お前のものは俺のもの-ハリネズミα男子と黒縁眼鏡のΩ男子-side:αY

翔(カケル)

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信じられる本当の親友

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 ──次の日
 今日もいつもと変わらず駅まで裕翔が迎えに来てくれていた。

 俺は特等席に腰を据え、裕翔の可愛らしい運転と共に夏が目の前の街並みを駆けていく。

 ずっとこの日々か続いて欲しい。
 でも、今度は俺がこの背中と気持ちを振り向かせてやりたい。

 昨日決めた事を心に言い聞かせながら俺は早速、俺はアクションを起こしてみたんだ。

 横向きで座る俺はバランスを取る為と、バカみたいな言い訳を心に言い聞かせながら、裕翔の大きくて力強い背中に頭を添えたんだ。

 裕翔がどんな風に思ってもいい…俺は決めたんだ。お前の前では素直な俺でいるよ…?

 その気持ちが裕翔にどう届くのかは分からないけれど、素直な気持ちで…偽りのない気持ちでお前に寄り添った時、お前が俺の気持ちに少しでも振り返ってくれたら、俺はそれだけで嬉しいんだ。

 はっきり好きっていえねぇけど…
 俺、お前の事が大好きなんだよ…

 そんな事を思いながらも、俺が頭を添えても何ひとつ変わらない裕翔。

 それでもいいんだ、嫌がられていないならさ?

 そんな俺だけの甘い時間は、あっという間に過ぎていき、気付けば学校に到着し、俺たちはいつも通り教室へ向かったんだ。

 ちぇっ…ほんと、あっという間すぎるぜ…

 ──教室に着くと、朝練を終えた駿が先に席に座っていて、俺たちは「おはよう」と駿に一言掛けて自分たちの席へと座った。

 今日の駿は、いつも以上に笑顔が清々しい…
 ふふっ!昨日電話で話した通りでなによりだ。
 そして、昨日は本当にありがとな…?

 その後も変わらず仲良く三人で話していたその時、俺は裕翔の右腕に何かが付いていることを今になって気付いたんだ。

「…ん?裕翔、その右腕に付けてる白いやつ…もしかして…」

「おお、あれだろ!募金が出来るオシャレなホワイトバンドっ!裕翔すげぇな!どっこにも売ってねぇのによっ!」

 そう、裕翔の右腕に付いていたのは、テレビでも見た事がある程、有名になっていたホワイトバンドだ。

 これ、確かどこにも売ってないはずだぞ?
 な、なんで裕翔が腕にしてるんだ…?

 そんな事を思いながらも「えへへっ!」といつも以上に可愛い顔を見せる裕翔。

 くそ、これは違反だろっ!違反っ!!

 そんな可愛らしくてたまらない裕翔に素直になると決めた俺は、あのセリフを吐き散らしては裕翔のものを俺のものにしようとしたんだけれど…

「ふぅ~ん…なぁ、裕翔…?そのホワイトバンド、俺によこせ…お前のものは俺の…!?」

 セリフを全て吐く前に小さくて温かく…
 そして、ほんのりいい香りがする裕翔の手が俺の口元を覆いこんだんだ。

 裕翔の突然の行為に「んんん!?」っともがく事しか出来ない俺。

 そして、恥ずかしくて嬉しくて、どうしようも無い気持ちになったのに、その姿を見て「あははっ!」と笑う駿。

 やっと裕翔が口元から手を離してくれたけれど、俺はしてやられた感がいっぱい過ぎてムスッと裕翔を睨みつけてしまった。

 くそぅ…これこそ反則じゃねぇかよっ!!
 ゆ、裕翔のバカヤロウっ!!!!

 それでも、そんな俺のことを裕翔は気にもせず、カバンをゴソゴソと漁り、俺と駿に手に入らないはずのホワイトバンドを差し出してくれたんだ。

「え…こ、これ…」
「裕翔…お前、神かよっ!」

「…えへへっ…二人にもあげたくてさっ!それと三人でお揃いなら僕たちの【親友の証】になるかな?なんって思っちゃって…」

 ちょっと照れながらも、裕翔は俺たちへ思いを伝えてくれた。

 その思いに駿は、目をウルウルとさせながら裕翔に感謝を述べていたけれど…俺は嬉しさと好きな人からの大切なプレゼントに頬を赤らめながら髪を手でわしゃわしゃとしちまっていた。

 でも、素直に嬉しかったし、お前のものは俺のものなんて言わなくても、裕翔はちゃんと俺たちのことを考えてくれてる。

 また裕翔に一本取られちまったな…?

「ゆ、裕翔…?」

「うん?大和、なぁに?」

「…あ、ありがとな…」

 照れながら感謝を述べる俺に対し、満面の笑みを見せてくれた裕翔。

 くそっ…ほんとにお前の気持ちが俺には読めないよ…バカっ…!!
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