奥さまは魔王女

奏 隼人

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深い愛情

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「はい…!!あなた…お弁当ですよ。」

「あ、ありがとう…ティナ!!」

ティナというのは彼女のニックネームだ。
小さい頃からずっと周りの人達からそう呼ばれていたらしい。


「うーん!!昨日の夕飯はカレーだったから今日はカレーうどんにしてみましょうか…?

まだお給料日まで少しありますから節約しないとですね…

じゃあ…今日もお仕事頑張ってくださいね!!」


「うん…じゃあ…行ってくるよ…」



もう僕の生活は彼女抜きでは成り立たなくなっていた…



そんなある日のこと…

「ティナ…お願いがあるんだけど…」

「はい…?なんでしょうか?」

「僕の両親に会って貰えないかな?」



突然、ティナの表情が曇る…

「わ、私が優也さんのご両親に…?お会いして…何か失礼なことにならないでしょうか?」

「ははは…大丈夫だよ。実はね、もう随分前からお付き合いしている女性ひとがいるなら家に連れて来なさいって言われてて…

ティナを紹介したら親も安心すると思うんだ…どうかな?」


「でも…こんな素性の分からない女とお付き合いを許して貰えるでしょうか?」

「まあ…言えない事は隠すしかないけど…

でもね、ティナ…君がどんな女性か、どんな人かは一緒に生活して君の素晴らしさを一番分かっているのは僕だよ。

だから誰に反対されようが僕は…その…き、君と結婚したいって…思ってるんだよ…」


「まあ…優也さん…」


「ま、まだお金もそんなにないけどね…マンション買っちゃったしね…しばらくは節約生活だね…」


「分かりました!!私、ご両親にご挨拶させて頂きます。私も優也さんとずっと一緒にいたいから…」


「ティナ…ありがとう!親父もお袋も喜ぶよ…」





そして次の休日…ティナを連れて実家へ帰ることになった…

「こんにちは…初めまして…プラティナと申します…優也さんとお付き合いさせて頂いております。
本当はもう少し早くにご挨拶にお伺いさせて貰わなければいけなかったのですが、忙しさにかまけてしまって…何卒ご容赦ください。」

親父とお袋はティナの容姿端麗さと上品で流暢な言葉遣いに驚いてしまった…

「あ…あの…ご丁寧にどうも…こちらこそ…うちの息子がお世話になっております。」

お袋は親父の腕をチョンチョン突いて何かを言わせようとしているようだった…

「プラティナさん…その…息子とは…結婚を前提として…ということですね。」

僕達は顔を見合わせて「え、ええ…まだ結婚資金が…でも、ゆくゆくは二人ともそのつもりです。」

「ご家族はなんて仰ってるんですか?」

「家族は…その…い、いないんです…」

ティナの言葉に親父とお袋は仰天して「そ、そうなんですか…知らない事とはいえ、とんだ失礼を…おい!優也!そうならそうと…」

「ご、ごめんごめん。そんな事、すぐに聞くなんて思わなくて…」

お袋は親父に小さな巾着袋を手渡した…そして…


「優也…これを…」


親父がその巾着袋をまた僕に手渡した…


その袋を開けて中を覗き込んでみるとそこに入っていたのは通帳と印鑑だった…

「親父…これ…」

「いいから持っていけ!!

プラティナさんと幸せになるんだぞ!!」

僕の目には涙が溢れる…

ティナも大きな瞳から大粒の涙が溢れ出る。



優也の両親の深い愛情と故郷の両親のことを思い出してプラティナは涙が止まらなかった…
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