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僕の願い…大和の思い…
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僕の話に耳を優しく傾けてくれていた駿は、僕の目の前で何度も何度も涙を流してくれていて、僕の両手をそっと手に取り、今度は駿の思いを吐き出してくれたんだ。
「ちゃんと…全てを話してくれてありがとう…裕翔、よく頑張ってきたな…辛かったろ…?苦しかったろ…?…三年もお前の傍にいたのに…βの俺には気付いてやれんくて…ほんとにごめんな…」
「でも大丈夫だ…お前がΩだろうが今のお前には変わらない居場所がある…そうだ、俺と大和…お前には俺らがついてる…」
「俺はΩとかβとか関係なく、お前の事が友達として大好きなんだ…お前がこれからも親友じゃなきゃ困るんだよ…寂しいんだよ…」
「そして…お前が大和を好きな気持ちはきっと…大和も同じはずなんだ…いつも茶化していたけれど、親友だから分かるんだよ…」
「裕翔がΩであっても、大和は裕翔の全てが好きなんだと思うんだ…だから、あいつにもちゃんと裕翔の思いを伝えてやれ…もう…もう、後悔だけは絶対にすんな…」
「もし…もしダメだったなら、それでもお前には俺がついてるから…!お前は勇気を持って、自信を持って…大和にちゃんと思いを伝えるんだ!」
駿の力強く思いの詰まった言葉が、僕の苦しく絡み合っていた感情を一つ一つ解いてくれる。
いっつもバカやってるやつだけれど…
僕がΩだと知っても何一つ変わらない大切な親友…
そしてΩであっても、僕には居場所があると、僕の心を温めてくれる大切な親友…
「怖くなったら、辛くなったら【親友の証】に目を向けろ、俺が、俺らがずっと傍にいるから!」
「…しゅ…しゅん…ひっく…う、うぅ…うわぁぁん…!!ひっく…うう…うぁあぁ…!!」
僕は駿の温かく力強い言葉に全ての感情を涙と共に大声を上げて吐き出した…
本当に苦しかった、辛かった、切なかった…
その思いを全て、涙と共に吐き出したかったんだ…
◇ ◇
「落ち着いたか?」
涙も止まり、気持ちが落ち着いた僕にいつもと変わらず「ニッ!」と笑顔で声をかけてくれる駿…僕がΩと知っても彼は何一つ変わらない。
「うん、スッキリしたっ…」
「なははっ!まぁ、嘘ってつき続けるのも大変だよな!でもさ、もう俺には嘘なんかつかなくていいんだぜ?」
「うん…!えへへっ!…ねぇ…駿?」
「んあっ?なんだ?」
「僕の親友でいてくれて本当にありがとう…」
僕の言葉に駿もどことなく照れている様子で、ちょっぴり赤くなった頬を人差し指でポリポリと掻き回している。
駿は恥ずかしくなったらそんな仕草を見せるんだ…!
ははっ!大和がハリネズミをわしゃわしゃとするのと同じだ!
そう思ったその時だった…
一気に春から今までの大和との思い出が僕の脳裏に溢れ出てきたんだ…
振り返ってくれた大和の背中
僕の眼鏡を取って微笑む大和
駿に活を入れるかっこいい大和の姿
一緒に見た甘酸っぱい花火大会
怪我をした僕を背負ってくれた優しい大和
そして…マフラーを優しく巻いてくれた僕の大好きな大和
一人にさせたくないと僕は大和の背中を振り向かせて…一人がどれだけ苦しいかを僕は分かっていたはずなのに…
僕はなにをしてるんだよ…今、僕はまた…
大和を一人にしてしまってるじゃんか…!
そして大和…?
大和は僕の真実を知った時、これからも親友でいてくれるのかな…?
僕は君のことが好きなんだと伝えてもいいのかな…?
違う…違う!僕は伝えたい…!
伝えずに後悔をするぐらいなら…
君に僕はΩだと…Ωだとしても君を愛してならないとしっかり伝えたいんだ…!
「駿…!僕……僕っ!ちゃんと大和に思いを伝えてみるよ…!!」
「ああっ!裕翔、頑張れ!ちゃんとお前の思いを大和にも伝えてやれ!」
駿の心強い一言と僕の右手に輝く【親友の証】が僕の背中を押してくれる。
ちゃんと大和にも気持ちを伝えよう…!
