奥さまは魔王女

奏 隼人

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約束

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ソーディア王宮にティナと一緒に入った僕はジュエラ王族の正装に着替えるために別々の部屋に迎え入れられた。

ティナはジュエラ王宮からドレスを従者が運び込んで着替えているようだ。どの世界も女性は本当に大変である。

それに比べて…男性は「装飾品はこちらでご用意、装着しますのでお申し付け下さい…」とあっさりと言われてしまい、なんとなくこちらの世界の王族の服装を見様見真似みようみまねで着替えてみた…

「だ、大丈夫かな…これで…」

僕が姿見の前で服装を気にしていると誰かがドアをノックした…

「は、はい…どうぞ…」


ゆっくりとドアが開いて…入ってきたのはドレス姿のナギさんだった。若返って一段と少女のような可愛さが増した彼女の笑顔に一瞬ドキッとした…

「優也さん…今日はよろしくお願いします…」そう言って彼女は深々と頭を下げる…

「…こちらこそ…本当に僕なんかで良いのかな?国王様やナギさんに迷惑をかけないように頑張るよ…」

ナギさんに向かって笑った僕に笑顔を返してくれると思っていたのだが…彼女は意外にも目を伏せてうつむいてしまった…

「ナギさん?僕…何か変な事言いま…」

ナギさんは真っ直ぐ僕に駆け寄り…僕の身体を抱きしめる…

「優也さん…私…怖いの…不安なの…でも貴方が私を受け止めてくれたら…一歩を踏み出せる気がする…」

ナギさんは目を閉じて僕に口づけを求めてきた…

この時、僕はナギさんが何にこんなに怯えているのか分からなかった…ただ僕の演説を聴いてくださるだけなのに…

「…優也…応えてやれ…この娘、幼いように思うていたが…どうやら並々ならぬ覚悟をしているようじゃ…わらわも含めてこれだけの女子《おなご》に求められるのは男冥利に尽きるというものよ…」

ヴァルの声に僕の心は頷いた…

ナギさんを抱きしめて僕はゆっくり口唇を重ねる…

彼女の口唇も身体も少し震えていて、
目には涙が浮かんでいる…

少しでも彼女の不安を取り払ってあげたいと僕は思った…包み込むように彼女を抱きしめる…

「大丈夫…何があっても僕はあなたの味方だよ…」

「そんな言葉ではダメです…」

「えっ?」

「私を呼び捨てにして…あなたの女のように命令して下さい…」

「そ…そんな…」


「お願いします…私がそうして欲しいのです…」


「え、えーっと…ナギ…お前はずっと俺が守ってやる…
む、難しいよ…」


僕は自分の中で精一杯の男っぽいと思う言葉を絞り出した…

するとナギさんは背伸びをして笑顔でもう一度僕に口づける…

「約束ですよ…うふふ…」そう言って彼女は部屋を後にした…



やがて世話係の者が部屋に迎えに来た…

「お時間でございます…どうぞこちらに…」
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