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親友の証と僕らの願い
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先生にバレたらどうしよう…
そんな緊張感とは裏腹に、僕の傍には二人が付いていてくれている。
そしてなにより、いつも以上に楽しいと感じてしまっていたんだ。
悪いことをしているはずなのに、そんな罪悪感もいつの間にかどっかに行っちゃっていた。
そんな中、いつものように僕の焼きそばパンを奪い取る大和。今日は、僕のいちごオレまで飲みやがったぁ~!
でも、その代わりに大和の飲んだオレンジジュースと駿が途中まで食べた焼きそばパンをくれたんだ……えっ…駿…?お腹減っちゃうじゃ…
やっぱり、駿の様子はいつもと違う…
そうだ、ここに来たのは楽しみだけで来たんじゃない…駿、君の気持ちを僕たちは聞きたい…
僕から声をかけてあげよう…
そう思ったその時だ、駿が口を開き始めたんだ。
「俺さ、怖いんだ…」
「こ、怖い…?」
「ああ…今月、最後のインターハイがあるだろ?俺、こんなんでもバスケ部の主将だし、これが高校生活最後の試合にもなる…」
「そして試合に負けたらそこで終わり…主将としてバスケ生活が終わっちまうって考えちまうと、インターハイが近付けば近付く程、なんでか怖くなっちまって…」
僕はこんなに弱気な駿を初めて見たんだ…
二年生で主将になって『俺が引っ張るんだっ!』といつも頑張っていた駿を僕は知っている。
でも、その裏で主将としてのプレッシャーや苦悩を聞いたことが無いし、弱音を吐いているところも見たことがなかった。
そしてこれが本当に最後…駿が感じるプレッシャーは、極限に達していたんだ…
僕…なんて返してあげたらいいのかな…
頑張れなんて言ったら、余計辛いよ…
僕は彼の肩に手を添えてあげる事しか出来なかった。
でも、そんな時に大和がそっと口を開いたんだ。
「最後なら最後らしく、楽しめばいいじゃないか」
「そ、そんな簡単な事じゃねぇんだよっ!」
「主将のお前が楽しくバスケが出来なきゃ、周りも楽しくバスケが出来ねぇだろ!?」
「…っ…!!」
ちょ…二人とも…!!
お願いっ…喧嘩になんてならないで…!!
僕は二人のやり取りを聞く事しか出来ず、ただただ亀裂が入らないでと願う事しか出来なかった…
「それと…俺はお前と友達になれて本当に良かった」
「…はっ…?」
「そうか、楽しいってこういう事か…俺が楽しめれば周りも楽しい、裕翔が…そして駿が楽しいと思える事は自然と俺も楽しい…」
「俺はいつも元気で明るくて、みんなを笑わせてくれるお前のことが羨ましいと何度も思った…」
「どういう意味か分かるか…?お前は俺らだけじゃないみんなのことも、その元気と明るさのおかげでどれだけ心を支えられて、助けられているかを!」
「だから、お前がバスケ部の主将なんだろうがよっ!」
ぼ、僕…大和がこんなにも熱い思いで話している姿を初めて見たんだ…
でも、なんでだろう…僕の心の奥底まで温かくなるというか…大和の思いが痛いほど僕にも伝わってくる。
「…くっ…あ~っ!もうっ!くそっ!くそくそくそっ…!!」
駿は大和の思いと共にずっと心の奥に秘めていた辛さを大声で吐き出し、涙を流した。
僕はそんな駿の背中をさすりながら、声掛けてあげたんだ。
「駿…?痛みに気付いてあげられなくてごめんね…でも、駿は一人なんかじゃないんだよ…?駿を信じているバスケ部の大事な仲間もいる…そして、ここには僕も大和もいる…」
「そう、何かあれば僕たちは支え合えるし励ましあえる…だって僕たちはもう【大切な親友】…でしょ?」
駿は僕や大和の掛け声と共に、ヒクヒクと声を上げながら涙をどんどん零したんだ。
辛さは涙として流せばいい…
沢山泣いて、沢山零して…最後の試合は清々しい気持ちで挑んで欲しい…それが僕と大和の願いだ。
「駿、俺たちは親友だ…何かあれば、俺らが支えてやるよ」
「そうだね!だから、いつも通り明るく元気な駿を部員のみんなにも変わらず、振り撒いてあげてね?」
僕と大和の願いが届いたのか、僕たちに「ありがとう…」とその一言を残し、駿は気が済むまで涙を流し続けたんだ。
そんな緊張感とは裏腹に、僕の傍には二人が付いていてくれている。
そしてなにより、いつも以上に楽しいと感じてしまっていたんだ。
悪いことをしているはずなのに、そんな罪悪感もいつの間にかどっかに行っちゃっていた。
そんな中、いつものように僕の焼きそばパンを奪い取る大和。今日は、僕のいちごオレまで飲みやがったぁ~!