そう心に決め、屋上から先生の目を潜り抜け、僕たちが教室に戻った時には、大和の姿がどこにもなかったんだ…
「ちゃんと…全てを話してくれてありがとう…裕翔、よく頑張ってきたな…辛かったろ…?苦しかったろ…?…三年もお前の傍にいたのに…βの俺には気付いてやれんくて…ほんとにごめんな…」
「でも大丈夫だ…お前がΩだろうが今のお前には変わらない居場所がある…そうだ、俺と大和…お前には俺らがついてる…」
「俺はΩとかβとか関係なく、お前の事が友達として大好きなんだ…お前がこれからも親友じゃなきゃ困るんだよ…寂しいんだよ…」
「そして…お前が大和を好きな気持ちはきっと…大和も同じはずなんだ…いつも茶化していたけれど、親友だから分かるんだよ…」
「裕翔がΩであっても、大和は裕翔の全てが好きなんだと思うんだ…だから、あいつにもちゃんと裕翔の思いを伝えてやれ…もう…もう、後悔だけは絶対にすんな…」
「もし…もしダメだったなら、それでもお前には俺がついてるから…!お前は勇気を持って、自信を持って…大和にちゃんと思いを伝えるんだ!」
駿の力強く思いの詰まった言葉が、僕の苦しく絡み合っていた感情を一つ一つ解いてくれる。
いっつもバカやってるやつだけれど…
僕がΩだと知っても何一つ変わらない大切な親友…
そしてΩであっても、僕には居場所があると、僕の心を温めてくれる大切な親友…
「怖くなったら、辛くなったら【親友の証】に目を向けろ、俺が、俺らがずっと傍にいるから!」
「…しゅ…しゅん…ひっく…う、うぅ…うわぁぁん…!!ひっく…うう…うぁあぁ…!!」
僕は駿の温かく力強い言葉に全ての感情を涙と共に大声を上げて吐き出した…
本当に苦しかった、辛かった、切なかった…
その思いを全て、涙と共に吐き出したかったんだ…
◇ ◇
「落ち着いたか?」
涙も止まり、気持ちが落ち着いた僕にいつもと変わらず「ニッ!」と笑顔で声をかけてくれる駿…僕がΩと知っても彼は何一つ変わらない。
「うん、スッキリしたっ…」
「なははっ!まぁ、嘘ってつき続けるのも大変だよな!でもさ、もう俺には嘘なんかつかなくていいんだぜ?」
「うん…!えへへっ!…ねぇ…駿?」
「んあっ?なんだ?」
「僕の親友でいてくれて本当にありがとう…」
僕の言葉に駿もどことなく照れている様子で、ちょっぴり赤くなった頬を人差し指でポリポリと掻き回している。
駿は恥ずかしくなったらそんな仕草を見せるんだ…!
ははっ!大和がハリネズミをわしゃわしゃとするのと同じだ!
そう思ったその時だった…
一気に春から今までの大和との思い出が僕の脳裏に溢れ出てきたんだ…
振り返ってくれた大和の背中
僕の眼鏡を取って微笑む大和
駿に活を入れるかっこいい大和の姿
一緒に見た甘酸っぱい花火大会
怪我をした僕を背負ってくれた優しい大和
そして…マフラーを優しく巻いてくれた僕の大好きな大和
一人にさせたくないと僕は大和の背中を振り向かせて…一人がどれだけ苦しいかを僕は分かっていたはずなのに…
僕はなにをしてるんだよ…今、僕はまた…
大和を一人にしてしまってるじゃんか…!
そして大和…?
大和は僕の真実を知った時、これからも親友でいてくれるのかな…?
僕は君のことが好きなんだと伝えてもいいのかな…?
違う…違う!僕は伝えたい…!
伝えずに後悔をするぐらいなら…
君に僕はΩだと…Ωだとしても君を愛してならないとしっかり伝えたいんだ…!
「駿…!僕……僕っ!ちゃんと大和に思いを伝えてみるよ…!!」
「ああっ!裕翔、頑張れ!ちゃんとお前の思いを大和にも伝えてやれ!」
駿の心強い一言と僕の右手に輝く【親友の証】が僕の背中を押してくれる。
ちゃんと大和にも気持ちを伝えよう…!
そう心に決め、屋上から先生の目を潜り抜け、僕たちが教室に戻った時には、大和の姿がどこにもなかったんだ…
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