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お前のものは俺のもの
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──帰り道
話を聞けば裕翔はバイトをしていて、今日は出勤日らしい。
そうか、今日はそんなに長くお前とは居れない日ってことか…
恋人になった訳じゃないのに、裕翔との二人の時間が少しでも長く続いて欲しいと思ったのは、俺だけなのかもしれない…
それでも、俺はお前の傍に居たかったんだ。
「ねぇ…大和?」
「ん~?なんだ~?風が気持ちいいな」
「いや…そんな事じゃなくて…」
ん…?なんだよ…
学校の時の勢いが裕翔から感じられない。
そして、どこか切なくて、申し訳なさそうに言葉を紡いでくる裕翔。
「…お昼はごめん…」
「は?裕翔、なにか謝ることしたか?」
「…お昼ご飯…食べないって本当は嘘だよね…?」
「…なっ…お前、何言ってんだよ…」
痛いところを突かれた…
俺が嘘をついていた事すら裕翔にはお見通し…
そんな風に俺は感じたけれど、俺と裕翔が似た者同士という事がこの後、どんどんと濃くなっていく。
独りにしか分からない、この『孤独』という二文字のこと…
「僕も…お昼ご飯、食べてなかったから…」
「…裕翔、お前…」
「だからごめん…同じ苦しみを分かち合えると思っていたのに、不用心な発言を駿の前で発しちゃって…」
一人で食べるご飯ほど美味しくないものはない…自分で分かっていたはずなのに、裕翔も同じだったんだと、俺は気付く事が出来なかった。
そして、自分の事を後回しにしては、俺が傷付いたり駿に俺の事実を悟られないようにと必死に考えていてくれていること。
お前はどこまで優しいんだよ…
そして、どこまで温かいんだよ…
優しくて温かい裕翔の心と大きな背中…そんな背中に俺は、つい甘えたくなってしまい、気付けばそっと、裕翔の背中に頭を預けながら言葉を紡いでいたんだ。
「…お前、ほんとに優しすぎるんだよ…ただ、裕翔の言う通りだ…ほんとは、みんなで笑いながらご飯を食べる…そんな事はただの憧れだけで、叶うわけなかったからさ…」
「…お前が何度も何度も、俺のために食べる物を置いてくれた時、声をかけれればいいのに…弱虫で意気地無しな俺は、お前に声すらかけられなかった…」
「…大和…」
「でもな、今日の昼飯めちゃくちゃ楽しかった…ああ、これか…俺が憧れていた笑いながら食べる昼飯ってこんな感じなんだって…またお前が教えてくれたんだ…」
「…だからお前が謝ることなんてなにも…」
キィーッ!
裕翔は俺の言葉を切るかのように、その場で急に自転車を停めた。
「お、おい、裕翔?大丈夫かっ…?」
「…ひくっ…よ、よかった…」
「…えっ…?」
「…僕、大和のこと傷付けちゃったと思っちゃったけど…違った…なんだか、凄くほっとしちゃったんだ…」
「…裕翔…」
「…えへへっ、泣いちゃってごめん!さすがに涙流して自転車漕げないからさっ…!」
そこまで考えてくれてたのかよ…
しかも、俺のために涙まで流させちまった…
俺は心底こいつには敵わない…でも、ちゃんと裕翔へ伝えなきゃいけない言葉も今の俺なら言える…もう、前の俺とは違うんだ。
「…裕翔…ありがとな…?」
涙を流して悲しくなった時、母さんはいつも俺の頭を優しく撫でてくれた。
前はすぐに言い出せなかった『ありがとう』を裕翔にしっかりと伝えた俺は、裕翔の柔らかくて温かい頭をポンポンと優しく、包み込んであげたんだ。
裕翔を好きなれて、友達になれて…
俺は本当に幸せ者だよ…?
その気持ちだけでほんとに嬉しいから…
もう、泣かなくてもいいんだよ…?
