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この香りはまるで…
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──朝、僕は頬っぺに違和感を覚える…
押されては引かれ、何かにつんつんされているようだ…
頬っぺの違和感と共に眠気まなこで目を開けると、目の前には大和がちょこんと座り、僕の頬っぺをつんつんしていたんだ。
「やっと起きた、裕翔、おはよ」
大和は悪気もない笑顔で僕に声をかけてきたけれど、大和のつんつんに恥ずかしさとドキドキが一気に込み上げ、僕はすっかり目が覚めてしまった。
「や、大和っ!お、おはよっ…!」
「…裕翔の頬っぺ、めちゃくちゃ柔らかいんだな、うん、モチモチだったわ」
な、何、サラッと恥ずかしい言葉を並べてくるんだよ、大和のバカっ!!
僕の顔は真っ赤になり、大和へ返す言葉も出てこない…でも大和に触れられて嫌でもないし、むしろ触って欲しい…
「昨日、先に寝ちゃってたみたいでごめんな…もう体調は大丈夫か?」
気持ちが落ち着かない僕に大和は続けて僕の体調を気にかけてくれたけれど…
そうだよ、僕のこと放ったらかしにして先に寝ちゃってさ…!!
でも、大和の寝顔が見れて嬉しかった事は僕だけの秘密だ。
「うん!見ての通り、元気だよっ?大和、心配してくれてありがとね?」
僕の言葉に大和はいつも通り、ハリネズミをわしゃわしゃさせながら…あれっ…?僕は大和のある違和感に気が付いたんだ。
「大和、髪の毛…」
「ああ、お風呂の用意してくれてたんだな…だからさっき、シャワー借りたよ?」
だからなんだ…違和感の正体は、大和の上にいつも乗っかっているハリネズミが今日は、お目見えしていなかったからなんだ。
いつもツンツンしている髪とは裏腹に、本当はふわふわで、綺麗な艶を放つ大和の髪の毛。
「あははっ!僕、大和の髪っていつでもハリネズミさんなのかと思ってたよ!」
「は、ハリネズミ…?!」
や、ヤバい…!!ハリネズミで通じるのは僕と駿だけだったのを忘れていた…!!
僕はつい、口が滑って出てしまったんだ。
「あわわっ…な、なん…「へぇ…俺の事、そういうふうに思ってたのか…そんなやつには、お仕置が必要だなっ…!」
僕の話に聞く耳を持たない大和は、お仕置と言って僕の脇腹をこちょこちょと何度も何度も、くすぐってきたんだ。
「ひゃははっ!や、大和、くすぐったい!や、やめてっ!!」
「ごめんなさいって言うまで許してやらん!」
「ご、ごめんなさああぁぁあいっ!!」
すっかり大和のペースに持っていかれながも、その後も楽しく笑いながら過ごす僕たち。
楽しい時間はあっという間に駆け足で過ぎていき、僕は大和を駅まで送ってあげる事にしたんだ。
◇ ◇
──いつものよう僕は自転車に跨り、大和は荷台に座り込む。
夕方前なのに、まだまだ外は暑い…僕は暑さに負けずにペダルを漕いだんだ。
「なぁ、裕翔?」
「大和、なぁに??」
今日も荷台に横座りする大和は、何かを言いたそうに僕へ声をかけてくれたけれど、少しの間が生まれた後、大和は懸命に言葉を紡いでくれた。
「……また、遊びに行っても…泊まりに行ってもいいか…?」
後ろを向けない僕にも分かる…きっと今、大和は髪の毛をわしゃわしゃとしてる。
その言葉に僕も嬉しくてドキッとしていた事は、きっと大和にもバレていたんだと思う。
「…もちろんだよ!僕の家で良ければ…いつでも遊びに来て?」
僕からの同意に大和も嬉しそうだ…
そして久しぶりに大和は、お礼の言葉と共に僕の背中へ頭を添えてくれた…
外も暑いのに…僕の胸も熱い…
前とは違うドキドキ感…
僕は自転車のバランスを崩さないように意識を集中して自転車を漕ぎ続けたんだ…
◇ ◇
「じゃあ…またな?」
「うん、また…」
大和を駅まで送り届け、お互いまた連絡を取り合う約束をし、僕の楽しくも胸が苦しくなる夏祭りが幕を下ろしたんだ。
ただ、自宅に到着してからの僕の心は、落ち着かなかった。
大和が居なくなってしまったその空間は、何故だか寂しさを帯びている…そして僕の色んな気持ちまでもが、入り乱れてしまう…
僕がΩでなければ…普通の男の子なら…
この思いが届かないとしても…
嘘もつかず、好きと言えたらいいのに…
抑制剤を飲んでいたはずなのに、僕の身体はどんどん熱くなる…いつもなら抑えられる感情が今は全く抑えられないんだ…
そして、僕は身体をベッドへと放り投げ、大和が使っていたブランケットを手に取り、大和の温もりと匂いに包まれていく…
大和が残した温もりと匂いは、どこか甘酸っぱくも僕が愛してやまない香り…
大和の温もりと匂いに抑えきれなくなった僕は、とうとう身体からフェロモンが溢れ出してしまったんだ…
僕の大好きな香り…僕の大好きな温もり…
僕は大和のことが好きだ、大好きなんだ…
大和……大和っ……
僕は確信したんだ…
僕のこのドキドキと切ない気持ち…
これこそが恋をするという気持ち…
もどかしくて堪らない…
でもΩという事実を隠し、嘘をつきながら大和の事を好きになってしまった僕は、溢れ出すフェロモンと共に、涙を流しながらブランケットを濡らすことしか出来なかったんだ…
その時のフェロモンの香りは初恋の甘酸っぱい、オレンジの様な香りがした事を僕は決して忘れられない。
押されては引かれ、何かにつんつんされているようだ…
頬っぺの違和感と共に眠気まなこで目を開けると、目の前には大和がちょこんと座り、僕の頬っぺをつんつんしていたんだ。
「やっと起きた、裕翔、おはよ」
大和は悪気もない笑顔で僕に声をかけてきたけれど、大和のつんつんに恥ずかしさとドキドキが一気に込み上げ、僕はすっかり目が覚めてしまった。
「や、大和っ!お、おはよっ…!」
「…裕翔の頬っぺ、めちゃくちゃ柔らかいんだな、うん、モチモチだったわ」
な、何、サラッと恥ずかしい言葉を並べてくるんだよ、大和のバカっ!!
