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胸を焦がす出来事

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「いらっしゃいませ…

本日はお越しくださり大変ありがとうございます。

ここでは幸せになるために僕達が頑張っているお話を少し皆様にご紹介させて頂きたいと存じます。

楽しい出来事と切ない胸の痛み…両方を存分に味わって頂けるように頑張る所存でございます…

では…前菜プロローグからご覧ください…















「わあぁぁぁぁ……」




入学して間もない四月…


いつもの駅のホームで山側に咲き乱れる桜とそして…



背後うしろから吹き抜けた風の五線譜の上に並べられて、美しい音色を奏でる桜吹雪に僕の口からは自然と感嘆の声が漏れ出していた…



一人で勝手にロマンティックな気分に浸っている僕…

宮田翔(みやた しょう)は18歳のごくごく平凡な大学生である。



この四月に 志望していた念願の京都の大学に入って何もかも目まぐるしく時間が過ぎて行く中でやっと自分にも幸運が舞い込んできたようだ…



そう…その幸運の瞬間はこの後、すぐに訪れたのだった…





「あ、あの…」





「……はい?」



ビュウッ…!!




吹き抜けていく風になびく前髪を右手で抑えながら小さくて可愛い声がした方に振り返ると…


見慣れない一人の女の子がそこに立っていた…



同い年位…かな…?



その女の子は小さくて可愛い身体と声の割にピンクのリップが印象的な整った顔立ちの美人だった。


その子は両手で持った封筒を僕に差し出すと…


「あの…これ…読んでいただけますか…?」



「えっ!…は、はい…」


彼女から手渡されたパステルカラーの可愛い封筒の表と裏を見てみると特に何も書かれてはいなかった…



そして僕が顔を上げると…
もう彼女の姿はそこには無かった…










———その日の夕方…自分の部屋に帰ってテーブルに部屋の鍵と…床にバッグを置いた。

そして…


「ふう…」

僕はずっと気になっていた封筒を前に腕組みをして暫く眺めた後、とりあえず開封あけてみることにした…


「し、宗教の勧誘とか…じゃないよな…」


それは封筒とお揃いの可愛い便箋に綴られた手紙だった…


昼間の桜を揺らした風のようにフワリといい香りがする手紙を広げてドキドキしながら僕はゆっくりと目を通した…



その手紙の内容は…


それはにわかに信じられないというか…モテない自分にとっては何かを疑わずにはいられない内容だった…

…夢でも見てるんじゃないかな…?

当たり前だが、僕が何度読み返そうとも手紙のその内容は変わらない…


手紙には「好きです。付き合ってください。」という簡単なメッセージと連絡先のSNSのアドレスが添えられていた。




高校時代は特にやりたいことも見つからず、三年生になって周囲の焦りに合わせて受験勉強を始めて、何となく過ごしている大学生活…


もちろん彼女などは縁遠く誰とも付き合ったことは無かった。



 だからこんな手紙を貰ったら普通の大学生なら〝ふうん〟といったような感じかもしれないけど、僕にとっては書き留めで札束が送られてくる位の衝撃なのである。





しかし…問題なのは…




どう記憶を辿っても彼女を見かけた覚えが無い…


昔のクラスメイト?友達の友達?過去のバイト関係?

それとも駅…電車の中…


ダメだ…

どうしでも心当たりを思い出せない…


何かの間違いなのでは?と思うしか無かった。
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