お前のものは俺のもの-ハリネズミα男子と黒縁眼鏡のΩ男子-side:αY

翔(カケル)

文字の大きさ
上 下
13 / 84
お前のものは俺のもの

4

しおりを挟む
 俺が山下にずっと伝えたかった一言を俺のために力強く紡いでくれた山下。

 嬉しかった…嬉しくてどうしようもなかった…
 こんな俺に、友達になりたいなんて言ってくれたヤツは誰もいなかったんだよ…

 友達…俺が憧れていた友達…
 ずっとずっと、欲しかった本当の友達…

 それでも…友だちになったとしても、俺たちには俺たちにしか分からない、隠し事と悩みがある事実は変わらない。

 山下自身は俺が‪α‬だと言うことに気付いていない。その反面、俺は山下がΩだと言うことには気付いてしまっている。

 ‪α‬の俺のせいで、山下の秘密がバレてしまってはコイツを傷つけてしまう…
 隠したい何かがコイツにもあるんだろうから…

 友達になるからには、山下を傷つけたくなんかない…コイツがちゃんと事実を話すまで俺は、見守ってやるしかないんだ。

 それには、俺も俺で山下のフェロモンに反応しないように気をつけなきゃいけない。

 でも内心は、山下の事が可愛くて堪らないし、完璧一目惚れをしてしまっているのは事実…

 黒縁眼鏡に透き通った瞳…
 そして、何より可愛い容姿…

 このどれかを一つでも自分のものに出来るのであれば、どこかで自分の気持ちが抑えられるんじゃないだろうか…

 百%可愛いより、何か一つを俺のものにして、九十%可愛い山下にしておけば、気持ちも抑えられるんじゃないだろうか…

 上手くいくかは分からない…
 ただ、やってみないともっと分からない…

 そんな賭けみたいな事を俺は考えついていて、頬を少し赤くさせながらも山下にある条件を与えてたんだ。

「…お前の気持ちはよく分かった…俺もお前と友達になりたい…でもな…?お前が俺と友達になりたいのなら、一つだけ条件がある…」

「…う、うん…?じょ、条件…?」

「ああ………今日からお前のものは俺のもの…いいか?それが俺と友達になる条件だ」

 俺の訳の分からない条件に若干、唖然とする山下…無理もねぇよな…

 でも、こうしないとずっとお前の傍にいて、見守り続けることは俺自身が無理なんだよ…

「ね、ねぇ…ど、どういう…」

「嫌なら友達じゃなくてもいい」

 それだけの覚悟で俺は山下に『友達じゃなくてもいい』と伝えたんだ。

 でも、それでも…
 山下はの心の底から良い奴だった。

「わ、わかったよ!さぁ、ど~んっとこい!」

「ふふ…やっぱお前、良い奴だな…じゃあ早速……お前が掛けてる、その黒縁眼鏡…俺に渡してくれ」

 そう、身体を変えることは出来ない。
 ならば、山下のトレンドマークであろう黒縁眼鏡を俺のものにしておけば、九十%の山下になるだろうと…それに賭けてみることにしたんだ。

 そんな俺の要望に、山下はそっと眼鏡に手をやり、俺に向かって外して見せてくれた。

 だめだって…!!
 まだ、俺にちゃんと顔を見せないでくれっ!!

 百%の山下を見る前に俺は、山下の眼鏡を奪い取ったんだ。

「…眼鏡外しても俺の顔、見えるか?」

「…うん、ちゃんと見えてるよ?」

 眼鏡を外しても山下の可愛さは変わらない…
 それでも俺は、トレンドマークが無くなった山下の顔を直視する事が出来たんだ。

 そのまま俺は、山下から奪い取った眼鏡を自分の顔へと掛け「おおお~っ!」と可愛いやつの眼鏡を掛けたことが嬉しくて堪らなくて…自然と笑みが溢れだしちまった。

「…ねぇ、逆に僕の眼鏡なんか掛けて、ちゃんと見えてるの?」 

「…ああ、お前の顔、すげぇ綺麗に見えてるよ?」

 ごめんな…これもちょっとした嘘なんだ。
 そんなに目も悪くないし、眼鏡を掛けた時、少し…ほんの少しだけ山下の顔がボヤけていた。

 そう、この眼鏡があると山下を直視したとしても、ほんの少しだけボヤける。

 それも俺の狙いだったんだ。

 いずれどこかで九十%は百%になってしまう…
 なら、ほんの少しだけボヤけて八十五%ぐらいにしておければ、俺はお前の傍にもっと長くいれる気がしたんだよ…?