僕の顔は真っ赤になり、大和へ返す言葉も出てこない…でも大和に触れられて嫌でもないし、むしろ触って欲しい…
「昨日、先に寝ちゃってたみたいでごめんな…もう体調は大丈夫か?」
気持ちが落ち着かない僕に大和は続けて僕の体調を気にかけてくれたけれど…
そうだよ、僕のこと放ったらかしにして先に寝ちゃってさ…!!
でも、大和の寝顔が見れて嬉しかった事は僕だけの秘密だ。
「うん!見ての通り、元気だよっ?大和、心配してくれてありがとね?」
僕の言葉に大和はいつも通り、ハリネズミをわしゃわしゃさせながら…あれっ…?僕は大和のある違和感に気が付いたんだ。
「大和、髪の毛…」
「ああ、お風呂の用意してくれてたんだな…だからさっき、シャワー借りたよ?」
だからなんだ…違和感の正体は、大和の上にいつも乗っかっているハリネズミが今日は、お目見えしていなかったからなんだ。
いつもツンツンしている髪とは裏腹に、本当はふわふわで、綺麗な艶を放つ大和の髪の毛。
「あははっ!僕、大和の髪っていつでもハリネズミさんなのかと思ってたよ!」
「は、ハリネズミ…?!」
や、ヤバい…!!ハリネズミで通じるのは僕と駿だけだったのを忘れていた…!!
僕はつい、口が滑って出てしまったんだ。
「あわわっ…な、なん…「へぇ…俺の事、そういうふうに思ってたのか…そんなやつには、お仕置が必要だなっ…!」
僕の話に聞く耳を持たない大和は、お仕置と言って僕の脇腹をこちょこちょと何度も何度も、くすぐってきたんだ。
「ひゃははっ!や、大和、くすぐったい!や、やめてっ!!」
「ごめんなさいって言うまで許してやらん!」
「ご、ごめんなさああぁぁあいっ!!」
すっかり大和のペースに持っていかれながも、その後も楽しく笑いながら過ごす僕たち。
楽しい時間はあっという間に駆け足で過ぎていき、僕は大和を駅まで送ってあげる事にしたんだ。
◇ ◇
──いつものよう僕は自転車に跨り、大和は荷台に座り込む。
夕方前なのに、まだまだ外は暑い…僕は暑さに負けずにペダルを漕いだんだ。
「なぁ、裕翔?」
「大和、なぁに??」
今日も荷台に横座りする大和は、何かを言いたそうに僕へ声をかけてくれたけれど、少しの間が生まれた後、大和は懸命に言葉を紡いでくれた。
「……また、遊びに行っても…泊まりに行ってもいいか…?」
後ろを向けない僕にも分かる…きっと今、大和は髪の毛をわしゃわしゃとしてる。
その言葉に僕も嬉しくてドキッとしていた事は、きっと大和にもバレていたんだと思う。
「…もちろんだよ!僕の家で良ければ…いつでも遊びに来て?」
僕からの同意に大和も嬉しそうだ…
そして久しぶりに大和は、お礼の言葉と共に僕の背中へ頭を添えてくれた…
外も暑いのに…僕の胸も熱い…
前とは違うドキドキ感…
僕は自転車のバランスを崩さないように意識を集中して自転車を漕ぎ続けたんだ…
◇ ◇
「じゃあ…またな?」
「うん、また…」
大和を駅まで送り届け、お互いまた連絡を取り合う約束をし、僕の楽しくも胸が苦しくなる夏祭りが幕を下ろしたんだ。
ただ、自宅に到着してからの僕の心は、落ち着かなかった。
大和が居なくなってしまったその空間は、何故だか寂しさを帯びている…そして僕の色んな気持ちまでもが、入り乱れてしまう…
僕がΩでなければ…普通の男の子なら…
この思いが届かないとしても…
嘘もつかず、好きと言えたらいいのに…
抑制剤を飲んでいたはずなのに、僕の身体はどんどん熱くなる…いつもなら抑えられる感情が今は全く抑えられないんだ…
そして、僕は身体をベッドへと放り投げ、大和が使っていたブランケットを手に取り、大和の温もりと匂いに包まれていく…
大和が残した温もりと匂いは、どこか甘酸っぱくも僕が愛してやまない香り…
大和の温もりと匂いに抑えきれなくなった僕は、とうとう身体からフェロモンが溢れ出してしまったんだ…
僕の大好きな香り…僕の大好きな温もり…
僕は大和のことが好きだ、大好きなんだ…
大和……大和っ……
僕は確信したんだ…
僕のこのドキドキと切ない気持ち…
これこそが恋をするという気持ち…
もどかしくて堪らない…
でもΩという事実を隠し、嘘をつきながら大和の事を好きになってしまった僕は、溢れ出すフェロモンと共に、涙を流しながらブランケットを濡らすことしか出来なかったんだ…
その時のフェロモンの香りは初恋の甘酸っぱい、オレンジの様な香りがした事を僕は決して忘れられない。
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