのを見つけ、この中には入れと言う事だとあたりをつけて扉を押し開いた。
中は、ところどころにある採光用の小さな窓から差し込む光と、要所要所に設置されたランプによって最低限の明るさを維持している。
はっきりと言うと、薄暗い。
扉を押しあけたまま、中を見回していると他のプレイヤーと思しき人物に優しくない声を掛けられた。
「おい、あんた。入るならさっさと入ってくれ。後が詰まってんだ!」
「……すまない。」
少し横に避けると、舌打ちをしながら通り抜けていく。
薄暗い探索者ギルドの中は、サービス開始日であるせいもあってかひどく混み合っている。
この中に入って、行列の後ろに並ばなければならないのかと少々辟易しながら最後尾についた。
地球世界の中でも、彼女と同じ日本人と言う民族は良く並ぶ人種なのだそうでどのゲームをやっても、なにかしらで並んでいたのを思い出す。
このゲームでも、『~~討伐@1000!』と言うのに並ばないといけないのだろうか?
アレは少し面倒だなと、出来ればそう言った行列に並ばずに済む事を心の中で祈った。
探索者ギルドの中は外から見たよりも広く、受付窓口も相応の数があったお陰で思いの外早く私の番が回ってきた。
「はじめまして。探索者ギルドへようこそ!」
定番と言える言葉を私に投げかけるのは、妙齢の耳長族……この世界ではエルフ?と言うらしい種族の女性で、少しキツメの美女だった。他の窓口を見ても、種族は違えど容姿は整っている。
これもゲームクオリティと言うヤツなのだろうか?
「登録などは必要なのかね?」
「はい。こちらへ必要事項の記入をお願いいたします。」
私の問いに、彼女は営業用の笑みを浮かべながら『ギルド証』を差し出した。
一緒に渡されたペンは、何故かボールペンと言う至極便利そうな筆記用具でこの世界にそぐわない様に思えた。ここはきっと、ご都合主義と言うヤツなのだろうと思う事にして、必要事項の記入を行った。
この記入、私は字が書けるかと少し不安だったのだが、『ソレらしさ』を出す為の演出でしかないらしく、ペンをギルド証に近づけただけで必要事項が記入されてしまう。
助かった。
書けなかったら少し、恥ずかしい思いをしたかもしれない。
地球世界と言うのは、識字率がひどく高いそうでひらがな・カタカナならば幼稚園児……4~6歳位の子供でも書けるものらしい。読むのはもっと前から出来る子供も居るそうだ。
なので、どう見ても成人している私が書けなかったら、きっとひどく恥かしい思いをしたに違いない。
カードを確認した受付嬢の言葉に耳を傾けながら、こっそりと胸を撫で下ろした。
「登録したての皆さんには、町の外で探索スキルを使って入手した物を10個持ってきていただく事になっています。探索スキルは持っているだけで使用可能なスキルで、入手できる物がある場所が光って見えるのでそこに手か、採集道具を近付けるだけでアイテムを入手する事が出来ます。」
「採集道具というのは?」
探索スキルと言うのは、採集用の技能らしい。
やはり、生産系をこよなく愛する彼女の為にはこの選択肢で間違っていなかったようだ。
私は心の中でガッツポーズを取りつつ、受付嬢に詳しい説明を求めた。
「食材採集でしたら、鎌。木材でしたら斧などになります。ただ、高価な消耗品なので最初の内は素手で探索される事をお勧めします。」
「成程。入手しようと思った時にはどこに行けばいいのかね?」
「鍛冶屋に行かれれば、大概の採集道具は手に入ります。」
「了解した。」
細かい問いにも嫌な顔一つせずに答える姿は、流石プロというものなのか?
それとも、えーあいと言う疑似人格だからだろうか?
「他に何かございますか?」
「いや、特にない。」
「それでは、採集品をお持ちいただければ報酬もお支払いできますので、是非やって見て下さい。」
受付嬢がそう言って頭を下げると同時に、目の前に『クエストウィンドウ』とやらが開いた。
☆探索者ギルドクエスト☆
採集を使ってみよう! 報酬 200ゴールド / 経験値20
受注しますか? はい・いいえ
私はそのクエストを受注すると、先に始めている筈の彼女を探す為に町中へと足を踏み出した。
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