奥さまは魔王女

奏 隼人

文字の大きさ
上 下
104 / 105

もういっかい

しおりを挟む

お酒の席も進んで両親同士打ち解けてもらったみたいでティナも僕も本当に嬉しかった。

ミスとリルも初めは自分達の部屋で遊んでいたが、両方のじいじとばあばが来ているとあって顔を見せた…

「ミスね、こっちのばあばもこっちのばあばもりょうほうだいすき!」

「ぼくもじいじ…りょうほうだいすき…だってりょうほうやさしいんだもん。」

じいじとばあばに引っ張りだこの二人を見てティナと僕は微笑み合った…

そんな時、突然、親父がお袋を呼んだ…

「母さん…あれを…」

「はいはい!!」

お袋は封筒を取り出してお義父さんとお義母さんに渡した…

「何でしょう…これは?」

「どうぞ…お持ち下さい…」

ゴルドは封筒から中の物を取り出した…

「これは…」

「まあ…」

封筒に入っていたのは僕とティナの結婚式や出産の時の写真だった…


僕達にしたら思い出の1ページだが、お義父さんとお義母さんにとっては欠落した娘の晴れ姿だった…

「これを…頂いてもよろしいのですかな?」

ゴルドの問いに優也の父親は黙って頷いた…

嬉しいはずなのに…シルヴァには涙が浮かび、ゴルドは悲しみに襲われる…



お袋は「お二人のお気持ちを考えると…私達も迷ったのですが、でも大切な娘さんの晴れ姿を私達だけで持っているのも…」

ゴルドは悲しみをグッと堪えて「お笑いくだされ…娘の気持ちも考えず、娘が過ごした大切な時間を台無しにしてしまった愚かな親でございます…」と呟いた…

すると親父はテーブルに手をついて頭を下げた…

「ゴルドさん!!お許しくだされ!!

話だけを聞いてワシはあなたの事を気さくでいい人だが、一方で自分達の家柄を気にする人なのかな…?と思っていました…

しかし、あなた方を見ているとそんな方々には全く思えない…愛情深く娘さんを育ててこられた…ただ幸せを考えるあまり、娘さんと意見が合わなかったのですな…」



「いえ、構わんのです…恥ずかしながら仰るとおりですわい!!今はこんな立派なご両親の元で大きくなられた婿殿に娘が愛されて喜んでおるのですが、あの時はワシらがティナの幸せの道筋を立てないとと躍起になっておりました…

全てはワシの責任ですわい…」


さっきまで楽しい雰囲気だった団欒の席が静かになってしまった…

すると…ミスがゴルドの所に歩み寄った…

「じいじたち…かなしそう…どうしたの?」


親父がミスを抱っこしながら

「じいじとばあばはね、昔、ちょっと用事があってパパとママの結婚式に出られなかったんだ…だから写真を持ってきたんだよ…」と話した。


するとミスはニッコリと笑って言った。


「ふうん…

じゃあ、みんなでもういっかいやろうよ!!

りょうほうのじいじとばあばとミスやリル…

みんなでパパとママのけっこんしき…

きっとたのしいよ…」



ゴルドとシルヴァ…

そして優也の父親と母親は…

目を大きく見開いた後で顔を見合わせた…




「ワハハハ…情け無い!!

ワシは何とバカなのじゃろう!!

間違いに気付いた時はすぐにやり直せばよいだけ…

こんな可愛い孫に教えてもらうとは…」


そう言ってゴルドは瞳を潤ませながら笑顔でミスとリルを抱きしめた…



「父上殿、母上殿…お忙しいところすみませんが婿殿とティナの結婚式をもう一度執り行いたいと思います!出席してもらえますかな…?」


「勿論です!!ああ…本当にワシもバカじゃな!!ミスちゃん…ありがとう…」



「ちょっとぉ…あのね…リルもおなじことをおもっていたよ…」



頰を膨らませるリル…


両親達は心から嬉しそうに笑い合う…


「ちょっと…ちょっとぉ…そんな勝手に…」

「そうだよ…」





僕とティナはみんなの勝手な盛り上がりに呆気に取られたが…

その後、両親達はまるで自分達の結婚式をやるかのように楽しそうに笑顔で話し合っていた…
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

初恋の呪縛

緑谷めい
恋愛
「エミリ。すまないが、これから暫くの間、俺の同僚のアーダの家に食事を作りに行ってくれないだろうか?」  王国騎士団の騎士である夫デニスにそう頼まれたエミリは、もちろん二つ返事で引き受けた。女性騎士のアーダは夫と同期だと聞いている。半年前にエミリとデニスが結婚した際に結婚パーティーの席で他の同僚達と共にデニスから紹介され、面識もある。  ※ 全6話完結予定

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

いくら時が戻っても

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
大切な書類を忘れ家に取りに帰ったセディク。 庭では妻フェリシアが友人二人とお茶会をしていた。 思ってもいなかった妻の言葉を聞いた時、セディクは――― 短編予定。 救いなし予定。 ひたすらムカつくかもしれません。 嫌いな方は避けてください。 ※この作品は小説家になろうさんでも公開しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...