奥さまは魔王女

奏 隼人

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軍師の計算

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蔦を燃やしたベヒモスは地面に降りて優也達に今にも飛びかかろうとしている…

するとベヒモスの左右から無数の木の根っこが地面から飛び出して一斉にベヒモスの身体を拘束した。

ナギの紅い瞳が燃えるように光っている…これもナギがエクスから受け継いだ自然の力を利用した高等魔法だった。




…よくやったな…ナギ!!

ナギの頭の中で優しくエクスが彼女に語りかける…

「はい…ありがとうございます!!」




「クソッ!!…あの蔦はオトリだったのか!!」

「自分な…アホやろ⁉︎

こちらには歴代最高の軍師が揃うとるんやで!お前なんかにこちらの作戦が読めるワケが無いやろ!」

ムラサメは不敵な笑みを浮かべた…



「今だ…ミス!!…リル!!」

変身を解いた優也が叫び…実体化したヴァルプルギスが子供達に寄り添う…

ミスとリルは両手を前に突き出した。

ヴァルプルギスは二人の後ろで声をかける…

「優しく…優しくじゃぞ…」

二人の放った魔法陣が重なり合って魔法力の渦が巻き起こった…

「ガンマータ!!…はぁっ!!」

ミスとリルが放ったガンマータはベヒモスの黒いオーラだけを吹き飛ばした…

「おねえちゃん…これでいいの?」

ミスはヴァルの顔を覗き込んだ。

「おお…よく頑張ったのう…褒めてつかわすぞ…」

ヴァルは二人の頭を嬉しそうに撫でた…

「わーい!パパ!ほめられたよ!」

リルの嬉しそうな顔に優也も微笑む…



「さあ、もう魔法は全てベヒモスに通用するぞ!」


「私だって…えーい!」


…バリバリバリバリィィィィン!!

ベヒモスの背中に乗ったイミテにプラティナがカミナリを落とした…

「アギャギャギャ…!!」

ダイナのおかげで貧弱だったはずのプラティナのカミナリも数段パワーアップしており、イミテはベヒモスの背中から転げ落ちた…

カミナリの威力でハゲた頭頂部以外の髪が縮れてモジャモジャになったイミテはこっそりと逃げようとした…



「どこへ行くんじゃ…?」

目の前には剣を構えてゴルドが立っていた…

「ヒィィィィィィィィ…」




「さあ…仕上げと行こうか…クロノ!!」

優也は拘束されて暴れているベヒモスに直近から魔法を放つとベヒモスの動きがスローモーションのように遅くなった。

「今だ!愛ちゃん!」

「はい!!」

燃えるような紅い瞳でアイは両手を組んで印を結んだ…

パルテから受け継いだ魔法力で出した巨大な鏡が二つ…ベヒモスを左右から写し出す…

「合わせ鏡の術…!!」

二つの鏡がお互いに徐々に距離を詰めていき…巨大な召喚獣は鏡の中に吸い込まれていく…


「やった!!あやつら…やりおったわい!!」

一部始終の様子を王宮から見ていたソーディア王も優也達の闘いぶりに胸を躍らせていた…


「ムラサメ!」

「はいよ!兄ちゃん!…これでトドメやで…」

ムラサメは両手に持った二刀流の刀でベヒモスが鏡に完全に吸い込まれた瞬間、刀を振り下ろして真空波を放った…

一の太刀の真空波が左の鏡を砕いた…
二の太刀の真空波が右の鏡を砕こうとしたその瞬間…


キィィィィン!!


真空波は鏡から突然突き出した黒い角に弾かれた!


「ああっ!!」


「な、何ぃ!」


グォォォォォォ…ン!!


苦しそうに藻搔きながらベヒモスは鏡の中から飛び出そうと顔を出している…



それを見たソーディア王はうなだれてしまった…


「ワ、ワシの計算違いじゃった…ベヒモス…あやつの力がこれ程までとは…こ、このままでは…」
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