お前のものは俺のもの-ハリネズミα男子と黒縁眼鏡のΩ男子-side:αY

翔(カケル)

文字の大きさ
上 下
64 / 84
待たせてごめんな…

ピリオドと始まり…裕翔、迎えに来たよ-1

しおりを挟む
 卒業式までの一ヶ月半
 俺たちは時間が許す限り二人でデートをしたり、裕翔の家に泊まりに行ったりと、今まで以上に甘くて濃厚な日々を過ごしていた。

 俺は裕翔の家に行っては、一人で寂しくならないようにと、俺の匂いが染み付いた私物を沢山置いていくようにしていたんだ。

 そのお返しにと、泊まりに行くと裕翔は必ず俺に手料理を振舞ってくれた。

 品数は多くなくても、とにかく温かくて味付けも最高で…何より裕翔の思いがたっぷり詰まっている事が嬉しくて…二人で囲む食卓が幸せすぎたんだ。

 そして夜の営み…
 一度だけバニラな事もあったけれど、それ以上には発展もせず、俺たちは裸を見せ合うことは無かった。

 本当なら今すぐ裕翔を俺のものにしてしまいたいと考えていたけれど、こればかりはまだ一線を超えてはいけないちゃんとした理由を俺は持っていたから、裕翔の黒縁眼鏡を離せなかった訳で…

 その時までは、まだお預けだ。

 それと…この一ヶ月半の中で、大きな出来事が裕翔の気持ちを重苦しくもさせた…

 そう…裕翔のお父さんが亡くなったんだ…

 裕翔のお父さんもお母さんもΩの性を持っていて、その間に生まれたのが裕翔だった。

 お母さんはΩの平均寿命に満たないうちに亡くなっていて、裕翔はお父さんに育てられたらしいんだ。

 裕翔が学校でいじめに合い、地元の高校ではなく、離れた高校に入学したいと言った時も父さんは反対なんかもせず、寧ろずっと裕翔に仕送りをしてくれては影ながら支えてくれた。

 そんな父さんも、抑制剤の副作用が強く出始め…身体を蝕まれて、そしてとうとう…息を引き取ってしまったんだ…

 そう、これがΩの運命…
 抗うことの出来ない、残酷な運命…

 裕翔は、ひっそりお父さんのお葬式を挙げてあげ、俺も式に参列させてもらった。

 父さんとの別れに泣きじゃくる裕翔を俺は隣で慰めてやる事しか出来なくて…ずっとずっと優しく抱きしめる事ぐらいしか出来なくて…

 どんな形であれ、覚悟していたとはいえ…
 やっぱり、最期の別れは辛いよな…

 その後、小さくなった父さんを母さんの眠るお墓に納めてあげて、裕翔はそっと手を合わせ、俺も隣で同じように手を合わせてあげたんだ。

「お父さん、お母さん…今まで本当にありがとう…僕ね、あんな事があったけれど今、凄く幸せなんだ…親友も出来たよ?Ωなんだって言っても、守ってくれるβの駿…」

「それとね?大切な恋人も出来たんだ…今、僕の隣にいる大和…僕ね、ずっとずっと大和の傍にいたい…」

「絶対、お父さんとお母さんより生きてみせる…幸せにもなる…Ωになんて負けない…だから、僕のことずっと上から見守っていてね?」

「…お父さん、お母さん…大好きだよ…」

 思いを伝えきった裕翔の目には、大粒の涙がとめどなく溢れ出てしまっていた。

 でも、裕翔…もう大丈夫だよ…?
 俺とお前はもう、一人なんかじゃないから…

 それを示すかのように、俺は隣で裕翔を優しく抱きしめ、頭をポンポンと撫でながら落ち着くまで慰めてやったんだ。

 裕翔のお父さん…お母さん…
 僕は、僕は裕翔の事をもう離しません。
 もう二度と一人になんかしません…
 絶対に幸せにしてみせると誓います…

 だから僕たちのことをずっとずっと…
 見守っていて下さい…
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

花婿候補は冴えないαでした

いち
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。 本番なしなのもたまにはと思って書いてみました! ※pixivに同様の作品を掲載しています

恋した貴方はαなロミオ

須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。 Ω性に引け目を感じている凛太。 凛太を運命の番だと信じているα性の結城。 すれ違う二人を引き寄せたヒート。 ほんわか現代BLオメガバース♡ ※二人それぞれの視点が交互に展開します ※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m ※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

次男は愛される

那野ユーリ
BL
ゴージャス美形の長男×自称平凡な次男 佐奈が小学三年の時に父親の再婚で出来た二人の兄弟。美しすぎる兄弟に挟まれながらも、佐奈は家族に愛され育つ。そんな佐奈が禁断の恋に悩む。 素敵すぎる表紙は〝fum☆様〟から頂きました♡ 無断転載は厳禁です。 【タイトル横の※印は性描写が入ります。18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さい。】 12月末にこちらの作品は非公開といたします。ご了承くださいませ。 近況ボードをご覧下さい。

処理中です...