話を聞けば裕翔はバイトをしていて、今日は出勤日らしい。
そうか、今日はそんなに長くお前とは居れない日ってことか…
恋人になった訳じゃないのに、裕翔との二人の時間が少しでも長く続いて欲しいと思ったのは、俺だけなのかもしれない…
それでも、俺はお前の傍に居たかったんだ。
「ねぇ…大和?」
「ん~?なんだ~?風が気持ちいいな」
「いや…そんな事じゃなくて…」
ん…?なんだよ…
学校の時の勢いが裕翔から感じられない。
そして、どこか切なくて、申し訳なさそうに言葉を紡いでくる裕翔。
「…お昼はごめん…」
「は?裕翔、なにか謝ることしたか?」
「…お昼ご飯…食べないって本当は嘘だよね…?」
「…なっ…お前、何言ってんだよ…」
痛いところを突かれた…
俺が嘘をついていた事すら裕翔にはお見通し…
そんな風に俺は感じたけれど、俺と裕翔が似た者同士という事がこの後、どんどんと濃くなっていく。
独りにしか分からない、この『孤独』という二文字のこと…
「僕も…お昼ご飯、食べてなかったから…」
「…裕翔、お前…」
「だからごめん…同じ苦しみを分かち合えると思っていたのに、不用心な発言を駿の前で発しちゃって…」
一人で食べるご飯ほど美味しくないものはない…自分で分かっていたはずなのに、裕翔も同じだったんだと、俺は気付く事が出来なかった。
そして、自分の事を後回しにしては、俺が傷付いたり駿に俺の事実を悟られないようにと必死に考えていてくれていること。
お前はどこまで優しいんだよ…
そして、どこまで温かいんだよ…
優しくて温かい裕翔の心と大きな背中…そんな背中に俺は、つい甘えたくなってしまい、気付けばそっと、裕翔の背中に頭を預けながら言葉を紡いでいたんだ。
「…お前、ほんとに優しすぎるんだよ…ただ、裕翔の言う通りだ…ほんとは、みんなで笑いながらご飯を食べる…そんな事はただの憧れだけで、叶うわけなかったからさ…」
「…お前が何度も何度も、俺のために食べる物を置いてくれた時、声をかけれればいいのに…弱虫で意気地無しな俺は、お前に声すらかけられなかった…」
「…大和…」
「でもな、今日の昼飯めちゃくちゃ楽しかった…ああ、これか…俺が憧れていた笑いながら食べる昼飯ってこんな感じなんだって…またお前が教えてくれたんだ…」
「…だからお前が謝ることなんてなにも…」
キィーッ!
裕翔は俺の言葉を切るかのように、その場で急に自転車を停めた。
「お、おい、裕翔?大丈夫かっ…?」
「…ひくっ…よ、よかった…」
「…えっ…?」
「…僕、大和のこと傷付けちゃったと思っちゃったけど…違った…なんだか、凄くほっとしちゃったんだ…」
「…裕翔…」
「…えへへっ、泣いちゃってごめん!さすがに涙流して自転車漕げないからさっ…!」
そこまで考えてくれてたのかよ…
しかも、俺のために涙まで流させちまった…
俺は心底こいつには敵わない…でも、ちゃんと裕翔へ伝えなきゃいけない言葉も今の俺なら言える…もう、前の俺とは違うんだ。
「…裕翔…ありがとな…?」
涙を流して悲しくなった時、母さんはいつも俺の頭を優しく撫でてくれた。
前はすぐに言い出せなかった『ありがとう』を裕翔にしっかりと伝えた俺は、裕翔の柔らかくて温かい頭をポンポンと優しく、包み込んであげたんだ。
裕翔を好きなれて、友達になれて…
俺は本当に幸せ者だよ…?
その気持ちだけでほんとに嬉しいから…
もう、泣かなくてもいいんだよ…?
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