お前のものは俺のもの-ハリネズミα男子と黒縁眼鏡のΩ男子-side:αY

翔(カケル)

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甘酸っぱい思い出と隠してた真実

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「俺さ、初めて彼女と夏祭りに行くんだよぉ!!くぅ~っ!なんって俺は幸せなんだっ!」

 幸せいっぱいに目をキラキラする駿に、若干薄笑いで引き気味の俺…

 だってよ…なんって返していいのか分かんねぇんだもん…

 駿の話をよく話を聞くと、毎年俺たちが通う学校の街では、大きな夏祭りが開催されていて、今年は終業式の次の日に開催される予定らしい。

 花火も上がれば、神輿も街を練り歩き、街中全体がお祭りモードにもなるんだとか…

 この街に来てまだ日も浅いけれど、夏祭りか…夏の風物詩だよな…裕翔、行きたいのかな…?

 その時だ、絶好調の駿は、またまた俺たちの事を茶化してきやがったんだ。

「お前らも二人で行けよっ!せっかく仲良くなったんだしよっ!」

「な、何言ってんだ!」

 また裕翔と綺麗にハモってしまった…
 その様子に「ひひひっ!」と俺たちを指差し、目をギュッと瞑りながら笑いまくる駿。

 もう、ナイスパスなんだか茶化されてるんだか、よく分かんなくなってきてんぞ…?

 とか思いながらも、裕翔とお祭りに行けるなら、それはそれで楽しくて幸せなわけだ。

 むしろ俺は裕翔と行きたい、お前と思い出を作りたい…

 裕翔…?お前はどうしたいんだ?

 ゲラゲラ笑う駿を尻目に、裕翔は俺が一番欲しかった言葉を力強く…そして顔を真っ赤にしながら紡いでくれたんだ。

「や、大和…!ぼ、僕とお祭り…行こうか!」

 本当なら俺から誘ってやればいいのに…
 またまたこんなところで弱虫を発揮する俺。
 でも、嬉しくて堪んねぇよ…バカヤロウ…
 
 裕翔の誘いに俺は、頬を赤くしながらいつもの癖で髪をわしゃわしゃとし、そして嬉しくて堪んないくせに、弱虫で強がりな俺は素直にもなれず…

「裕翔が行きたいなら、仕方ないから付き合ってやるよっ」

 なんて、頬を赤くしながら裕翔に答えてしまった。

 もうっ…!!でも、神様ありがとうっ!!

「裕翔ぉ!良かったなぁ!」

 その言葉と共に裕翔の肩を結構な力で叩いていた駿に、裕翔はとうとう釘を刺すタイミングを見つけたようだ…

 裕翔…少し顔が怖いよっ…?

「でもさ、駿?夏休み前の期末テスト…赤点ならお祭りの日は…補習だね!」

 嫌味を効かせた裕翔の一言に、駿の勢いは一気に潮を引き「ひいっ!!」と言いながら表情も青ざめてしまっていた。

 その表情を見て俺も、ザマねぇなとどことなく満足気な顔で駿を見つめていたんだ。

「ああああっ…俺の夏祭りがぁ…!!」

「ならぁ!今から寝ないで勉強だね!♪」

 更に追い打ちをかける裕翔に、どんどんしおれていく駿。

 その姿を見て、俺は思わず吹き出して笑っちまったんだ。

 はははっ!!俺さ、この空間…
 まじで大好きだぜ…?

 その日以降、授業中も全く居眠りもせず、必死に勉強に食らいつく駿を見て、俺も裕翔も愛の力ってすごいなと…そんな事を思いながら、あっという間に期末テストは幕を下ろしたんだ。
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