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グロリオーサ・ローザ
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リンクのスタート位置に着いたミキは彼女の大好きな花…アルタイル・グロリオーサ・ローザを思い浮かべた…
外郭の花弁の広がりが大胆で野生的な…
それでいて内包される優雅で上品な雰囲気を醸し出す…相反する二つの花を融合して生まれた花…
「私もなるんだ…あの大輪の花に…」
ミキはリカと同じように頭でラピスラズリの深い蒼を思い浮かべた…と同時に自分の手足の隅々までスケートに賭ける彼女の情熱を行き渡らせた…
ミキの不死鳥伝説の演技が始まった…
リカもシズカもダイスケも…会場の全ての人がモニターに映るミキの瞳を見て驚いた…
「燃えるような情熱の赤…ああ…ミキちゃん…やったわね…グロリオーサ・ローザ…本当に綺麗…」
シズカは彼女が階段を駆け上がった事を確信した。
炎には激しく燃え盛る炎もあれば小さく風にゆらゆらと揺れながらもしっかりと周りを照らす炎もある…
ミキはゾーン状態に入った事で今まで強引に空気を切り裂いて進んで滑走していた動きが逆らわず流動的なそれに変わった事により最小限の筋肉の動き、スタミナの温存に繋がっていた…
また、それだけではなく極限の集中状態になった彼女は多少のドーパミンの分泌される影響もあってか、以前なら燃え盛る炎のようなスケーティングがどこか心の中に静かに穏やかに灯る灯火があり、久しぶりにスケートで滑る楽しさを感じてさえいるようだった…
「流れるようなミキ選手のスケーティング…
ダイナミックな滑りが信条の彼女が素人目にも変化が見られます…
さあ…最初のジャンプに入ります…」
驕りも無く、気負いも無く…ただ空を見上げて飛び立つ不死鳥のように彼女は地面を蹴って飛び立った…
「はっ!」
広げた翼を畳んで回転しながら不死鳥は舞う…
彼女の飛び散る汗が翼から燃え落ちた燐のようにキラキラと輝く…
…不死鳥はまた翼を広げて大地にしっかりと降り立った…
「よ、四回転ルッツ!ミキ選手!また四回転ジャンプを成功させたぁ!しかも美しい!…昨日のジャンプよりもかなりの GOEが見込めると思われます!」
不死鳥は速度を緩めて足換えコンビネーションスピンに入る…身を縮めるミキ…突然、暗くなる照明…
「不死鳥が自身の炎で焼かれ…また灰になるのよ…」
モニターを見て呟くジュンの言葉にミヤは目を伏せて呟く…
「何故…彼は…ダイスケさんは競技者として私達と同じような訓練も受けていないのに…
こんなに演技を完璧にバックアップ出来るの…?
これが…人の心を掴む事の出来る才能…?
私も…彼の作ってくれた舞台で…思いっきり滑ってみたい!」
ミヤの悲しそうな笑顔を見つめるジュン。
「ミヤ…本当にあの演出でいいの?私は正直…諦めにしか思えない…」
「あれで…いいんです…あれで…」
目を閉じたミヤ…それでも彼女の目には涙が止めどなく溢れてくる…
「諦めじゃありません…彼が言ってくれたんです…どんな演出で小細工したって結局私が情熱を傾けて滑った時間には敵わないって…
私、その言葉を信じます!…そしてこれまでのスケート人生全てを今日の演技に捧げたいんです…」
「ミヤ…」
外郭の花弁の広がりが大胆で野生的な…
それでいて内包される優雅で上品な雰囲気を醸し出す…相反する二つの花を融合して生まれた花…
「私もなるんだ…あの大輪の花に…」
ミキはリカと同じように頭でラピスラズリの深い蒼を思い浮かべた…と同時に自分の手足の隅々までスケートに賭ける彼女の情熱を行き渡らせた…
ミキの不死鳥伝説の演技が始まった…
リカもシズカもダイスケも…会場の全ての人がモニターに映るミキの瞳を見て驚いた…
「燃えるような情熱の赤…ああ…ミキちゃん…やったわね…グロリオーサ・ローザ…本当に綺麗…」
シズカは彼女が階段を駆け上がった事を確信した。
炎には激しく燃え盛る炎もあれば小さく風にゆらゆらと揺れながらもしっかりと周りを照らす炎もある…
ミキはゾーン状態に入った事で今まで強引に空気を切り裂いて進んで滑走していた動きが逆らわず流動的なそれに変わった事により最小限の筋肉の動き、スタミナの温存に繋がっていた…
また、それだけではなく極限の集中状態になった彼女は多少のドーパミンの分泌される影響もあってか、以前なら燃え盛る炎のようなスケーティングがどこか心の中に静かに穏やかに灯る灯火があり、久しぶりにスケートで滑る楽しさを感じてさえいるようだった…
「流れるようなミキ選手のスケーティング…
ダイナミックな滑りが信条の彼女が素人目にも変化が見られます…
さあ…最初のジャンプに入ります…」
驕りも無く、気負いも無く…ただ空を見上げて飛び立つ不死鳥のように彼女は地面を蹴って飛び立った…
「はっ!」
広げた翼を畳んで回転しながら不死鳥は舞う…
彼女の飛び散る汗が翼から燃え落ちた燐のようにキラキラと輝く…
…不死鳥はまた翼を広げて大地にしっかりと降り立った…
「よ、四回転ルッツ!ミキ選手!また四回転ジャンプを成功させたぁ!しかも美しい!…昨日のジャンプよりもかなりの GOEが見込めると思われます!」
不死鳥は速度を緩めて足換えコンビネーションスピンに入る…身を縮めるミキ…突然、暗くなる照明…
「不死鳥が自身の炎で焼かれ…また灰になるのよ…」
モニターを見て呟くジュンの言葉にミヤは目を伏せて呟く…
「何故…彼は…ダイスケさんは競技者として私達と同じような訓練も受けていないのに…
こんなに演技を完璧にバックアップ出来るの…?
これが…人の心を掴む事の出来る才能…?
私も…彼の作ってくれた舞台で…思いっきり滑ってみたい!」
ミヤの悲しそうな笑顔を見つめるジュン。
「ミヤ…本当にあの演出でいいの?私は正直…諦めにしか思えない…」
「あれで…いいんです…あれで…」
目を閉じたミヤ…それでも彼女の目には涙が止めどなく溢れてくる…
「諦めじゃありません…彼が言ってくれたんです…どんな演出で小細工したって結局私が情熱を傾けて滑った時間には敵わないって…
私、その言葉を信じます!…そしてこれまでのスケート人生全てを今日の演技に捧げたいんです…」
「ミヤ…」
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