奥さまは魔王女

奏 隼人

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寄るでない!!

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ヴァルは僕の顔を真っ直ぐ見つめた。

「わらわはこれから自分の誇りの為に闘う…優也…これからのわらわを見ていて欲しいぞよ…」

そう言って僕の前で初めて笑顔を見せた。愛らしくて端整な顔立ちの彼女の笑顔に僕は一瞬ドキッとした…



「大丈夫ですか…?優也さん…どこにもお怪我はありませんか?」

「優也くん…無茶だよ…こんな恐ろしい魔女の牢屋に入っていくなんてさ…」

ナギさんと愛ちゃんが僕を気遣って側に駆け寄って来た。


「ええい!わらわの優也に寄るでない!」


ヴァルはソーディア王の方に向き直った…


「マサムネよ!さっさとこの『身体は一人前だが中身は幼い娘』を連れて国へ帰らんか…わらわが奴等を裏切った事がしれたらソーディアも狙われるじゃろう…」

「そ、そうですな…では、失礼します!!

…ナギ、ムラサメ…行くぞ!」

「は、はい…でも中身は幼いだなんて…いくらお父様のお師匠様だからって失礼しちゃうわ!!」

「あの姉ちゃん…うちの父ちゃんにあんだけ言えるなんて…相当スゴイなぁ!!」




そして愛ちゃんにも…

「おい、そこの『覗き見したり霊に助けてもらうしか能の無いミラールの女』よ!!お前もじゃ!!

早く帰ってミラールに防衛ラインを引かんか!!」

「な、何ですって!!あんた、またヴァルプルガさんにお仕置きしてもらうわよ!!」


「フン!!わらわ抜きであの三人の魔法使いを倒せるかな?大幅な戦力ダウンじゃのう…ホホホ…これは愉快じゃ!!」

「くっ…私はあんたを仲間と認めた訳じゃないからね!!」



ナギさんと愛ちゃんはともかくあのソーディア王のマサムネさんにさえ、格の違いを見せつけた…本当にこの人はあらゆる意味で史上最強の魔女かもしれない…

「ゴルド…お前も先に行って娘を早く助けてやるのじゃ!わらわも直ぐに行く故に…」

「分かりました!!」

お義父さんもティナの元に急いで向かった…


二人きりになると彼女は僕の目の前に手を出して…

「さあ…優也よ…わらわを愛しておるのじゃろう?お姫様ダッコとやらをしてわらわを外にエスコートするのじゃ…」

「ぼ、僕は愛してるなんて…」

「先程、大好きだと皆の前で申したではないか…何じゃ?あれは嘘だと申すか?」

お義父さんやソーディア王が勝てない相手に僕が勝てる訳が無い…

僕はヴァルを抱き抱えた。

「よしよし、それで良いのじゃ。」

彼女はまた愛らしい笑顔を見せた…




その時、頭の中にティナの声が響いた…

「…ダーリン!!助けて!!あの魔法使いは強すぎるわ!!」

「分かった…急がなきゃ!!」



ヴァルプルギスは少し神妙な表情になった。

「のう…優也よ…」

「ん…?どうしたの…?」

「ちょっとだけ…わらわに口づけてはくれんかのう?」

「ええっ…?今、ここで…?」

「…してくれぬなら、わらわは行かんぞ!」



今、どうこうしている時間は無い…僕は意を決して彼女に口づけた…

するとヴァルは僕の首を抱きしめて長くて熱い口づけを交わした…そして口移しに僕に何かを飲ませた。


それは液体でも固形物でもない…



しかし確かに僕の身体の中に浸み入るように入っていった…何だったんだろう…今のは…でも考えている暇は無い!!


「さあ…行こうよ…ヴァル…」

「全く…お主らはせっかちじゃのう…」


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