でも、その代わりに大和の飲んだオレンジジュースと駿が途中まで食べた焼きそばパンをくれたんだ……えっ…駿…?お腹減っちゃうじゃ…
やっぱり、駿の様子はいつもと違う…
そうだ、ここに来たのは楽しみだけで来たんじゃない…駿、君の気持ちを僕たちは聞きたい…
僕から声をかけてあげよう…
そう思ったその時だ、駿が口を開き始めたんだ。
「俺さ、怖いんだ…」
「こ、怖い…?」
「ああ…今月、最後のインターハイがあるだろ?俺、こんなんでもバスケ部の主将だし、これが高校生活最後の試合にもなる…」
「そして試合に負けたらそこで終わり…主将としてバスケ生活が終わっちまうって考えちまうと、インターハイが近付けば近付く程、なんでか怖くなっちまって…」
僕はこんなに弱気な駿を初めて見たんだ…
二年生で主将になって『俺が引っ張るんだっ!』といつも頑張っていた駿を僕は知っている。
でも、その裏で主将としてのプレッシャーや苦悩を聞いたことが無いし、弱音を吐いているところも見たことがなかった。
そしてこれが本当に最後…駿が感じるプレッシャーは、極限に達していたんだ…
僕…なんて返してあげたらいいのかな…
頑張れなんて言ったら、余計辛いよ…
僕は彼の肩に手を添えてあげる事しか出来なかった。
でも、そんな時に大和がそっと口を開いたんだ。
「最後なら最後らしく、楽しめばいいじゃないか」
「そ、そんな簡単な事じゃねぇんだよっ!」
「主将のお前が楽しくバスケが出来なきゃ、周りも楽しくバスケが出来ねぇだろ!?」
「…っ…!!」
ちょ…二人とも…!!
お願いっ…喧嘩になんてならないで…!!
僕は二人のやり取りを聞く事しか出来ず、ただただ亀裂が入らないでと願う事しか出来なかった…
「それと…俺はお前と友達になれて本当に良かった」
「…はっ…?」
「そうか、楽しいってこういう事か…俺が楽しめれば周りも楽しい、裕翔が…そして駿が楽しいと思える事は自然と俺も楽しい…」
「俺はいつも元気で明るくて、みんなを笑わせてくれるお前のことが羨ましいと何度も思った…」
「どういう意味か分かるか…?お前は俺らだけじゃないみんなのことも、その元気と明るさのおかげでどれだけ心を支えられて、助けられているかを!」
「だから、お前がバスケ部の主将なんだろうがよっ!」
ぼ、僕…大和がこんなにも熱い思いで話している姿を初めて見たんだ…
でも、なんでだろう…僕の心の奥底まで温かくなるというか…大和の思いが痛いほど僕にも伝わってくる。
「…くっ…あ~っ!もうっ!くそっ!くそくそくそっ…!!」
駿は大和の思いと共にずっと心の奥に秘めていた辛さを大声で吐き出し、涙を流した。
僕はそんな駿の背中をさすりながら、声掛けてあげたんだ。
「駿…?痛みに気付いてあげられなくてごめんね…でも、駿は一人なんかじゃないんだよ…?駿を信じているバスケ部の大事な仲間もいる…そして、ここには僕も大和もいる…」
「そう、何かあれば僕たちは支え合えるし励ましあえる…だって僕たちはもう【大切な親友】…でしょ?」
駿は僕や大和の掛け声と共に、ヒクヒクと声を上げながら涙をどんどん零したんだ。
辛さは涙として流せばいい…
沢山泣いて、沢山零して…最後の試合は清々しい気持ちで挑んで欲しい…それが僕と大和の願いだ。
「駿、俺たちは親友だ…何かあれば、俺らが支えてやるよ」
「そうだね!だから、いつも通り明るく元気な駿を部員のみんなにも変わらず、振り撒いてあげてね?」
僕と大和の願いが届いたのか、僕たちに「ありがとう…」とその一言を残し、駿は気が済むまで涙を流し続けたんだ。
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