上 下
9 / 104

昏倒

しおりを挟む
 アイラは私の作ったタガネで壁の一部をくり抜いて、そこに畑を作るらしい。
なんか、最初に頭を向けていた方向に作ってるけど、水やりたら床が水浸しなんてことは……ないよね?
ちょっと不安だ。

「結局、何から試してみることにしたの?」
「葉物野菜からがいいかと思ってるんだけど……」

 言い淀むってことは、決めきれてないんだろう。
葉物で上げたのは、ルッコラに小松菜。それからほうれん草の三つだっけ。
この中で断然食べやすいのは小松菜で、次点がルッコラ。
自分で候補に上げておいてなんだけど、ほうれん草ははじめに育てるのには不向きかも。

「……生でも食べられるから、ルッコラか小松菜がいいかも」
「ほうれん草じゃなく?」
「ほうれん草も生で食べれる種類はあるけど、そうじゃないやつはエグみがきついから茹でこぼさないと食べ辛いんだよね」
「そっか。んじゃ、小松菜にしてみるわ」

 アイラは一つ頷くと、ひざ掛けから抜け出して壁に穴を掘り始める。

「さすがに、タガネじゃ掘るのは厳しい……」

 そう言って眉尻を下げる彼女には、新しく小さなシャベルを作って進呈。
園芸には、シャベルは必要だよね。

「ちなみに、種を一つ作ると体力っていうのが10づつ減るみたい。あたし、もう残りが5しかないよ」

 作業をしながらアイラがぼやく。
スキルポイントの最大値は確か百だったはずだから、一つに付き10減るというのは随分と大きい。
……私も確認してみよう。
”プロフィール”をイメージすると同時に、確認したい項目が頭に浮かぶ。
魔力 100/100
体力  5/100

「うわ、私もあと5しかない! 魔力は減ってないのに!?」

 なんで!?
と、目を剥く私に、アイラが苦笑しながら説明を始める。

「魔力の消費は基本的に1で、魔法のレベルが上がると効果範囲や威力を上乗せすると消費量が増えるみたい。減ってないのは、多分、使った量よりも自然回復する量の方が多いから?」

 なるほど。
魔法に関しては、ライトを一回とエリアライトを二回使ってる。
どっちもレベル1だからマジックポイントは三しか使ってないってことか。

 スキルの方はどうなのかと思ったら、こっちは使ったスキルによっても変わってくるらしい。
基本的にはスキルレベルと消費スキルポイントは一緒。
ただし、スキル内で出来ること――錬金術だったら融合かな?――はレベルが上っても一のままだったりすることもあるんだとか。
覚えきれる自身がありません……!
むしろ、場合によっては素材のランクも消費スキルポイントに関わってくることがあるそうだ。
えーっと、”検索”先生!
さっきまでの合成に使ったスキルポイントはおいくつ!?

”今までの合成に使ってスキルポイントは、全部で六十です”

 即、脳内に流れるのは”検索”先生のアナウンス。
思考放棄にもきちんと答えてくれて、ありがとうございます。

”いいえ、どういたしまして”

 ……なんか、”検索”先生って、音声応答システムさんに似てますね。

”良く、分かりません”

 ”検索”さんは、もういいや。
とりあえず、今までに使ったスキルポイントは60。
融合で作った数が六個だから、一回あたりの消費は10みたい。
って、あれ……?
消費した魔力や体力って、何をすれば回復するんだろ?

”魔力や体力は、消耗する行為を行わなければ一時間に5%。眠ると最大魔力の一割が回復します”

 自然回復量が勝ってるから、魔力が減っていないというアイラの推測はあたっていたみたい。

「そう言えばアイラ。体力とかって、0になったら――!?」

 どうなるのか調べた?
と、訊ねようと振り返って、ヒュウっと息を呑む。
アイラは、自らが掘った穴により掛かるようにして、いつの間にか意識を失っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

異世界転生!ハイハイからの倍人生

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。 まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。 ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。 転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。 それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

生贄公爵と蛇の王

荒瀬ヤヒロ
ファンタジー
 妹に婚約者を奪われ、歳の離れた女好きに嫁がされそうになったことに反発し家を捨てたレイチェル。彼女が向かったのは「蛇に呪われた公爵」が住む離宮だった。 「お願いします、私と結婚してください!」 「はあ?」  幼い頃に蛇に呪われたと言われ「生贄公爵」と呼ばれて人目に触れないように離宮で暮らしていた青年ヴェンディグ。  そこへ飛び込んできた侯爵令嬢にいきなり求婚され、成り行きで婚約することに。  しかし、「蛇に呪われた生贄公爵」には、誰も知らない秘密があった。

処理中です...