「…や、山際くん…!!」

「…ふふっ!大和でいいよ」

 親以外に名前で呼ばれた事がなかったけれど、これも憧れの一つだった。

 友達同士、気軽に名前で呼び合いたいと俺は願っていたんだ。

 そう、山下とくしゃみ野郎が名前で呼び合っているように…

「…や、大和くん…?」

「同い年なんだから、くんもいらない」

「…や、大和?」

「ん?なんだ?」

「僕のことも…裕翔って呼んでくれる…?」

 素直に嬉しかった…
 友達になりたいと願い、初めての友達になってくれた山下が、俺と同じように名前で呼んで欲しいと言ってくれたのだから…

「ああ、もちろんだ…裕翔…?これからもよろしく頼むな…?」

 可愛くて堪らないヤツの名前を初めて呼んだだけで、俺は頬を少し赤らめてしまう。

 そんな俺に裕翔も裕翔で頬を染めているのが見て分かる。

 やっぱりお前、可愛いよ…?

 そんな裕翔は、俺からの頼み事に「うん、もちろん!」と笑顔で返答してくれて、やっと俺たちは互いに笑顔を見せ合うことが出来たんだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

Endless Summer Night ~終わらない夏~

樹木緑
BL
ボーイズラブ・オメガバース "愛し合ったあの日々は、終わりのない夏の夜の様だった” 長谷川陽向は “お見合い大学” と呼ばれる大学費用を稼ぐために、 ひと夏の契約でリゾートにやってきた。 最初は反りが合わず、すれ違いが多かったはずなのに、 気が付けば同じように東京から来ていた同じ年の矢野光に恋をしていた。 そして彼は自分の事を “ポンコツのα” と呼んだ。 ***前作品とは完全に切り離したお話ですが、 世界が被っていますので、所々に前作品の登場人物の名前が出てきます。***

アズ同盟

未瑠
BL
 事故のため入学が遅れた榊漣が見たのは、透き通る美貌の水瀬和珠だった。  一目惚れした漣はさっそくアタックを開始するが、アズに惚れているのは漣だけではなかった。  アズの側にいるためにはアズ同盟に入らないといけないと連れて行かれたカラオケBOXには、アズが居て  ……いや、お前は誰だ?  やはりアズに一目惚れした同級生の藤原朔に、幼馴染の水野奨まで留学から帰ってきて、アズの周りはスパダリの大渋滞。一方アズは自分への好意へは無頓着で、それにはある理由が……。  アズ同盟を結んだ彼らの恋の行方は?

スノードロップに触れられない

ヘタノヨコヅキ@商業名:夢臣都芽照
BL
*表紙* 題字&イラスト:niia 様 ※ 表紙の持ち出しはご遠慮ください (拡大版は1ページ目に挿入させていただいております!) アルファだから評価され、アルファだから期待される世界。 先天性のアルファとして生まれた松葉瀬陸真(まつばせ りくま)は、根っからのアルファ嫌いだった。 そんな陸真の怒りを鎮めるのは、いつだって自分よりも可哀想な存在……オメガという人種だ。 しかし、その考えはある日突然……一変した。 『四月から入社しました、矢車菊臣(やぐるま きくおみ)です。一応……先に言っておきますけど、ボクはオメガ性でぇす。……あっ。だからって、襲ったりしないでくださいねぇ?』 自分よりも楽観的に生き、オメガであることをまるで長所のように語る後輩……菊臣との出会い。 『職場のセンパイとして、人生のセンパイとして。後輩オメガに、松葉瀬センパイが知ってる悪いこと……全部、教えてください』 挑発的に笑う菊臣との出会いが、陸真の人生を変えていく。 周りからの身勝手な評価にうんざりし、ひねくれてしまった青年アルファが、自分より弱い存在である筈の後輩オメガによって変わっていくお話です。 可哀想なのはオメガだけじゃないのかもしれない。そんな、他のオメガバース作品とは少し違うかもしれないお話です。 自分勝手で俺様なアルファ嫌いの先輩アルファ×飄々としているあざと可愛い毒舌後輩オメガ でございます!! ※ アダルト表現のあるページにはタイトルの後ろに * と表記しておりますので、読む時はお気を付けください!! ※ この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

恋した貴方はαなロミオ

須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。 Ω性に引け目を感じている凛太。 凛太を運命の番だと信じているα性の結城。 すれ違う二人を引き寄せたヒート。 ほんわか現代BLオメガバース♡ ※二人それぞれの視点が交互に展開します ※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m ※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

処理中です...